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第2部 4章
91 貴族の要求②
それは姑息なやり方だった。
ここの所レイヴンがアリシアを寵愛しているのは、王都に住む者なら誰でも知っている。
普通に側妃を娶るよう要求しても拒否されると踏んだ彼らは、レイヴンが王都にいない内に話を進めようとした。
「王家が特定の家ばかりを優遇している」と言われれば、国王は拒否できない。
だから国王に側妃候補を認めさせて、国王から側妃を娶るよう命じさせようと企んだのだ。
「そんな……。ルーファス兄様は本当に優秀な方ですのに……。それにマルセル殿のコリンズ伯爵家はルトビア公爵家の派閥でもありません」
「そうよね。だけどマルセル殿は学園であなたたちと親しかった。もし何か事が起きればあなたの側につくに違いない、それでは公爵家の派閥に属しているのと変わりない、と言われたわ」
「そんなの言いがかりです!」
「私もそう思うわ。派閥の娘を側妃として送り込みたい者たちが勝手に言っているだけよ」
それがわかっていても、突っぱねるのは難しい。贔屓だと騒ぎ立てられ、他の貴族にまで不満が広まれば厄介なことになる。
問題が大きくなる前に収束させたいというのが王家の本音だ。
それに国王は側妃を娶ることに否定的ではない。なんといっても自身が5人の側妃を娶っているのだ。
権力バランスを取るのに側妃を娶ることが有効ならば、そうすれば良いと思っている。
これはそんな国王の考え方を突いた上手い策だった。
ただ、ルトビア公爵家の陣営も、その動きを手をこまねいて見ていたわけではない。
アリシアを溺愛しているレオナルドだがそれだけではなく、公爵家としても対立派閥から次期国王が生まれるのは阻止しなくてはならない問題なのだ。
議会には当然ルトビア公爵家の派閥の者もいる。
まずはその議員が、レイヴンではなく国王が側妃を決めることに反対をした。派閥議員の反対はもちろん想定内だっただろうが、少しは時間を稼ぐことができる。
その間にレオナルドは候補になり得る令嬢を調べ尽くした。
候補になるのは学園の3年生の内、対立派閥に繋がる家の令嬢で婚約者がいない者だ。それだけで随分と絞られる。
レイヴンの側妃に選ばれる可能性が高い学年の為、少し前までは婚約者のいない令嬢も大勢いた。
だけど最近ではレイヴンがアリシアを溺愛していると言われている。時期を読むのが上手い貴族は、例え今娘が選ばれても寵愛を得るどころか疎まれるだけだと悟って娘の婚約を決めていた。
残り少ない候補をレオナルドが調べていく。
その途中で令嬢の瑕疵を見つければ、公表しないことを条件に候補から辞退させた。
旨味のある取引を持ち掛けて辞退させた家もある。
条件の良い相手を紹介して婚約させたり、想い人がいる令嬢をけしかけて関係を持たせたりもした。
こうしてレイヴンさえ知らない内に、いくつもの話が潰されていた。
反対に言えば、今残っているのは暴き立てる瑕疵がなく、他に想う相手もおらずに、疎まれていても子さえ成せばその内寵愛を得ることができると思っているような、強心臓の令嬢である。
「候補になるはずの令嬢が次々に辞退したり婚約したりして、陛下に候補を認めさせる前にあなたたちが戻ってきたから、陛下から側妃を娶るよう命じさせるのは諦めたみたい。今はレイヴンに側妃を受け入れさせようと躍起になっているわ。それでレイヴンは議会と……いえ、議会の一部と対立しているの」
「ですが陛下のお気持ちとしては……、側妃を娶るべきと思っておられるのですね」
娶るべきというほど強い思いではない。
貴族間の争いを避けるのに有効ならそれも良いというくらいである。
ただ厄介なことにレイヴンにはまだ子どもがいない。
王子が生まれない限りは、いつまでも側妃を拒んでもいられないのだ。
ここの所レイヴンがアリシアを寵愛しているのは、王都に住む者なら誰でも知っている。
普通に側妃を娶るよう要求しても拒否されると踏んだ彼らは、レイヴンが王都にいない内に話を進めようとした。
「王家が特定の家ばかりを優遇している」と言われれば、国王は拒否できない。
だから国王に側妃候補を認めさせて、国王から側妃を娶るよう命じさせようと企んだのだ。
「そんな……。ルーファス兄様は本当に優秀な方ですのに……。それにマルセル殿のコリンズ伯爵家はルトビア公爵家の派閥でもありません」
「そうよね。だけどマルセル殿は学園であなたたちと親しかった。もし何か事が起きればあなたの側につくに違いない、それでは公爵家の派閥に属しているのと変わりない、と言われたわ」
「そんなの言いがかりです!」
「私もそう思うわ。派閥の娘を側妃として送り込みたい者たちが勝手に言っているだけよ」
それがわかっていても、突っぱねるのは難しい。贔屓だと騒ぎ立てられ、他の貴族にまで不満が広まれば厄介なことになる。
問題が大きくなる前に収束させたいというのが王家の本音だ。
それに国王は側妃を娶ることに否定的ではない。なんといっても自身が5人の側妃を娶っているのだ。
権力バランスを取るのに側妃を娶ることが有効ならば、そうすれば良いと思っている。
これはそんな国王の考え方を突いた上手い策だった。
ただ、ルトビア公爵家の陣営も、その動きを手をこまねいて見ていたわけではない。
アリシアを溺愛しているレオナルドだがそれだけではなく、公爵家としても対立派閥から次期国王が生まれるのは阻止しなくてはならない問題なのだ。
議会には当然ルトビア公爵家の派閥の者もいる。
まずはその議員が、レイヴンではなく国王が側妃を決めることに反対をした。派閥議員の反対はもちろん想定内だっただろうが、少しは時間を稼ぐことができる。
その間にレオナルドは候補になり得る令嬢を調べ尽くした。
候補になるのは学園の3年生の内、対立派閥に繋がる家の令嬢で婚約者がいない者だ。それだけで随分と絞られる。
レイヴンの側妃に選ばれる可能性が高い学年の為、少し前までは婚約者のいない令嬢も大勢いた。
だけど最近ではレイヴンがアリシアを溺愛していると言われている。時期を読むのが上手い貴族は、例え今娘が選ばれても寵愛を得るどころか疎まれるだけだと悟って娘の婚約を決めていた。
残り少ない候補をレオナルドが調べていく。
その途中で令嬢の瑕疵を見つければ、公表しないことを条件に候補から辞退させた。
旨味のある取引を持ち掛けて辞退させた家もある。
条件の良い相手を紹介して婚約させたり、想い人がいる令嬢をけしかけて関係を持たせたりもした。
こうしてレイヴンさえ知らない内に、いくつもの話が潰されていた。
反対に言えば、今残っているのは暴き立てる瑕疵がなく、他に想う相手もおらずに、疎まれていても子さえ成せばその内寵愛を得ることができると思っているような、強心臓の令嬢である。
「候補になるはずの令嬢が次々に辞退したり婚約したりして、陛下に候補を認めさせる前にあなたたちが戻ってきたから、陛下から側妃を娶るよう命じさせるのは諦めたみたい。今はレイヴンに側妃を受け入れさせようと躍起になっているわ。それでレイヴンは議会と……いえ、議会の一部と対立しているの」
「ですが陛下のお気持ちとしては……、側妃を娶るべきと思っておられるのですね」
娶るべきというほど強い思いではない。
貴族間の争いを避けるのに有効ならそれも良いというくらいである。
ただ厄介なことにレイヴンにはまだ子どもがいない。
王子が生まれない限りは、いつまでも側妃を拒んでもいられないのだ。
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