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第2部 4章
67 香水作り②
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「妃殿下!来て下さったのですね!」
商工会や主な商会をまわった後、アリシアはレイヴンと目当ての店を訪れた。
カウンターにいた男性がアリシアを見て顔を輝かせる。
晩餐に来ていた青年だ。
ここはお香や香水、アロマオイルなど、香料を扱う店である。
棚に並んだ定番の商品を買うこともできるし、様々な香りを合わせてオリジナルの香りを作ることもできる。
調香師である青年は、オイルの組み合わせ方や使う分量で変わる香水の魅力をアリシアに力説した。その話を聞いたアリシアは、新しい香水とアロマオイルを調合してもらいたいと思ったのだ。
「レイヴン様。彼が調香して新しい香水を作って下さいます。好みの香りを伝えて下さいませ」
「……作るのは、僕の香水?」
「はい。そうですわ」
レイヴンの部屋には以前アリシアが贈った香水やアロマオイルが飾られている。
レイヴンがいつも使っているのは、アリシアが贈ったものと同じ香りのものだ。
通常であれば。季節や場所や気分によって香水を使い分けるものだ。だけどレイヴンはもう何年も同じ香りを使い続けている。
それはアリシアが贈った香水が1つしかないからだ。同じ理由でアロマオイルも何年も変えていない。
「この香りはもう好きじゃない……?」
「いえ!そんなことはありませんわ。ただ他の香りを使ってみるのも良いと思いましたの」
哀しそうに訊かれて、アリシアは慌てて否定する。
レイヴンが同じ香りを使い続けるのは、アリシアがその香りを好きだと思っているからだ。だから何年も毎日使い続けている。
だけど本当はそうではない。
アリシアが選んだのは、「その年代の男性が好みそうな香り」である。
アリシアにとっては「傍にいて不快ではない」程度の香りだった。
「皆、季節ごとに香りを変えますわ。私も変えていますもの。だからレイヴン様もどうかと思いまして」
新しく香水を贈るのなら、今度こそレイヴンの好みのものが良い。だけどレイヴンは、アリシアが好きな香りが良いと言う。
そんな時に青年の話を聞いて閃いた。
2人で一緒に調香してもらえば良いのだ。
「一緒に選んでくれるの?」
「はい。なのでレイヴン様の好きな香りを教えてくださいませ」
「……アリシアが好きな香りが好きだけどな」
「……それでは先に進みません」
そんな王太子夫妻の会話を、青年は生暖かい目で見ていた。
青年も両親や街の人から王太子夫妻の噂は聞いている。
噂とは当てにならないものだな、と心の中で溜息を吐いた。
結局、レイヴンはベースに柑橘系の香りを選んだ。
柑橘系はアリシアの好みだったが、今ではレイヴンの好みにもなっている。
柑橘系の香りに色々な香りを合わせてみる。
レイヴンとアリシアが、「これが良い」と言うまで、青年は根気よく調香に付き合ってくれた。
「……本当は季節ごとに調香するんですけどね」
「良いんだ。今の内でないと作れないからね」
レイヴンはここで各季節に合わせた香水を4つ作った。
季節ごとにメトワに来ることはできない。アリシアと一緒に作れるのは今の内だけである。
香水の調香が終わると、2人は熱心にアロマオイルを選び始めた。
レイヴンがいくつか選び、その中からどれが好きかアリシアに訊いている。
アロマオイルを使うのは湯浴みの後だ。
アリシアがその香りを嗅ぐのはどんな時なのか、思い浮かべた青年は密かに顔を赤らめた。
商工会や主な商会をまわった後、アリシアはレイヴンと目当ての店を訪れた。
カウンターにいた男性がアリシアを見て顔を輝かせる。
晩餐に来ていた青年だ。
ここはお香や香水、アロマオイルなど、香料を扱う店である。
棚に並んだ定番の商品を買うこともできるし、様々な香りを合わせてオリジナルの香りを作ることもできる。
調香師である青年は、オイルの組み合わせ方や使う分量で変わる香水の魅力をアリシアに力説した。その話を聞いたアリシアは、新しい香水とアロマオイルを調合してもらいたいと思ったのだ。
「レイヴン様。彼が調香して新しい香水を作って下さいます。好みの香りを伝えて下さいませ」
「……作るのは、僕の香水?」
「はい。そうですわ」
レイヴンの部屋には以前アリシアが贈った香水やアロマオイルが飾られている。
レイヴンがいつも使っているのは、アリシアが贈ったものと同じ香りのものだ。
通常であれば。季節や場所や気分によって香水を使い分けるものだ。だけどレイヴンはもう何年も同じ香りを使い続けている。
それはアリシアが贈った香水が1つしかないからだ。同じ理由でアロマオイルも何年も変えていない。
「この香りはもう好きじゃない……?」
「いえ!そんなことはありませんわ。ただ他の香りを使ってみるのも良いと思いましたの」
哀しそうに訊かれて、アリシアは慌てて否定する。
レイヴンが同じ香りを使い続けるのは、アリシアがその香りを好きだと思っているからだ。だから何年も毎日使い続けている。
だけど本当はそうではない。
アリシアが選んだのは、「その年代の男性が好みそうな香り」である。
アリシアにとっては「傍にいて不快ではない」程度の香りだった。
「皆、季節ごとに香りを変えますわ。私も変えていますもの。だからレイヴン様もどうかと思いまして」
新しく香水を贈るのなら、今度こそレイヴンの好みのものが良い。だけどレイヴンは、アリシアが好きな香りが良いと言う。
そんな時に青年の話を聞いて閃いた。
2人で一緒に調香してもらえば良いのだ。
「一緒に選んでくれるの?」
「はい。なのでレイヴン様の好きな香りを教えてくださいませ」
「……アリシアが好きな香りが好きだけどな」
「……それでは先に進みません」
そんな王太子夫妻の会話を、青年は生暖かい目で見ていた。
青年も両親や街の人から王太子夫妻の噂は聞いている。
噂とは当てにならないものだな、と心の中で溜息を吐いた。
結局、レイヴンはベースに柑橘系の香りを選んだ。
柑橘系はアリシアの好みだったが、今ではレイヴンの好みにもなっている。
柑橘系の香りに色々な香りを合わせてみる。
レイヴンとアリシアが、「これが良い」と言うまで、青年は根気よく調香に付き合ってくれた。
「……本当は季節ごとに調香するんですけどね」
「良いんだ。今の内でないと作れないからね」
レイヴンはここで各季節に合わせた香水を4つ作った。
季節ごとにメトワに来ることはできない。アリシアと一緒に作れるのは今の内だけである。
香水の調香が終わると、2人は熱心にアロマオイルを選び始めた。
レイヴンがいくつか選び、その中からどれが好きかアリシアに訊いている。
アロマオイルを使うのは湯浴みの後だ。
アリシアがその香りを嗅ぐのはどんな時なのか、思い浮かべた青年は密かに顔を赤らめた。
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