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第2部 6章
68 侍女の務め②
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王領の城には王太子宮から1/4程の使用人たちが移ってきていた。
アリシアたちが部屋へ移った後、エレノアたちはマリアンたちと最近のアリシアの食の好みや日中の過ごし方など、情報の引き継ぎをしていたようだ。城には王太子宮から派遣された侍医も滞在しており、アシェントから付いてきていた公爵家の医師からこれまでの医療記録の引き継ぎも行われた。
侍医たちはアリシアがアシェントへ移った時から王領に滞在していたという。
確かに療養に向かったアリシアに侍医がついていないのは不自然である。そこでレイヴンはマルグリットと話し合い、信頼できる数人の侍医に事情を打ち明け、王領へ移すことにした。
侍医たちはアリシアが不在の間、時々医務室を訪れる城の使用人の治療をしながら新しい薬や治療の研究をしていたそうで、有意義な時間を過ごしていたようだ。
「様々なことを考えて下さっているのですね……」
研究熱心な侍医たちは、王太子宮にいては中々取ることができない研究の時間を持てたことに感謝していた。
王族の側近くに仕えて名声を上げることより研究が好きな者たちなのだろう。レイヴンたちはそうして不満が出難い人選をしてくれた。
「まあ、人を見るのは基本だからね」
何でもないようにそう言って優雅に紅茶を口に運ぶレオナルドだが、口元には笑みが浮かんでいた。
エレノアが戻ってくると、アリシアはレイヴンへの文を託した。
王領へ移ることは既に伝えている。すぐに次の指示が届くだろう。それまでオレリアとレオナルドも城に滞在することになっている。
「妃殿下。こちらが見舞いに届けられた品と文の一覧です」
「ありがとう」
エレノアから差し出された書類を受け取り、アリシアは心から礼を伝えた。
主人の不在を偽り、また本来の容態も隠して、それらしく返事を書くのは相当な負担だっただろう。直接訪ねて来ようとする貴族たちを不快にさせず思い止まらせるのも大変だったはずだ。
だけどエレノアはそんな様子を少しも見せない。
「それが私の務めですから」
アリシアが何か言うと、そう答えが返ってくるだろう。
一覧に目を通していたアリシアは、ある所で動きを止めた。
そこにはカロリーナ、イリーナ、ジョアニーの名前が並んでいる。
カロリーナの子が生まれた後、アリシアは一方的に茶会を止めた。
不自然に思われないよう気をつけたつもりだが、彼女たちはアリシアの気持ちを察していただろう。
カロリーナの子を喜べないアリシアの気持ちを。
もう友人だとは思って貰えないと思っていた。
「……この3人からの文を、持ってきてくれる?」
「はい。見舞いの品もお持ち致します」
文に目を通すアリシアの頬を涙が伝っていく。
恨み言などはどこにもなく、アリシアを労る言葉が綴られている。
「素敵な方たちですね」
先に文に目を通していたエレノアの言葉にアリシアは頷いた。
皆貴族の令嬢である。
婿を取った者も嫁いだ者も、それぞれ跡継ぎを求められる立場だ。アリシアの気持ちがわかるのだろう。
皆そのことに触れることはなく、だたアリシアの体調を気遣ってくれている。
「王都にお戻りになられたら直接お話ができますよ」
「……ええ、そうね」
この文にはエレノアが返事をしている為、アリシアが返事を送ることはできない。
だけど王都に帰ればまたお茶会を開くことができる。
3人はきっと喜んで出席してくれるだろう。その時に、直接礼を言おう。
アリシアは3人からの文を胸に抱いた。
それから1週間後、アリシアの懐妊が王家から発表された。
貴族からの祝いの品が殺到する中、3人から喜びの文と品が届けられたのは言うまでもない。
アリシアたちが部屋へ移った後、エレノアたちはマリアンたちと最近のアリシアの食の好みや日中の過ごし方など、情報の引き継ぎをしていたようだ。城には王太子宮から派遣された侍医も滞在しており、アシェントから付いてきていた公爵家の医師からこれまでの医療記録の引き継ぎも行われた。
侍医たちはアリシアがアシェントへ移った時から王領に滞在していたという。
確かに療養に向かったアリシアに侍医がついていないのは不自然である。そこでレイヴンはマルグリットと話し合い、信頼できる数人の侍医に事情を打ち明け、王領へ移すことにした。
侍医たちはアリシアが不在の間、時々医務室を訪れる城の使用人の治療をしながら新しい薬や治療の研究をしていたそうで、有意義な時間を過ごしていたようだ。
「様々なことを考えて下さっているのですね……」
研究熱心な侍医たちは、王太子宮にいては中々取ることができない研究の時間を持てたことに感謝していた。
王族の側近くに仕えて名声を上げることより研究が好きな者たちなのだろう。レイヴンたちはそうして不満が出難い人選をしてくれた。
「まあ、人を見るのは基本だからね」
何でもないようにそう言って優雅に紅茶を口に運ぶレオナルドだが、口元には笑みが浮かんでいた。
エレノアが戻ってくると、アリシアはレイヴンへの文を託した。
王領へ移ることは既に伝えている。すぐに次の指示が届くだろう。それまでオレリアとレオナルドも城に滞在することになっている。
「妃殿下。こちらが見舞いに届けられた品と文の一覧です」
「ありがとう」
エレノアから差し出された書類を受け取り、アリシアは心から礼を伝えた。
主人の不在を偽り、また本来の容態も隠して、それらしく返事を書くのは相当な負担だっただろう。直接訪ねて来ようとする貴族たちを不快にさせず思い止まらせるのも大変だったはずだ。
だけどエレノアはそんな様子を少しも見せない。
「それが私の務めですから」
アリシアが何か言うと、そう答えが返ってくるだろう。
一覧に目を通していたアリシアは、ある所で動きを止めた。
そこにはカロリーナ、イリーナ、ジョアニーの名前が並んでいる。
カロリーナの子が生まれた後、アリシアは一方的に茶会を止めた。
不自然に思われないよう気をつけたつもりだが、彼女たちはアリシアの気持ちを察していただろう。
カロリーナの子を喜べないアリシアの気持ちを。
もう友人だとは思って貰えないと思っていた。
「……この3人からの文を、持ってきてくれる?」
「はい。見舞いの品もお持ち致します」
文に目を通すアリシアの頬を涙が伝っていく。
恨み言などはどこにもなく、アリシアを労る言葉が綴られている。
「素敵な方たちですね」
先に文に目を通していたエレノアの言葉にアリシアは頷いた。
皆貴族の令嬢である。
婿を取った者も嫁いだ者も、それぞれ跡継ぎを求められる立場だ。アリシアの気持ちがわかるのだろう。
皆そのことに触れることはなく、だたアリシアの体調を気遣ってくれている。
「王都にお戻りになられたら直接お話ができますよ」
「……ええ、そうね」
この文にはエレノアが返事をしている為、アリシアが返事を送ることはできない。
だけど王都に帰ればまたお茶会を開くことができる。
3人はきっと喜んで出席してくれるだろう。その時に、直接礼を言おう。
アリシアは3人からの文を胸に抱いた。
それから1週間後、アリシアの懐妊が王家から発表された。
貴族からの祝いの品が殺到する中、3人から喜びの文と品が届けられたのは言うまでもない。
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