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第2部 4章
79 側妃 ユリア②
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側妃の序列は実家の爵位が高い順だったり国王の寵愛が深い順だったりと、その時の国王の意志によって様々だ。だけど幸いなことに今の王太子の生母は王妃の為、現国王の治世では嫁いだ順ということになっていた。
レイヴンとアリシアは一番目の側妃であるユリア妃のところへ挨拶へ向かう。
「今年もよろしくお願い致します」
「年明けからお2人にお会いできるなんて嬉しいですわ。これを機に、是非仲良くして下さいませ」
レイヴンとアリシアが揃って礼をすると、ユリアはふわりと微笑んだ。
ユリア妃は大人しくて控え目、そう言われている。
アリシアは好ましい人柄の女性だと思っているが、最初に嫁いだ側妃なのに社交界での立場はあまり強くない。それは輿入れの経緯にも原因があった。
ユリアはマルグリットが輿入れしてから3年経っても懐妊しない為、世継ぎを生ませる為に議会が選んだ側妃なのだ。
国王は――当時は王太子だったが――議会の決定通り側妃としてユリアを迎え入れた。だけどユリアがお気に召さなかったのか、寝室への訪れは初めから間遠だったと言われている。
世継ぎを期待されて輿入れしたユリアだったが、夫の協力を得ることはできず、結局第一子を生んだのはマルグリットだった。
「有難いお言葉をありがとうございます。ユリア様はレース編みが得意と伺っています。是非指南をいただきたいですわ」
側妃たちとはほとんど付き合いのないアリシアだが、嫁いですぐにマルグリットから義娘として紹介されている。
側妃たちにはその時に名前で呼ぶよう言われていた。
そもそも側妃であっても敬称は「妃殿下」になる。アリシアも「妃殿下」と呼ばれる立場になったのでそのままだとややこしい。
「まあ、指南だなんて。そんな腕はありませんが、気軽に私の部屋を訪ねて下さいませ」
ユリアが嬉しそうに笑う。
マルグリットの様な華やかさはないが、ユリアには百合のような上品な美しさがある。
ユリアの笑顔を見ていると柔らかい気持ちになれた。
王太子の母にはなれなかったユリアだが、2人の子を生んでいる。
初めの子がカナリーより年下だったことから「期待外れ」といった謗りを受けたこともあるようだが、嫁いだ頃のことが嘘のように今では国王の信頼も得ているのだ。
多少の諍いはあっても側妃たちはマルグリットを立てているし上手く纏まっている。それは最初に嫁いだ側妃がユリアだったからだろう。決して己の分を犯さず一歩引いたところに控えるユリアを国王とマルグリットが重用することで上手くバランスが取れているのだ。
唯一の例外がノティスの母親だったが、あれには国王も手を焼いていたので、誰にもどうしようもなかったのだ。
アリシアもレイヴンに嫁いでもうすぐ3年が経つ。議会は側妃の選定に入っているだろう。
レイヴン様の側妃に選ばれる方も、こんな方なら良い。
思わず浮かんだ考えを、アリシアは笑顔で打ち消した。
レイヴンとアリシアは一番目の側妃であるユリア妃のところへ挨拶へ向かう。
「今年もよろしくお願い致します」
「年明けからお2人にお会いできるなんて嬉しいですわ。これを機に、是非仲良くして下さいませ」
レイヴンとアリシアが揃って礼をすると、ユリアはふわりと微笑んだ。
ユリア妃は大人しくて控え目、そう言われている。
アリシアは好ましい人柄の女性だと思っているが、最初に嫁いだ側妃なのに社交界での立場はあまり強くない。それは輿入れの経緯にも原因があった。
ユリアはマルグリットが輿入れしてから3年経っても懐妊しない為、世継ぎを生ませる為に議会が選んだ側妃なのだ。
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世継ぎを期待されて輿入れしたユリアだったが、夫の協力を得ることはできず、結局第一子を生んだのはマルグリットだった。
「有難いお言葉をありがとうございます。ユリア様はレース編みが得意と伺っています。是非指南をいただきたいですわ」
側妃たちとはほとんど付き合いのないアリシアだが、嫁いですぐにマルグリットから義娘として紹介されている。
側妃たちにはその時に名前で呼ぶよう言われていた。
そもそも側妃であっても敬称は「妃殿下」になる。アリシアも「妃殿下」と呼ばれる立場になったのでそのままだとややこしい。
「まあ、指南だなんて。そんな腕はありませんが、気軽に私の部屋を訪ねて下さいませ」
ユリアが嬉しそうに笑う。
マルグリットの様な華やかさはないが、ユリアには百合のような上品な美しさがある。
ユリアの笑顔を見ていると柔らかい気持ちになれた。
王太子の母にはなれなかったユリアだが、2人の子を生んでいる。
初めの子がカナリーより年下だったことから「期待外れ」といった謗りを受けたこともあるようだが、嫁いだ頃のことが嘘のように今では国王の信頼も得ているのだ。
多少の諍いはあっても側妃たちはマルグリットを立てているし上手く纏まっている。それは最初に嫁いだ側妃がユリアだったからだろう。決して己の分を犯さず一歩引いたところに控えるユリアを国王とマルグリットが重用することで上手くバランスが取れているのだ。
唯一の例外がノティスの母親だったが、あれには国王も手を焼いていたので、誰にもどうしようもなかったのだ。
アリシアもレイヴンに嫁いでもうすぐ3年が経つ。議会は側妃の選定に入っているだろう。
レイヴン様の側妃に選ばれる方も、こんな方なら良い。
思わず浮かんだ考えを、アリシアは笑顔で打ち消した。
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