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第2部 4章
89 議会の動き②
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「アリシア、最近悩んでいることはないかしら?」
長い沈黙の後マルグリットにそう訊かれたアリシアは、目を瞬かせてマルグリットを見返した。最近、レイヴンにも「何か悩んでいることがあるなら話して欲しい」と何度も言われている。
だけど心当たりのないアリシアは戸惑うしかない。寧ろ何度「何もありません」と答えても、納得してくれないことが密かな悩みになっていた。
だけどまさかそんなことを話すわけにはいかないだろう。
アリシアは困ったように小首を傾げてマルグリットを見つめていた。
レイヴンにとって不幸だったのは、レイヴンとアリシアの考え方に大きな隔たりがあることだ。
もしレイヴンが、メトワの城で肖像画を見た時に感じたことや、牧場の森であったこと、新年を迎えた日にアリシアが感じたことなどを知っていれば、子ができないことや、レイヴンが側妃を迎えるかもしれないことを不安に感じているのだと受け取っただろう。
だけどアリシアはそうではない。
少なくともこの時点では、アリシアにその自覚がなかった。
アリシアは妃としての最も重要な務めは跡継ぎを生むことだと教えられている。
だけどアリシアがその務めを果たせないなら、他の女性に果たしてもらうしかない。
結婚後3年経っても子が生まれなければ、議会が推薦する女性か、レイヴンが気に入った女性を側妃として迎え入れることになるのは初めからわかっていたのだ。
だからレイヴンにどんな女性が良いのか、候補を選んでもらおうとした。
結局レイヴンは候補を選んでくれなかったけれど、それならば議会が選んだ女性を迎え入れるしかない。
レイヴンは「側妃は要らない」と言っている。
アリシアはそれを信じていないわけではない。
レイヴンは今、アリシアを愛してくれているし、「側妃は要らない」というのも本心だろう。
だけどレイヴンの気持ちはどうあれ、跡継ぎがいない以上、レイヴンの気持ちだけで避けれる問題ではないのだ。
だからアリシアは側妃を迎え入れた時のことを考え、準備をしようとしている。
どうすれば円満な関係を築けるのか考えているのだ。
これは現実的な準備であり、悩みではなかった。
少なくともこの時までは。
「……やっぱり何も聞いていないのね」
アリシアの顔を見ていたマルグリットは溜息を吐いた。
マルグリットもこんな役目を担いたいわけではない。
だけど何も知らずにいて、突然決定事項だと知らされるよりは、心の準備をしていた方が良いと思うのだ。
「レイヴンの側妃について、議会が話を進めているの。レイヴンは希望を出していないから、側妃は今年学園を卒業する令嬢の中から選ぶことになるわ。それでね……。一部の貴族が、側妃に選ばれた令嬢が学園を卒業したらすぐに婚姻を結ぶよう求めているのよ」
「え……?」
アリシアの唇から小さな呟きが漏れる。
マルグリットが目を細めて、アリシアを痛々しそうに見ていた。
その頃扉の向こう側では、慌てて部屋へ入ろうとするレイヴンを国王が止めていた。
夫が初めての側妃を迎える。
同じ経験をしたマルグリットに任せるべきだと思ったのかもしれない。
長い沈黙の後マルグリットにそう訊かれたアリシアは、目を瞬かせてマルグリットを見返した。最近、レイヴンにも「何か悩んでいることがあるなら話して欲しい」と何度も言われている。
だけど心当たりのないアリシアは戸惑うしかない。寧ろ何度「何もありません」と答えても、納得してくれないことが密かな悩みになっていた。
だけどまさかそんなことを話すわけにはいかないだろう。
アリシアは困ったように小首を傾げてマルグリットを見つめていた。
レイヴンにとって不幸だったのは、レイヴンとアリシアの考え方に大きな隔たりがあることだ。
もしレイヴンが、メトワの城で肖像画を見た時に感じたことや、牧場の森であったこと、新年を迎えた日にアリシアが感じたことなどを知っていれば、子ができないことや、レイヴンが側妃を迎えるかもしれないことを不安に感じているのだと受け取っただろう。
だけどアリシアはそうではない。
少なくともこの時点では、アリシアにその自覚がなかった。
アリシアは妃としての最も重要な務めは跡継ぎを生むことだと教えられている。
だけどアリシアがその務めを果たせないなら、他の女性に果たしてもらうしかない。
結婚後3年経っても子が生まれなければ、議会が推薦する女性か、レイヴンが気に入った女性を側妃として迎え入れることになるのは初めからわかっていたのだ。
だからレイヴンにどんな女性が良いのか、候補を選んでもらおうとした。
結局レイヴンは候補を選んでくれなかったけれど、それならば議会が選んだ女性を迎え入れるしかない。
レイヴンは「側妃は要らない」と言っている。
アリシアはそれを信じていないわけではない。
レイヴンは今、アリシアを愛してくれているし、「側妃は要らない」というのも本心だろう。
だけどレイヴンの気持ちはどうあれ、跡継ぎがいない以上、レイヴンの気持ちだけで避けれる問題ではないのだ。
だからアリシアは側妃を迎え入れた時のことを考え、準備をしようとしている。
どうすれば円満な関係を築けるのか考えているのだ。
これは現実的な準備であり、悩みではなかった。
少なくともこの時までは。
「……やっぱり何も聞いていないのね」
アリシアの顔を見ていたマルグリットは溜息を吐いた。
マルグリットもこんな役目を担いたいわけではない。
だけど何も知らずにいて、突然決定事項だと知らされるよりは、心の準備をしていた方が良いと思うのだ。
「レイヴンの側妃について、議会が話を進めているの。レイヴンは希望を出していないから、側妃は今年学園を卒業する令嬢の中から選ぶことになるわ。それでね……。一部の貴族が、側妃に選ばれた令嬢が学園を卒業したらすぐに婚姻を結ぶよう求めているのよ」
「え……?」
アリシアの唇から小さな呟きが漏れる。
マルグリットが目を細めて、アリシアを痛々しそうに見ていた。
その頃扉の向こう側では、慌てて部屋へ入ろうとするレイヴンを国王が止めていた。
夫が初めての側妃を迎える。
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