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番外編
アリシアの誕生日 2
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「まあ、お兄様!」
アリシアの誕生日が約2週間後に迫った頃、レオナルドが訪ねてきた。
ただ今はまだ執務中の時間である。こんな時間に訪ねて来るなんて何かあったのか、アリシアが窺うような顔をする。
レオナルドは申し訳なく思いながらもアリシアを軽く抱き締めるとソファに向かい合って座った。
「実はアリシアにお願いがあって来たんだ。……殿下を止めて欲しい」
「え?」
アリシアがきょとんとした顔をする。
レオナルドが苦笑しながら事情を話し出した。
実はレイヴンの贈り物選びがまだ続いていた。
「贈り物はひとつじゃなくて良いんだ!」と天啓を受けたレイヴンが、日替わりで色んな商人を呼んであれもこれもと買い込んでいる。それが許容範囲を超えたのだ。
「この髪飾りはアリシアの綺麗な髪に映えそうだ」「このドレスはアリシアの美しさを引き立てるね」「この靴はアリシアの華奢な足にぴったりだ!」と次々に買い漁り、レイヴンの執務室に積み上がっている。
今後1年、アリシアはドレスや装飾品を買わなくても賄えそうな勢いだ。
「……まあ」
話を聞いたアリシアはそれしか言えなかった。
レオナルドが申し訳なさそうに眉を下げる。
レオナルドとしても、レイヴンが内緒で贈り物を用意しているのはわかっていた。
これまでのことがあったので特別素晴らしいものを選んでアリシアを驚かせたいのだろう。それがいつの間にか違う方向へ暴走してしまった。
いや、レオナルドのせいなのだろうか。
大量の贈り物を買い込んでいるレイヴンだが、別に国家予算に手を付けているわけではない。使っているのはすべて個人の資産である。レイヴンには毎月割り当てられている王太子の予算があるが、それだけではなく、婚約期間に使われなかった婚約者用の予算があるのだ。
レイヴンのクローゼットに眠っている贈られなかったドレスや装飾品があるのでそっくりそのまま、というわけではないが、その大部分が残っている。それが今、物凄い勢いで使われていた。
「……わかりました。私からレイヴン様に話してみます」
そう答えたアリシアだったが、知らないはずの贈り物の用意を止めさせるのは中々難題である。
困り顔のアリシアに、レオナルドは「こめんね」と頭を下げた。
レオナルドが退室するのを見送ると、アリシアは溜息を吐いた。
話をする以上、アリシアが贈り物を知らないふりをするのは無理だろう。レイヴンのがっかりする顔が浮かんでくる。その顔を想像するだけでアリシアの胸が痛んだ。
レイヴンの悲しむ顔は見たくない。
やはりアリシアもレイヴンを愛しているのだ。
「そのお気持ちを殿下へ伝えてみてはいかがですか?」
ふいに掛けられた声に驚いて振り返る。
そこにいたのはエレノアだった。
エレノアが普段主人の会話に口を出すことなどない。
だけど部屋に控えているので話はすべて聞こえているのだ。
かつて公爵邸ではこうしてマリアンが仕えてくれていた。マリアンには色んなことを相談したものだ。
エレノアにも同じ様に相談しても良いのだろうか。
エレノアは勝手に口出しした事を恐縮しながらも、アリシアを励ますように微笑んでいた。
アリシアの誕生日が約2週間後に迫った頃、レオナルドが訪ねてきた。
ただ今はまだ執務中の時間である。こんな時間に訪ねて来るなんて何かあったのか、アリシアが窺うような顔をする。
レオナルドは申し訳なく思いながらもアリシアを軽く抱き締めるとソファに向かい合って座った。
「実はアリシアにお願いがあって来たんだ。……殿下を止めて欲しい」
「え?」
アリシアがきょとんとした顔をする。
レオナルドが苦笑しながら事情を話し出した。
実はレイヴンの贈り物選びがまだ続いていた。
「贈り物はひとつじゃなくて良いんだ!」と天啓を受けたレイヴンが、日替わりで色んな商人を呼んであれもこれもと買い込んでいる。それが許容範囲を超えたのだ。
「この髪飾りはアリシアの綺麗な髪に映えそうだ」「このドレスはアリシアの美しさを引き立てるね」「この靴はアリシアの華奢な足にぴったりだ!」と次々に買い漁り、レイヴンの執務室に積み上がっている。
今後1年、アリシアはドレスや装飾品を買わなくても賄えそうな勢いだ。
「……まあ」
話を聞いたアリシアはそれしか言えなかった。
レオナルドが申し訳なさそうに眉を下げる。
レオナルドとしても、レイヴンが内緒で贈り物を用意しているのはわかっていた。
これまでのことがあったので特別素晴らしいものを選んでアリシアを驚かせたいのだろう。それがいつの間にか違う方向へ暴走してしまった。
いや、レオナルドのせいなのだろうか。
大量の贈り物を買い込んでいるレイヴンだが、別に国家予算に手を付けているわけではない。使っているのはすべて個人の資産である。レイヴンには毎月割り当てられている王太子の予算があるが、それだけではなく、婚約期間に使われなかった婚約者用の予算があるのだ。
レイヴンのクローゼットに眠っている贈られなかったドレスや装飾品があるのでそっくりそのまま、というわけではないが、その大部分が残っている。それが今、物凄い勢いで使われていた。
「……わかりました。私からレイヴン様に話してみます」
そう答えたアリシアだったが、知らないはずの贈り物の用意を止めさせるのは中々難題である。
困り顔のアリシアに、レオナルドは「こめんね」と頭を下げた。
レオナルドが退室するのを見送ると、アリシアは溜息を吐いた。
話をする以上、アリシアが贈り物を知らないふりをするのは無理だろう。レイヴンのがっかりする顔が浮かんでくる。その顔を想像するだけでアリシアの胸が痛んだ。
レイヴンの悲しむ顔は見たくない。
やはりアリシアもレイヴンを愛しているのだ。
「そのお気持ちを殿下へ伝えてみてはいかがですか?」
ふいに掛けられた声に驚いて振り返る。
そこにいたのはエレノアだった。
エレノアが普段主人の会話に口を出すことなどない。
だけど部屋に控えているので話はすべて聞こえているのだ。
かつて公爵邸ではこうしてマリアンが仕えてくれていた。マリアンには色んなことを相談したものだ。
エレノアにも同じ様に相談しても良いのだろうか。
エレノアは勝手に口出しした事を恐縮しながらも、アリシアを励ますように微笑んでいた。
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