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番外編2
雪の思い出
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「まあ、夜の間に随分降ったのね」
朝の支度を終え、自室に入ったアリシアは窓から見える景色に声を上げた。
窓の外に広がる王太子宮の庭園は雪で白く染まっている。
昨夜眠る前は雪は降っていなかった。それなのに今はレイヴンがアリシアの為に揃えてくれた花々も雪を被って首を垂れていた。
「夜中は随分気温が下がっていたからね」
後ろからレイヴンの声が聞こえるのと同時に背中から腕が伸びてくる。軽く抱き締められて頬に口づけが落とされた。
レイヴンの手はそのままアリシアの腹を撫でる。3人目の子がここにいるのだ。
「そうなのですね。気が付きませんでした」
アリシアはこれまでも寝ていて寒いと感じたことはなかった。
王太子夫妻の寝室は一晩中暖炉に火が入れられているし、レイヴンに抱き締められて眠るのでぬくもりに包まれている。
時々夜中に起きだしたレイヴンが暖炉に薪を足しているのだが、アリシアはそれを知らない。
アリシアはレイヴンに腰を抱かれたまま食事が用意されたテーブルへ向かった。
寒さを避けるよう考えられているようで、いつもより暖炉の近くに用意されている。アリシアが座るとエレノアがさっとひざ掛けを掛けた。
「今日は1日大変そうだなぁ」
レイヴンがぼやく。
窓から見た景色は白銀に染まっていて美しかったけれど、良いことばかりではない。
元々王都で積もるほどの雪が降るのは珍しいのだ。降ることがあっても積もる前に溶けてしまう。
だから王都は雪に弱かった。
貴族街では下働きの者たちがせっせと雪かきをしているだろうが、雪道に慣れていない御者は馬車をゆっくり走らせるしかない。どこへ行くにも渋滞になり、身動きが取れなくなってしまう。
きっと文官たちの多くが出仕してくるのは昼頃になるし、今日届くはずの種類も夕方になるかもしれない。
時間通りに執務を終わらせ、アリシアのところへ戻って来るのを信条としているレイヴンにはしばらく辛い日々になりそうだ。そもそも年末年始休暇が近いので執務が立て込んでいるのだ。
「まあ、仕方ありませんわ」
心底嫌そうな顔のレイヴンを見てアリシアは苦笑する。
雪は自然現象なので誰かを責めるわけにもいかない。今日も昼まで手が空くようなら時間を見てここへ戻ってこれば良いのだ。執務の時間は決まっているけれど、レイヴンの立場なら自身の裁量で調整することができる。
それにレイヴンが帰って来られないなら、アリシアが会いに行っても良い。
「駄目だよ!アリシアは今日外に出ちゃ駄目だからね!」
「っ!!」
アリシアは何も言っていないのに、レイヴンには考えていることがわかったようだ。
「体が冷えたらどうするの!それに万一滑って転けたりしたら……っ」
レイヴンは言いながら想像したらしく、顔を青褪めさせる。いつも過保護なレイヴンだが、最近拍車がかかっているのだ。
アリシアが外に出ないよう見ているようにとエレノアにきつく指示するレイヴンを見ながら、これは子を生むまで続くだろうとアリシアは諦めた。
朝食の後は2人で子ども部屋へ向かった。
執務へ行く前の一時を子どもたちと過ごすのが習慣になっている。
子ども部屋の扉を開けると、クロウとマーレットのはしゃぐ声が聞こえた。
2人とも雪が積もるのを初めて見たので興奮しているのだ。
「とうしゃま、かあしゃま!ゆきーーー!!」
レイヴンとアリシアの姿を見てクロウが駆けてくる。その後ろを最近歩けるようになったマーレットもついてくる。
「おしょといきちゃい!おしょとーーっ!」
「とーーっ!」
興奮して飛び跳ねる2人にレイヴンとアリシアは顔を見合わせた。
つい先程アリシアは外出禁止を言い渡されたばかりだ。
「えーと、外は寒いから止めたほうが良いんじゃないかな?」
まずはレイヴンが穏やかに止めてみる。
だけど2人には効果がなかった。
「いあーーーっ」
「……それじゃあお昼の休憩の時に……」
「やーーーっ!」
「いまいきちゃいーーーっ!!」
2人はどんどん泣き声になっていく。
レイヴンに勝ち目はなかった。
「……それじゃあ少しだけお外に行こうか」
「やったーーーっ!!」
「たーーーっ!!」
飛び跳ねる2人を乳母たちが慌てて捕まえ、身支度をさせていく。
もこもこの上着を着てマフラーを巻き、手袋をして長靴を履いた2人はころころしていて小動物のようだ。
結局2人はサンルームから出たところで初めての雪遊びを楽しんだ。
乳母たちと共にレイヴンも2人を手伝い、雪だるまや雪うさぎを作っていく。
アリシアはサンルームから楽しそうに遊ぶ3人を見守った。
毎年冬になると思い出す思い出になった。
朝の支度を終え、自室に入ったアリシアは窓から見える景色に声を上げた。
窓の外に広がる王太子宮の庭園は雪で白く染まっている。
昨夜眠る前は雪は降っていなかった。それなのに今はレイヴンがアリシアの為に揃えてくれた花々も雪を被って首を垂れていた。
「夜中は随分気温が下がっていたからね」
後ろからレイヴンの声が聞こえるのと同時に背中から腕が伸びてくる。軽く抱き締められて頬に口づけが落とされた。
レイヴンの手はそのままアリシアの腹を撫でる。3人目の子がここにいるのだ。
「そうなのですね。気が付きませんでした」
アリシアはこれまでも寝ていて寒いと感じたことはなかった。
王太子夫妻の寝室は一晩中暖炉に火が入れられているし、レイヴンに抱き締められて眠るのでぬくもりに包まれている。
時々夜中に起きだしたレイヴンが暖炉に薪を足しているのだが、アリシアはそれを知らない。
アリシアはレイヴンに腰を抱かれたまま食事が用意されたテーブルへ向かった。
寒さを避けるよう考えられているようで、いつもより暖炉の近くに用意されている。アリシアが座るとエレノアがさっとひざ掛けを掛けた。
「今日は1日大変そうだなぁ」
レイヴンがぼやく。
窓から見た景色は白銀に染まっていて美しかったけれど、良いことばかりではない。
元々王都で積もるほどの雪が降るのは珍しいのだ。降ることがあっても積もる前に溶けてしまう。
だから王都は雪に弱かった。
貴族街では下働きの者たちがせっせと雪かきをしているだろうが、雪道に慣れていない御者は馬車をゆっくり走らせるしかない。どこへ行くにも渋滞になり、身動きが取れなくなってしまう。
きっと文官たちの多くが出仕してくるのは昼頃になるし、今日届くはずの種類も夕方になるかもしれない。
時間通りに執務を終わらせ、アリシアのところへ戻って来るのを信条としているレイヴンにはしばらく辛い日々になりそうだ。そもそも年末年始休暇が近いので執務が立て込んでいるのだ。
「まあ、仕方ありませんわ」
心底嫌そうな顔のレイヴンを見てアリシアは苦笑する。
雪は自然現象なので誰かを責めるわけにもいかない。今日も昼まで手が空くようなら時間を見てここへ戻ってこれば良いのだ。執務の時間は決まっているけれど、レイヴンの立場なら自身の裁量で調整することができる。
それにレイヴンが帰って来られないなら、アリシアが会いに行っても良い。
「駄目だよ!アリシアは今日外に出ちゃ駄目だからね!」
「っ!!」
アリシアは何も言っていないのに、レイヴンには考えていることがわかったようだ。
「体が冷えたらどうするの!それに万一滑って転けたりしたら……っ」
レイヴンは言いながら想像したらしく、顔を青褪めさせる。いつも過保護なレイヴンだが、最近拍車がかかっているのだ。
アリシアが外に出ないよう見ているようにとエレノアにきつく指示するレイヴンを見ながら、これは子を生むまで続くだろうとアリシアは諦めた。
朝食の後は2人で子ども部屋へ向かった。
執務へ行く前の一時を子どもたちと過ごすのが習慣になっている。
子ども部屋の扉を開けると、クロウとマーレットのはしゃぐ声が聞こえた。
2人とも雪が積もるのを初めて見たので興奮しているのだ。
「とうしゃま、かあしゃま!ゆきーーー!!」
レイヴンとアリシアの姿を見てクロウが駆けてくる。その後ろを最近歩けるようになったマーレットもついてくる。
「おしょといきちゃい!おしょとーーっ!」
「とーーっ!」
興奮して飛び跳ねる2人にレイヴンとアリシアは顔を見合わせた。
つい先程アリシアは外出禁止を言い渡されたばかりだ。
「えーと、外は寒いから止めたほうが良いんじゃないかな?」
まずはレイヴンが穏やかに止めてみる。
だけど2人には効果がなかった。
「いあーーーっ」
「……それじゃあお昼の休憩の時に……」
「やーーーっ!」
「いまいきちゃいーーーっ!!」
2人はどんどん泣き声になっていく。
レイヴンに勝ち目はなかった。
「……それじゃあ少しだけお外に行こうか」
「やったーーーっ!!」
「たーーーっ!!」
飛び跳ねる2人を乳母たちが慌てて捕まえ、身支度をさせていく。
もこもこの上着を着てマフラーを巻き、手袋をして長靴を履いた2人はころころしていて小動物のようだ。
結局2人はサンルームから出たところで初めての雪遊びを楽しんだ。
乳母たちと共にレイヴンも2人を手伝い、雪だるまや雪うさぎを作っていく。
アリシアはサンルームから楽しそうに遊ぶ3人を見守った。
毎年冬になると思い出す思い出になった。
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