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しおりを挟む隠密行動で街に戻り、宿にいるであろう公爵に報告に向かう。執事に迎えられ、前に話したのと同じ応接間に通された。そこにはすでに公爵がおり、立って俺達を迎えた。
「待っていたよ。依頼の品は…」
「どうぞ。」
「本当に水晶花だ…これで娘を助けられるよ…本当にありがとうタカミ殿、コクヨウ殿」
「ああ。報酬は…?」
「伯爵子息の件だね。きっちりと処理しておいたよ。それから、冒険者ギルドについてもすでに調査が入っていると聞いているよ。君たちに悪いようにはならないだろう。」
「…知ってたのか。」
「ははは!これでも公爵だからね。様々な情報提供があるんだよ。まぁギルドに関しては何も手出しはしていないから安心してほしい。それから、これを。」
公爵が合図して執事が俺達の前に差し出したのは袋に入れられた大量の金貨だった。
「…こんなに受け取れない。」
「いや、娘の命の恩人だ。これくらいさせてくれ。」
「……はぁ…わかった。貰っておく。…一応俺達の連絡先を渡しておく。依頼を受けられるかはわからないが…」
「ああ、有り難いよ。ありがとう。私の連絡先も受け取ってくれ。いつでも頼ってくれていい。権力関係なら力になろう。私は王にも気に入られているからね。娘の命の恩人だといえば、王も君たちに味方してくれる筈だよ。」
「いや…そこまでは求めてないが…まぁ…何かあったら頼む。」
「ああ、そうだ、忘れるところだった。これもあげるよ。」
そう言って差し出されたのは、バッジのようなものだった。何かが刻まれていて、美しい造りをしている。
「……これは?」
「私の家紋入りのバッジだよ。これを持っていれば私の後ろ盾を証明できる。」
「なるほど。ありがとう。」
「いや、こちらこそありがとう。こんなに早く依頼を達成してくれて感謝しているよ。祝の席でも準備させようか?」
「いや、俺達は直ぐに街を出る。この街でやることも終わったからな。」
「そうか…残念だよ。もう少しくらい親交を深めようと思っていたんだが…また連絡させてもらうよ。」
「ああ」
タカミが部屋を出てから、僕達だけになったところで振り返り忠告する。全力ではないけれど、鍛えていない人からすればだいぶキツイだろう殺気を向ける。
「タカミや僕を利用しようとするなら許さないから。あくまで対等に扱うようにね。」
「……っ…あっ…ああ…。勿論だ…」
「……肝に銘じておきます。」
なんとか返事を返せば、彼はタカミを追うように足早に出ていった。殺気から解放され、思わず後ろにあったソファに座り込んで重力のままに身体を預ける。緊張から解放されて、冷や汗がどっと出てくる。
「ふぅ……アレが高ランク冒険者か…。釘を刺されてしまったね…」
「そうでございますね…私の追跡も容易く見破られ、振り切られてしまいましたから…彼らには、協力関係で居て頂くのが良いかと愚考致します。」
「そうだね。まぁ…本当に感謝はしているし。出来る限りのことはするつもりではあったけど…もしかしてギルドから買い上げた砂漠の素材が不味かったかなぁ…。」
「そうでございますね…あの素材の所有権が彼らにある内に勝手にギルド長が我々に売ったようですから…彼らもお怒りだったようです。」
「はぁ…無理矢理に買い上げる意図は無かったんだけどね…加えて買い上げた報酬もまともに彼らに渡らなかったと言うじゃないか…ギルド長は碌なことをしないね全く…。まぁ、彼らをこの宿に連れてきてくれたのは感謝してるけど。」
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