【本編完結】幸福のかたち【R18】

朱里 麗華(reika2854)

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第2部 5章

9 しばしの休息

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 レイヴンはアリシアの寝顔を眺めていた。
 あの後寝室へ移動した2人は、其々楽な格好に着替えて横になった。
 2刻(約1時間)しかないのであれやこれや・・・・・・をする時間はない。それに疲れているのも本当なので、レイヴンはアリシアを抱き締めたまますぐに眠りに落ちていた。
 
 ただ、軽く仮眠を取るだけなので眠りは浅い。レイヴンは1刻ほど経ったところで自然に目を覚ました。
 それからずっとアリシアの寝顔を見つめている。
 いつもであれば休憩時間に眠るだけなんて勿体ないと思ってしまうのに、穏やかに眠るアリシアの寝顔を眺めていると、それだけで幸せだと感じることができた。

 レイヴンが夢のことをレオナルドに話したのは、アリシアの力になって欲しいからだ。
 アリシアはこれまで、月のモノが来ても大して気にする様子を見せたことがなかった。
 それなのに、あの夢を見てからは月のモノが来るたびに気落ちした様子を見せる。
 レイヴンには見せないよう気丈に振る舞っているけれど、レイヴンがアリシアの様子に気がつかないはずがないのだ。

 だけどアリシアはレイヴンに弱いところを見せようとしない。
 レイヴンが声を掛けようとしても、「仕方のないことですわ」と笑ってしまう。
 認めたくないけれど、やはりアリシアが弱いところを見せられるのはレオナルドしかいないのだ。

 だからレイヴンは話をした。
 その上で、アリシアが落ち込んでいる時は会いに行ってあげて欲しいと頼んだ。
 レオナルドは一瞬驚いた顔をしていたけれど、アリシアを案じる気持ちは強い。それ以来、月のモノが来た時はレオナルドがアリシアを訪ねるようになっていた。

 人払いは特にしていない。だけど2人の雰囲気や会いに来るタイミングから、何の話をしているのか侍女たちも察しているようだ。
 今ではレオナルドが来た時はエレノア以外の侍女たちが自主的に部屋を出ていく。エレノアもお茶の用意をした後は続き部屋で控えることにしていた。
 そこでは完全に声が遮られるわけではないが、それはアリシアも理解している。




 レイヴンはアリシアの頬をそっと撫でた。
 アリシアはレオナルドと話ながら時々泣いていることもあるという。そんな時は目元が少し腫れている。
 胸が締め付けられてぎゅっと抱き締めても、アリシアは淋しそうに微笑むだけだ。
 昨日もまたそんな顔を見せていた。

 だけど今日、眠っているアリシアの顔は穏やかだ。
 安心して眠れているのならそれで良い。

 しばらくすると扉を叩く音がして、エレノアが姿を見せる。
 レオナルドが迎えに来たようだ。
 ずっと寝顔を眺めていたいけれど、時間切れだった。

「アリシア、起きられるかな?」

 何度か声を掛けるとアリシアも目を覚ました。
 何度か瞬きをして、レイヴンの姿を捉える。
 ホッとしたような微笑みにレイヴンは泣きたくなった。

「行ってくる。できるだけ早く戻るよ」

 抱き締めて耳元で囁くと、アリシアが小さく頷いた。
 その耳元や頬に軽く口づける。
 名残惜しいが、早く戻る為にも行かなくてはならない。

 月の障りは昨日で終わった。
 今夜はまたアリシアを抱くことができる。

「いってらっしゃいませ」

 アリシアの柔らかい声に送られてレイヴンは寝室を出た。
 すっきりした顔のレイヴンを見て、レオナルドも安心した顔を見せていた。



 
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