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第2部 6章
70 子ども部屋
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王太子宮へ入ったアリシアは久しぶりの自室を感慨深く見渡した。
すべて記憶に残っているままで何も変わっていない。いつアリシアが戻ってきても良いように整えてくれていたのだ。
レイヴンはアリシアが戻ってから一時も傍を離れない。今もアリシアにぴったり寄り添い座っている。
本当はアリシアを膝に乗せようとしたのだ。だけどアリシアがそれを固辞した。
標準的な妊娠8ヶ月の体重というのは、つまり以前より重くなったということで、悪いことではないとわかっていても重くなったとは思われたくないのが乙女心だ。
レイヴンもアリシアが戻ってそうそう嫌な思いをさせて嫌われたくない。だから残念そうな顔をしながらもすぐに引いていた。
「父上と母上のところには明日挨拶に行こう。今日はゆっくり休んで」
「はい。ありがとうございます」
国王とマルグリットには過分な配慮を賜った。
アリシアが何の憂いもなく療養できたのは、2人が状況を整えてくれたからだ。その礼をきちんと伝えなければならない。
「2人とも本当に喜んで下さっている。なんといっても初孫だからね」
初めての孫で、待ち望まれた王太子の子だ。
まだ跡継ぎとなる男の子かはわからないが、大いに期待しているだろう。だけどそれだけではなく、マルグリットなら女の子でも喜んでくれるだろうと思えた。
「それで……。申し訳ないけど、子ども部屋をそれなりに準備したんだ。勿論!嫌なところがあれば変えてくれて良いから!」
「まあ、それは当然ですわ」
アリシアはもう妊娠8ヶ月になる。出産予定日はもう少し先だが、これからはあっという間だろう。戻るのを待って準備を始めたのでは間に合わない。
アリシアは当然それを心得ていて、レイヴンやマルグリットの主導で準備が進められることに否やはなかった。それにレイヴンもマルグリットもよく王領へ文を送ってくれて、アリシアの好みを訊いてくれていた。
「レイヴン様やマルグリット様が、私のことを考えて下さっているのは良くわかっています。私こそ準備をすべて任せてしまい、申し訳ありません」
「……それじゃあ子ども部屋を見てみる?」
「……はいっ!!」
アリシアが弾かれたように返事をすると、レイヴンは嬉しそうに微笑んだ。
それからレイヴンに手を取られてゆっくりと部屋を出る。
子ども部屋はレイヴンの部屋を通り過ぎて少し廊下を進んだ先の、チョコレート型の扉がついた部屋だった。
「まあ、可愛い!!」
扉が開いた途端、アリシアは声を上げた。
生まれてくる子が男の子でも女の子でも良いように壁は空色に塗られ、雲や虹が描かれている。草色のカーペットは草原をイメージしているのだろうか。羊や山羊の形をしたクッションやぬいぐるみがそこかしこに飾られていた。その中に木製の揺り籠が置かれ、オルゴールメリーには色とりどりの鳥や動物たちが揺れている。
白いチェストの中には可愛らしいミトンや靴下、柔らかい肌着が入っていた。子どもが喜びそうなおしゃぶりやガラガラもある。
「このキャビネットやチェストはリトマインの品ですね」
「あ……っ!アリシアが好きだから……」
「まあ、贅沢な子だこと」
アリシアはコロコロ笑う。
公爵令嬢のアリシアが持つことのできなかった品が、この子の為には生まれる前から用意されているのだ。流石は王家のお子様である。
「何か希望があったら教えて……?」
おずおず問いかけるレイヴンにアリシアは首を振った。
これ以上ないほど準備は整えられている。不満などあるはずがない。
「理想の子ども部屋そのものですわ。これ以上のものはございません」
季節はこれから春へ向かっていく。
アーチ型の窓からは明るい陽が降り注ぐだろう。
すべて記憶に残っているままで何も変わっていない。いつアリシアが戻ってきても良いように整えてくれていたのだ。
レイヴンはアリシアが戻ってから一時も傍を離れない。今もアリシアにぴったり寄り添い座っている。
本当はアリシアを膝に乗せようとしたのだ。だけどアリシアがそれを固辞した。
標準的な妊娠8ヶ月の体重というのは、つまり以前より重くなったということで、悪いことではないとわかっていても重くなったとは思われたくないのが乙女心だ。
レイヴンもアリシアが戻ってそうそう嫌な思いをさせて嫌われたくない。だから残念そうな顔をしながらもすぐに引いていた。
「父上と母上のところには明日挨拶に行こう。今日はゆっくり休んで」
「はい。ありがとうございます」
国王とマルグリットには過分な配慮を賜った。
アリシアが何の憂いもなく療養できたのは、2人が状況を整えてくれたからだ。その礼をきちんと伝えなければならない。
「2人とも本当に喜んで下さっている。なんといっても初孫だからね」
初めての孫で、待ち望まれた王太子の子だ。
まだ跡継ぎとなる男の子かはわからないが、大いに期待しているだろう。だけどそれだけではなく、マルグリットなら女の子でも喜んでくれるだろうと思えた。
「それで……。申し訳ないけど、子ども部屋をそれなりに準備したんだ。勿論!嫌なところがあれば変えてくれて良いから!」
「まあ、それは当然ですわ」
アリシアはもう妊娠8ヶ月になる。出産予定日はもう少し先だが、これからはあっという間だろう。戻るのを待って準備を始めたのでは間に合わない。
アリシアは当然それを心得ていて、レイヴンやマルグリットの主導で準備が進められることに否やはなかった。それにレイヴンもマルグリットもよく王領へ文を送ってくれて、アリシアの好みを訊いてくれていた。
「レイヴン様やマルグリット様が、私のことを考えて下さっているのは良くわかっています。私こそ準備をすべて任せてしまい、申し訳ありません」
「……それじゃあ子ども部屋を見てみる?」
「……はいっ!!」
アリシアが弾かれたように返事をすると、レイヴンは嬉しそうに微笑んだ。
それからレイヴンに手を取られてゆっくりと部屋を出る。
子ども部屋はレイヴンの部屋を通り過ぎて少し廊下を進んだ先の、チョコレート型の扉がついた部屋だった。
「まあ、可愛い!!」
扉が開いた途端、アリシアは声を上げた。
生まれてくる子が男の子でも女の子でも良いように壁は空色に塗られ、雲や虹が描かれている。草色のカーペットは草原をイメージしているのだろうか。羊や山羊の形をしたクッションやぬいぐるみがそこかしこに飾られていた。その中に木製の揺り籠が置かれ、オルゴールメリーには色とりどりの鳥や動物たちが揺れている。
白いチェストの中には可愛らしいミトンや靴下、柔らかい肌着が入っていた。子どもが喜びそうなおしゃぶりやガラガラもある。
「このキャビネットやチェストはリトマインの品ですね」
「あ……っ!アリシアが好きだから……」
「まあ、贅沢な子だこと」
アリシアはコロコロ笑う。
公爵令嬢のアリシアが持つことのできなかった品が、この子の為には生まれる前から用意されているのだ。流石は王家のお子様である。
「何か希望があったら教えて……?」
おずおず問いかけるレイヴンにアリシアは首を振った。
これ以上ないほど準備は整えられている。不満などあるはずがない。
「理想の子ども部屋そのものですわ。これ以上のものはございません」
季節はこれから春へ向かっていく。
アーチ型の窓からは明るい陽が降り注ぐだろう。
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