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しおりを挟むタカミに会いたい…褒められたい…撫でられたい…。
そんな思いをすべて押し込めて、ただ只管に訓練と魔物討伐に明け暮れた。そうして僕は、1年という最短期間でタカミと同じランクであるBランクまで上がることができた。常人からしたらあり得ないスピードでそんなことが成し得たのは、Sランクパーティーの協力もあるが、何よりも全ての時間をランク上げだけに費やしたからである。
常軌を逸していると言われようが構いはしない。そんな他人の評価などどうだっていい。僕が欲しいのはタカミからの評価だけだ。
タカミから離れることになって感情を失ったようだと言われることが増えた。まぁそもそもタカミ以外に笑顔を向けることなど無かったから、変わっていないといえば変わっていないのだろうけど、一年一緒に居るだけの他人(パーティーメンバー)はそんなことは知らないからね。
「ねぇ、貴方、最近噂の最速でBランクに上がった子でしょう?私が癒やしてあげるわ、ね?部屋に行きましょう?」
「……」
「ねぇ、聞こえているんでしょ?無視しないでちょうだい」
「おい、あんまりソイツに絡むなよ。どうなっても知らねぇぞ」
俺のことを知っているらしい冒険者が、女を止めに入ってくる。そんな忠告だけじゃなくて、どうせなら引っ張ってどこかへ連れて行ってくれればいいのに…。
「はぁ?アンタには関係ないでしょう。ねぇってば、邪魔が入る前に早く移動しましょう」
そう言って俺に手を伸ばす女。触れられることが嫌で、直ぐにその女を氷漬けにしてやった。
「汚い手で触るな。僕に触れていいのはあの人だけだ。」
そのまま執拗い女を放置して、宿に戻る。そんなことを繰り返すうちに、噂が広まったのか俺に絡んでくる奴は減っていった。そしてそれと同時に冷酷王子なんて呼ばれ方をするようになった。
直接言われたことはパーティーの面々くらいにしかないけど、方々で聞くことになったその二つ名?を聞いたら、取り敢えずぶっ飛ばすか、氷漬けにすることにした。そんな恥ずかしい二つ名、絶対にタカミの耳に入れたくないし。
好き勝手言ってくれちゃってさ…。顔と強さに寄ってきただけの奴等なんか必要ないから、絡まれにくくなったのは有り難いけどね。冷酷王子はともかくとして…タカミに僕のことが伝わればいいなぁと思う。僕のこと沢山考えて欲しいし。
「コクヨウ、行くぞ。」
「ああ」
Sランクに上がるまであと二年は掛かるって言われてる…。一年でさえ寂しくて辛いのに…はぁ…。タカミへの思いは募るばかりだ。
「相変わらず辛気臭い顔してるわね…」
「コクヨウはどうせまたあの人のことでも考えてたんだろ?」
「そうだけど?悪い?」
「清々しい程の一途さだな。テツも見習った方がいいぞ。」
「俺ぁいいんだよ!今はまだ遊びてぇの!」
「いつか刺されても知らないわよ?」
「ははっ!俺は強ぇから問題ねぇ」
「はぁ…ほんっと最低!!」
「全く…テツは行動を改めるようにな。」
「わあったよ。リーダーが言うなら仕方ねぇからな…暫く遊べねぇな…」
「そうしてよ。僕にも声掛けてくる女が居て迷惑だったから」
別にパーティーメンバーがどうしていようが気にならない。けれどテツが遊んでいるせいで僕達にも声をかけてくる女が居たからね。僕に触れていいのも声を掛けていいのもタカミだけだもん。
「クッソムカつくこと言いやがる!!モテる男はいいよなぁ!?」
「テツ落ち着きなさいよ。どれだけ嫉妬したって貴方の平凡な顔立ちとコクヨウの綺麗な顔立ちは入れ替わったりしないわ」
「なんだと!?シティ!!そんなことは言われなくても分かってんだよ!!」
「はぁ…喧嘩は程々にしておいてくれよ」
「僕は先に帰ってるから」
「僕も帰るから一緒に帰ろうかコクヨウ」
「ん、リーダーは煩くないからいいよ」
「ははっ基準はそれなのか。まぁいい。」
シティとテツが騒ぐ声を背後に聞きながら、宿に向かって歩き始める。
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