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第2部 6章
80 幸福のかたち
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あっという間に月日は過ぎ、クロウが生まれてから半年が経った。
クロウは今日も元気に両手を振り回している。
「あっぶぅ。だぁー」
「ふふっ。今日もご機嫌ね?」
アリシアは腕の中のクロウに微笑みかけると、その頬にそっと口づけた。
部屋の中には、アリシアの侍女としてエレノアとジーナ、ドナが控えている。
そしてクロウの侍女としてマリアンが乳母のルクセンヌ伯爵夫人と共に控えていた。
ロバートとマリアンはあの後正式に婚約を結び、ロバートは今、国を離れている。マリアンは王太子宮の使用人棟に部屋を与えられ、住み込みで勤めてくれている。
婚姻後もこの生活スタイルを続けていくつもりのようだ。以前2人きりになった時にこっそり教えてくれた。
「ロバート様との縁組はそういった意味でも都合が良いのです。普段アナトリアにいらっしゃらない方ですから、同居する必要がありません」
あっさりそう口にするマリアンにアリシアは呆気に取られたけれど、確かに四六時中一緒にいるだけが夫婦ではない。
ロバートはこれまでと同じように商会の仕事で各地を飛びまわる生活を続ける。そしてマリアンは王太子宮で勤めながら、ロバートが王都へ来た時だけ王都で買った自邸へ帰宅するというのだ。
不思議な夫婦関係だけれど、お互いが大切にしているものを大切にしながら夫婦になれるのは素敵なことである。
「アリシア!ごめんね、遅くなった!」
扉が叩かれ視線を向けるとレイヴンが姿を現した。
今は午後の休憩時間。レイヴンは相変わらず休憩時間の度にアリシアのところへ戻ってくる。
勿論クロウに会う為でもあるのだけれど。
「クロウ!会いたかったよー!」
「あーぁっ!きゃあっ」
小走りでやってきたレイヴンがクロウごとアリシアを抱き締める。
クロウも勿論父と認識しているので嬉しそうに声を上げていた。
アリシアも床上げの日から徐々に公務へ復帰し、今では以前と同じように執務を行っている。毎月のお茶会も慰問活動も復活させた。
その分クロウと過ごせる時間はどうしても短くなる。クロウもそれを理解しているようで、アリシアやレイヴンに会えた時は全力で甘えてくるのだ。
そんなクロウを心から愛しいと思う。
この幸福は、アリシアが嫁ぐ前に思い描いていたものと全く違うものだ。
嫁ぐ前はレイヴンに愛されていると思わなかったし、レイヴンを愛するようになるとも思わなかった。
子はできても良いし、できなくても良いと思っていた。
アリシアに子ができなければレイヴンが側妃を迎える。その時に問題が起こらないよう離宮へ移ろうと思っていたのだ。
今はそんなことは思わない。
レイヴンを心から愛しているし、レイヴンの子をこの先も生みたいと思う。
他の女性には生ませたくない。
1、2年も経てばスペアになる王子を望む声が大きくなるだろう。
その時少し大きくなったクロウが母に抱かれた弟を覗き込む、そんな光景が見られたら。
それがアリシアの辿り着いた幸福のかたちだ。
「レオナルドもしばらく来ないし、当分平和に過ごせるなぁ」
「まあ、レイヴン様ったら」
レイヴンの言葉にアリシアはコロコロと笑う。
昨日レオナルドとディアナの結婚式が行われた。今日からレオナルドは休暇をとってディアナと領地へ行っているのだ。
普通、貴族は結婚した後休みを取って旅行へ出掛ける。それが領地になったのは、ディアナの希望によるものだ。
婚約期間が短かったので、ディアナはまだすべての領地を見られていない。初めての場所へ行くのなら旅行と同じだと言うのだ。
レオナルドは王宮で役職を得ているので滅多に領地を訪れることができない。
旅行を楽しみながら視察も行えれば一挙両得とは随分しっかりした奥方である。
「アリシアは……、淋しい?」
「そんなことありません」
心配そうに窺うレイヴンにアリシアは微笑んで首を振った。
兄を取られたような気持ちが少しもないと言えば嘘になるが、それよりも素晴らしい義姉ができたと喜ぶ気持ちの方が大きい。
それにアリシアにはレイヴンとクロウがいる。
「私、今とっても幸福ですわ」
にっこり笑ったアリシアに、レイヴンがホッとしたように笑う。
そしてそっと頬に口づけた。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
なんか最終話みたいーと思いながら書いてましたが、もう少し続きます!
クロウは今日も元気に両手を振り回している。
「あっぶぅ。だぁー」
「ふふっ。今日もご機嫌ね?」
アリシアは腕の中のクロウに微笑みかけると、その頬にそっと口づけた。
部屋の中には、アリシアの侍女としてエレノアとジーナ、ドナが控えている。
そしてクロウの侍女としてマリアンが乳母のルクセンヌ伯爵夫人と共に控えていた。
ロバートとマリアンはあの後正式に婚約を結び、ロバートは今、国を離れている。マリアンは王太子宮の使用人棟に部屋を与えられ、住み込みで勤めてくれている。
婚姻後もこの生活スタイルを続けていくつもりのようだ。以前2人きりになった時にこっそり教えてくれた。
「ロバート様との縁組はそういった意味でも都合が良いのです。普段アナトリアにいらっしゃらない方ですから、同居する必要がありません」
あっさりそう口にするマリアンにアリシアは呆気に取られたけれど、確かに四六時中一緒にいるだけが夫婦ではない。
ロバートはこれまでと同じように商会の仕事で各地を飛びまわる生活を続ける。そしてマリアンは王太子宮で勤めながら、ロバートが王都へ来た時だけ王都で買った自邸へ帰宅するというのだ。
不思議な夫婦関係だけれど、お互いが大切にしているものを大切にしながら夫婦になれるのは素敵なことである。
「アリシア!ごめんね、遅くなった!」
扉が叩かれ視線を向けるとレイヴンが姿を現した。
今は午後の休憩時間。レイヴンは相変わらず休憩時間の度にアリシアのところへ戻ってくる。
勿論クロウに会う為でもあるのだけれど。
「クロウ!会いたかったよー!」
「あーぁっ!きゃあっ」
小走りでやってきたレイヴンがクロウごとアリシアを抱き締める。
クロウも勿論父と認識しているので嬉しそうに声を上げていた。
アリシアも床上げの日から徐々に公務へ復帰し、今では以前と同じように執務を行っている。毎月のお茶会も慰問活動も復活させた。
その分クロウと過ごせる時間はどうしても短くなる。クロウもそれを理解しているようで、アリシアやレイヴンに会えた時は全力で甘えてくるのだ。
そんなクロウを心から愛しいと思う。
この幸福は、アリシアが嫁ぐ前に思い描いていたものと全く違うものだ。
嫁ぐ前はレイヴンに愛されていると思わなかったし、レイヴンを愛するようになるとも思わなかった。
子はできても良いし、できなくても良いと思っていた。
アリシアに子ができなければレイヴンが側妃を迎える。その時に問題が起こらないよう離宮へ移ろうと思っていたのだ。
今はそんなことは思わない。
レイヴンを心から愛しているし、レイヴンの子をこの先も生みたいと思う。
他の女性には生ませたくない。
1、2年も経てばスペアになる王子を望む声が大きくなるだろう。
その時少し大きくなったクロウが母に抱かれた弟を覗き込む、そんな光景が見られたら。
それがアリシアの辿り着いた幸福のかたちだ。
「レオナルドもしばらく来ないし、当分平和に過ごせるなぁ」
「まあ、レイヴン様ったら」
レイヴンの言葉にアリシアはコロコロと笑う。
昨日レオナルドとディアナの結婚式が行われた。今日からレオナルドは休暇をとってディアナと領地へ行っているのだ。
普通、貴族は結婚した後休みを取って旅行へ出掛ける。それが領地になったのは、ディアナの希望によるものだ。
婚約期間が短かったので、ディアナはまだすべての領地を見られていない。初めての場所へ行くのなら旅行と同じだと言うのだ。
レオナルドは王宮で役職を得ているので滅多に領地を訪れることができない。
旅行を楽しみながら視察も行えれば一挙両得とは随分しっかりした奥方である。
「アリシアは……、淋しい?」
「そんなことありません」
心配そうに窺うレイヴンにアリシアは微笑んで首を振った。
兄を取られたような気持ちが少しもないと言えば嘘になるが、それよりも素晴らしい義姉ができたと喜ぶ気持ちの方が大きい。
それにアリシアにはレイヴンとクロウがいる。
「私、今とっても幸福ですわ」
にっこり笑ったアリシアに、レイヴンがホッとしたように笑う。
そしてそっと頬に口づけた。
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なんか最終話みたいーと思いながら書いてましたが、もう少し続きます!
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