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しおりを挟む久しぶりにベッドで眠れて疲れも取れ、スッキリと目覚めた。隣にはいつもは俺よりも早起きしていることの多いコクヨウがまだ眠っていた。しかし、コクヨウの顔色が優れない。額に手を当ててみると、確実に熱がある。心なしかコクヨウの耳もへにゃりと下がって見える。
「コクヨウ…」
「うぅ…」
砂漠を抜けるまでの間コクヨウはずっと気を張っていたからな…。疲れから来る発熱だろうな。コクヨウが寝ている間に、宿の人にお粥を頼んでくるか。というか、今日は移動できないからここでもう1泊だな。それも伝えて金も払わねぇと。
下に降りていくと、ピシッとした格好をした従業員が食事スペースへ案内を行っていた。
「おはようございます。朝食の準備が出来ております。」
「ああ、それなんだが、連れが体調を崩した。悪いが、粥か何か貰えるか?あと、もう1泊させてもらいたい。」
「かしこまりました。後でお部屋までお持ちいたします。今日は現在お使いのお部屋に予約も入っておりませんので、お泊りいただけます。」
「有り難い。前払いだよな?これで」
「ありがとうございます。それではこちらお返しになります。」
「ああ。ありがとう。」
「治癒術士を呼ぶことも出来ますので、必要でしたらお声掛けください。」
「ああ。」
よし、用も済んだし部屋に戻るか。コクヨウは目覚めたときに一人になっていると不安になるみたいだからな。部屋に入ると、コクヨウは目を醒ましていて、体を起こそうとしていた。
「…たかみ?」
「おう、起きたのかコクヨウ」
「ぅん…どこいってたの?」
「お前熱あるから、ここにもう1泊させて貰えるように頼んできた。今日はちゃんと寝とけよ。」
「ん…ありがと…ねぇ、タカミは今日どうするの?」
「どうってお前の側にいるよ。」
「そっか…えへへ」
ふにゃりと笑ってみせたコクヨウをベッドへ戻し、水場でタオルを濡らす。その絞ったタオルをコクヨウの額に乗せてやる。これくらいしかしてやれないが、少しは楽になるといいんだが…。
「…ありがと…」
「おう。体調どうだ?」
「んー…だるいのと、ちょっと頭が痛いくらい…。大丈夫だよ。」
「そうか。まぁして欲しいことがあったら言えよ。」
「うん、じゃあ、手握ってくれる?」
「おう。」
暖かいコクヨウの手を握る。するりと繋ぎ変えられて、所謂恋人繋ぎになる。素直に甘えてくるのが可愛くて、そのままぎゅっと握る。最近はこうして甘えてくれる事はなかったからな。この間格好良い所見せたいって言ってたし、そう言う事なんだろうな。
熱が上がってきたのか、顔が赤らんでいる。キツそうだな。少し汗ばんでいるコクヨウの身体。一度拭いてやった方がいいかもな。
「コクヨウ、着替えるか?」
「うん…きがえたい。」
「わかった。ちょっと待ってろよ。1回手、放すぞ。」
「えぇ、はなれたくない…」
「はいはい。すぐ戻るって」
「…うん…すぐだよ?」
「おう」
すげぇ素直。イケメンのくせに可愛いとか反則だろ。熱のせいか少し舌足らずに話す感じが、幼さを感じさせて可愛いんだよな。熱あって苦しんでるのに不謹慎だが。首傾げて見上げてくるのとか…あざとい感じでクソ可愛いし。
はぁ…我ながらコクヨウのこと大分好きだよなぁ。魔法でバケツに溜めた水を温める。そしてコクヨウの体を起こして、服を脱がせる。温かいタオルでそっと拭いていく。
「ん…じぶんで…」
「あ?大人しくしてろ。コクヨウ、良い子だろ?」
「…うん…」
「ん、よしよし」
「えへへ」
頭を撫でてやれば、嬉しそうに笑う。身体が冷えないうちに新しい服を着せる。それが終わったタイミングで丁度良く食事が運ばれてきた。俺の分の朝食も運んでくれたらしい。粥も美味そうな匂いがしている。
「コクヨウ飯食えそうか?」
「うん。」
粥の入った小皿をコクヨウに手渡したのだが、一向に食べ始めない。
「コクヨウ?食わねぇのか?」
「…タカミ、たべさせて?」
「は?」
「あーんして、たべさせてほしいな。」
「…仕様がねぇな…。ほら口開けろ。」
「あーん、……ん、おいしい。」
「良かったな。でも無理して食うなよ。」
「うん。もっとたべる。」
従順に口を開けるコクヨウの口にお粥を運んでいく。なんか雛鳥の餌付けみてぇだな。若干恥ずかしい気もするが、まぁでもコクヨウ嬉しそうだし…こんな時くらいいいか。
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