5 / 6
5.
「だけど、フェアバーンズ公爵家の長男ってたしか幼馴染の……」
「おいっ、やめないか!」
パートナーが言いかけたところに、ライオネル男爵家子息が鋭く注意した。
わたしが壁の花になっていることに気がついたのだ。
男爵家子息とそのパートナー。それから、姉のことを散々言っていた人たちが、気まずそうにわたしに会釈してきた。
気を遣わせてしまった。だから、愛想よく満面の笑みで会釈を返しておいた。
「みなさん」
そのタイミングでフェアバーンズ公爵家子息たちがやって来た。つまり、アレックスとクリスである。
「よくお越しくださいました」
クリスは、友好的かつやわらかい笑みでもって招待客たちに愛想を振りまいている。そのうしろで、アレックスはどこか落ち着かないようだ。しきりに時間を気にしている。
「ご招待いただきありがとうございます。それから、おめでとうございます」
「おめでとうございます」
ついさきほどまで姉をこき下ろしていた人たちは、途端に兄弟二人をチヤホヤし始めた。
その中心にいるクリスと目が合った。
彼は、そうとわからぬよう目玉をグルリとまわした。
「あーっ、いたわ」
病弱なレディとはかけ離れた金切り声とともに、招待客たちをかきわけ姉が突進してきた。そのうしろから、両親と兄もついてきている。
「アレックス様、ご招待ありがとうございます。それから、この度はおめでとうございます。婚約者として鼻が高いですわ。もちろんわたしはアレックス様にふさわしいレディとして、今後もふるまうつもりです」
姉は、周囲の人をぶっ飛ばす勢いでアレックスに近づいた。それから、あからさまに媚びを売った。
「きみは? たしかランの姉だったよね?」
アレックスは、その姉の勢いにさすがに意識がこの場に戻ってきたらしい。彼は、驚いたように尋ねた。
「きみがわたしの婚約者っていったい……」
「ちょっとどういうことよ? あなた、ちゃんと伝えたの?」
姉がすごい剣幕で尋ねた相手は、もちろんわたしだ。
「伝わっているはずです。なにせ会えませんので、伝言をお願いしました」
「そういえば、聞いたような気がするな。興味がないからすっかり忘れていたよ。っていうか、抜け落ちていた」
「興味がないですって? わたしは、あなたの婚約者ですよ? 妻になるのですよ? それなのに、興味がないって……」
「彼女、おまえの婚約者じゃないのか?」
アレックスは姉のクレームをスルーし、弟であるクリスに尋ねた。
「兄上、わたしはとっくの昔に彼女に婚約破棄されました。でっ、彼女は兄上の婚約者になったわけです」
「面倒だな」
アレックスは、ひと言で感想を述べた。
「おいっ、やめないか!」
パートナーが言いかけたところに、ライオネル男爵家子息が鋭く注意した。
わたしが壁の花になっていることに気がついたのだ。
男爵家子息とそのパートナー。それから、姉のことを散々言っていた人たちが、気まずそうにわたしに会釈してきた。
気を遣わせてしまった。だから、愛想よく満面の笑みで会釈を返しておいた。
「みなさん」
そのタイミングでフェアバーンズ公爵家子息たちがやって来た。つまり、アレックスとクリスである。
「よくお越しくださいました」
クリスは、友好的かつやわらかい笑みでもって招待客たちに愛想を振りまいている。そのうしろで、アレックスはどこか落ち着かないようだ。しきりに時間を気にしている。
「ご招待いただきありがとうございます。それから、おめでとうございます」
「おめでとうございます」
ついさきほどまで姉をこき下ろしていた人たちは、途端に兄弟二人をチヤホヤし始めた。
その中心にいるクリスと目が合った。
彼は、そうとわからぬよう目玉をグルリとまわした。
「あーっ、いたわ」
病弱なレディとはかけ離れた金切り声とともに、招待客たちをかきわけ姉が突進してきた。そのうしろから、両親と兄もついてきている。
「アレックス様、ご招待ありがとうございます。それから、この度はおめでとうございます。婚約者として鼻が高いですわ。もちろんわたしはアレックス様にふさわしいレディとして、今後もふるまうつもりです」
姉は、周囲の人をぶっ飛ばす勢いでアレックスに近づいた。それから、あからさまに媚びを売った。
「きみは? たしかランの姉だったよね?」
アレックスは、その姉の勢いにさすがに意識がこの場に戻ってきたらしい。彼は、驚いたように尋ねた。
「きみがわたしの婚約者っていったい……」
「ちょっとどういうことよ? あなた、ちゃんと伝えたの?」
姉がすごい剣幕で尋ねた相手は、もちろんわたしだ。
「伝わっているはずです。なにせ会えませんので、伝言をお願いしました」
「そういえば、聞いたような気がするな。興味がないからすっかり忘れていたよ。っていうか、抜け落ちていた」
「興味がないですって? わたしは、あなたの婚約者ですよ? 妻になるのですよ? それなのに、興味がないって……」
「彼女、おまえの婚約者じゃないのか?」
アレックスは姉のクレームをスルーし、弟であるクリスに尋ねた。
「兄上、わたしはとっくの昔に彼女に婚約破棄されました。でっ、彼女は兄上の婚約者になったわけです」
「面倒だな」
アレックスは、ひと言で感想を述べた。
あなたにおすすめの小説
ほんの少しの仕返し
turarin
恋愛
公爵夫人のアリーは気づいてしまった。夫のイディオンが、離婚して戻ってきた従姉妹フリンと恋をしていることを。
アリーの実家クレバー侯爵家は、王国一の商会を経営している。その財力を頼られての政略結婚であった。
アリーは皇太子マークと幼なじみであり、マークには皇太子妃にと求められていたが、クレバー侯爵家の影響力が大きくなることを恐れた国王が認めなかった。
皇太子妃教育まで終えている、優秀なアリーは、陰に日向にイディオンを支えてきたが、真実を知って、怒りに震えた。侯爵家からの離縁は難しい。
ならば、周りから、離縁を勧めてもらいましょう。日々、ちょっとずつ、仕返ししていけばいいのです。
もうすぐです。
さようなら、イディオン
たくさんのお気に入りや♥ありがとうございます。感激しています。
【完結】私は死んだ。だからわたしは笑うことにした。
彩華(あやはな)
恋愛
最後に見たのは恋人の手をとる婚約者の姿。私はそれを見ながら階段から落ちた。
目を覚ましたわたしは変わった。見舞いにも来ない両親にー。婚約者にもー。わたしは私の為に彼らをやり込める。わたしは・・・私の為に、笑う。
魔女見習いの義妹が、私の婚約者に魅了の魔法をかけてしまいました。
星空 金平糖
恋愛
「……お姉様、ごめんなさい。間違えて……ジル様に魅了の魔法をかけてしまいました」
涙を流す魔女見習いの義妹─ミラ。
だけど私は知っている。ミラは私の婚約者のことが好きだから、わざと魅了の魔法をかけたのだと。
それからというものジルはミラに夢中になり、私には見向きもしない。
「愛しているよ、ミラ。君だけだ。君だけを永遠に愛すると誓うよ」
「ジル様、本当に?魅了の魔法を掛けられたからそんなことを言っているのではない?」
「違うよ、ミラ。例え魅了の魔法が解けたとしても君を愛することを誓うよ」
毎日、毎日飽きもせずに愛を囁き、むつみ合う2人。それでも私は耐えていた。魅了の魔法は2年すればいずれ解ける。その日まで、絶対に愛する人を諦めたくない。
必死に耐え続けて、2年。
魅了の魔法がついに解けた。やっと苦痛から解放される。そう安堵したのも束の間、涙を流すミラを抱きしめたジルに「すまない。本当にミラのことが好きになってしまったんだ」と告げられる。
「ごめんなさい、お姉様。本当にごめんなさい」
涙を流すミラ。しかしその瞳には隠しきれない愉悦が滲んでいた──……。
その言葉はそのまま返されたもの
基本二度寝
恋愛
己の人生は既に決まっている。
親の望む令嬢を伴侶に迎え、子を成し、後継者を育てる。
ただそれだけのつまらぬ人生。
ならば、結婚までは好きに過ごしていいだろう?と、思った。
侯爵子息アリストには幼馴染がいる。
幼馴染が、出産に耐えられるほど身体が丈夫であったならアリストは彼女を伴侶にしたかった。
可愛らしく、淑やかな幼馴染が愛おしい。
それが叶うなら子がなくても、と思うのだが、父はそれを認めない。
父の選んだ伯爵令嬢が婚約者になった。
幼馴染のような愛らしさも、優しさもない。
平凡な容姿。口うるさい貴族令嬢。
うんざりだ。
幼馴染はずっと屋敷の中で育てられた為、外の事を知らない。
彼女のために、華やかな舞踏会を見せたかった。
比較的若い者があつまるような、気楽なものならば、多少の粗相も多目に見てもらえるだろう。
アリストは幼馴染のテイラーに己の色のドレスを贈り夜会に出席した。
まさか、自分のエスコートもなしにアリストの婚約者が参加しているとは露ほどにも思わず…。
何か、勘違いしてません?
シエル
恋愛
エバンス帝国には貴族子女が通う学園がある。
マルティネス伯爵家長女であるエレノアも16歳になったため通うことになった。
それはスミス侯爵家嫡男のジョンも同じだった。
しかし、ジョンは入学後に知り合ったディスト男爵家庶子であるリースと交友を深めていく…
※世界観は中世ヨーロッパですが架空の世界です。