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しおりを挟む秋夜さんのフェロモンが収まると、後ろで二人が崩れ落ちる。音でしかわからなかったけどおそらく間違ってはいないと思う。
「ええと…秋夜さん、落ち着きました?」
「まだ」
「藍くん、茜くん大丈夫?」
「はぁ…はっ…」
「俺はまだ…マシ…茜がヤバそうだから部屋帰るわ」
「うん」
俺は未だに秋夜さんの腕の中なので見えないが、足音やドアの開閉音から出ていったのだとわかった。秋夜さんもなんだかまだ拗ねているようだし。先程俺も誰か知らない相手に、威嚇フェロモンを浴びせられ、威嚇フェロモンの脅威を知ったのだ。あの時は短かったし、すぐに秋夜さんに落ち着かせてもらったから大丈夫だった。茜くんも番の藍くんになだめて貰うのが一番だろう。
しばらくそのままでいたが、秋夜さんが離してくれる気配はない。うーん…これはどうするべきだ?というか秋夜さんは何に怒って?拗ねて?威嚇フェロモンを出したのだろう?
「秋夜さん…そろそろ」
「ん…」
「もう落ち着きましたよね?」
「まぁね」
そっと秋夜さんから離れる。そして改めて秋夜さんの顔を見た。なぜこんなに悲しげに笑うのだろう…。俺は何かしてしまったのだろうか?何かこの人を傷つけてしまったのだろうか。
「…秋夜さん…あの…」
「ごめん…」
「ええと…俺は大丈夫でしたから。あの二人には謝ってあげて欲しいですけど…」
「ん、あとで謝っとく。」
「なんで怒ったのか…教えてくれますか?」
「…香夜のこと取られたくない。誰にも」
「俺、ですか?」
「そう…他のαに近づかないで」
「わかりました」
なんだかわからないけれど、秋夜さんが俺のことを思っていてくれていることだけは伝わってきた。それに何度も俺のことを助けてくれた秋夜さんが嫌だと言うのなら、αに近づかないようにしようと思う。今はまだ番が欲しいとは思わないし。
「…襲われそうになったら俺の名前出していいから」
「はい…」
「そういえば、香夜抑制剤は?」
「持ってます」
「ならいい。ちゃんと飲んでる?」
「飲んでますよ?でもここに来てから…ちょっと違和感あるんですけど…」
「違和感って?」
「なんというか…ザワザワするっていうか…」
「そう…一度医者にかかったほうが良いかもね。」
「…でも今まではαに会ったことってなかったんです。だから、慣れないαのフェロモンとかのせいなのかもしれません…」
「とりあえず、明日保険医のところに行こうね」
「はい」
そろそろ夜も更けて来ている。秋夜さんが、またお風呂入っていけば?と言ってくれたので、服など部屋に取りに行って戻ってきた。秋夜さんの提案を受けたのには理由があった。
秋夜さんの顔色がとても悪い気がするのだ。だからこそ、秋夜さんを一人にしたくなかった。ちゃんと俺が休ませよう!
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