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副総長×平凡1
しおりを挟む青い空
キレイに咲き乱れていた桜が散ったあとの青々とした緑の桜
そんな景色に目を向ける余裕もなく走り続ける。
後ろには、赤と青の髪の不良様方。
待てやコラァ!!などと叫びながら追いかけてくる。待てるわけない。捕まったら確実にしぬ。俺はひ弱な一般学生だもの。
高校生にもなって学校で追いかけっこする羽目になるなんて…
こんなことになったのは、約十分前。
放課後、掃除のためにバケツに水を入れて歩いていた。そんな当たり前の行動からこんなことになったのは、他でもない俺が不良にその水をぶっかけてしまったからだった。
何故か廊下に置かれていた椅子に気付かず、躓いてしまい、そのままバケツが宙を舞った。水はちょうど教室から出てきた不良様にキレイにぶっかかった。
お、俺はわるくない……こともない。
いや、確実に悪いんだが。謝る前に危険な目線にビビって逃げてしまった。逃げろ、と本能が言っていた。
確実に目が殺すと言っていた。そんなこんなでずっとびしょ濡れの不良様と追っかけっこしている。
やばいやばいやばい!!もう体力が限界を迎えそうだ。不良様方は、同じクラスの人だったので知っているが、とても運動神経がいい。正直もう終わったと思った。
しかし、中庭に差し掛かったあたりで、横から声がかかる。
「オイ!止まれ」
静かなのによく通る声だった。その声で後ろの不良がピタリと足を止めた。そこで俺も限界を迎えていたのに加え、気が抜けて座り込んでしまった。
声のした方に目を向ければ、キラキラとした銀髪に紫の瞳。壮絶なイケメンがいた。
しかしその人が纏う雰囲気は、普通の人のソレではなかった。そこにいるだけで威圧感を発しているような…。野生の肉食獣のような刺々しいものだった。
「ここは俺の場所ってわかってて騒いでんのか?」
低くて響く声に、物凄く恐怖を感じる。圧倒的に強者なのだろう。睨まれれば動くどころか息も苦しい気がする。ちらりと視線を向けられただけだが、ヒヤリとした感覚が走る。
俺を追いかけていた不良たちも、青い顔で声のした方にガバリと頭を下げる。佐久間さん!スミマセン!俺ら夢中で追いかけててここに立ち入ってたの気づいてなかったっす!と、弁解する。
状況がよくわからないけど、どうやら俺を追いかけていた不良よりも上の立場の人のようだ。
「まあいい。今回は見逃してやる。そんなことより、なにしてんだ?」
「あー、とソイツに水ぶっかけられて…逃げやがったんで追っかけてました。」
「お前、わざとか?」
偉い不良さんに視線を向けられながら尋ねられる。息が整わないままだったが、とりあえず無視するわけにもいかない。
「い、い、え……はぁ、…はぁ…掃除用に、、水をバケツに入れてまして…何故か廊下に…椅子が…躓いて転んで…それで…」
「そうか…んで?なんで逃げた?」
「こ、怖くて……絶対殴られると思って……逃げなきゃって、パニックになってしまって…本当にごめんなさい!!」
「まあ、そうだろうな…一般の奴らからしたら怖いわな。んで、謝んの?」
「あ、ハイ…あの……謝りもせずに逃げたりしてごめんなさい!!お二人に水をかけてしまったのに……俺が悪かったです…本当にごめんなさい」
「お、おう…まあ俺らも頭に血が登ってたしな…」
「謝ってくれんならそれでいい。」
赤頭の人も、青頭の人も、冷水をぶっかけられるような出来事により、落ち着いたようで普通に許してくれたらしい。よかった…もう学校生活終わったかと思ったけど。
銀髪の彼が近づいてきて、ちゃんと謝れていい子じゃんと、頭を撫で回される。
先程までの刺々しい雰囲気はすでになく、別人かと見まごうほどだった。驚いて見つめると、ん?と顔をかしげる。
美しい造形にますます見つめてしまう。
「なに?俺の色が珍しいか?」
「あ、いえ、いや、珍しいと思います!」
「まあそれでよく見られるから慣れてるけどな」
「そうじゃなくて、雰囲気が…違くて吃驚して…」
「フハハ…お前おもしろ…あー…寝起きでな…」
和やかに話す俺達をしばし黙って見ていた赤頭と、青頭の方に向き直った銀髪さん。
「お前らびしょ濡れだし、チームの溜まり場のシャワー入ってけ。俺が連絡入れといてやる。確か、茜(あかね)と藍(あおい)だろ。」
「は、はい!!嬉しいっす覚えててくれたんっすね!!有難うございます!!」
「お前ら、髪色と一緒でわかりやすいからなー」
「ありがとうございます!この髪色にしといて良かったです。」
「でも、俺らみたいな下っ端がいいんすか…?」
「まあ、いんじゃね?俺がいいって言ってんだから」
「ありがとうございます!荷物取ってきて寄らせて貰います!」
「世話んなります。ありがとうございます!」
「おう、風邪引かないうちにさっさと行け」
「「ハイ、失礼します!」」
二人揃ってお辞儀をして早々に立ち去って行った。
二人を見送った後、
「まあ、あいつらもやられっぱなしだと、メンツも立たないからさ、追っかけたのは許してやってよ。」
と言われ、確かに一般生徒に水をかけられてそのままという訳にもいかないよな、と納得する。
ずっと座りっぱなしだった俺に手を差し伸べて引き起こしてくれる。
「…色々、ご迷惑おかけしました。仲裁ありがとうございました!失礼します」
頭を下げ、これで終わりだと思って俺も先にいなくなった二人のように銀髪さんの前を辞そうとしたのだが…。何故か腕を掴まれて動けない。
「なー…まだ終わってないんだけど?」
「えー…と……なんでしょう?」
「オレさ、佐久間秋夜(さくま しゅうや)っていうんだけど」
「俺は如月香夜(きさらぎ かぐや)です。」
「香夜って呼ぶわ。俺も秋夜でいい」
「えーと、呼ばれるのはいいんですが。名前をお呼びするのは、ちょっと……恐れ多いといいますか…」
こんなイケメンを名前呼びしようものなら、俺は確実に世の中の女子にボコされる。まあここは男子校かつ不良校なので、女子などいないのだが…。
いや、待てよ。さっきの茜さんや藍さんの反応からして偉い人を名前呼びする一般生徒は許されないのでは?
確実に不良に敵視される。俺は喧嘩なんか出来ないし。危ないことは避けるに限る。
「ちゃんと他の奴ら躾けとくから大丈夫」
マジか…なんでこんなに押し強いの?なんでそんなに名前呼びさせたいかなー。了承しないと話進まなそうだし…。仕方ない。
「は、はぁ…わかりました…秋夜さん」
「ん、ありがと。オレこれでもここらのチームの副総長なんだよ。んで、中庭はオレの寝るための場所として確保してる。今日も寝てたんだけど、その邪魔をされたわけ。」
「は、はぁ…邪魔をして申し訳ありません…。」
「ん、だからオレを起こした責任取ってくれるよね?」
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「……はい。なにすれば?」
「んー、このあと寝るから一緒来てよ」
「えっと、俺なんかいても邪魔なだけですよね?それより水をぶち撒けた廊下掃除しに行っても?」
「邪魔じゃないから。まぁ、いいや。絶対連れてくし。じゃあ掃除しにいこっか」
はい、と返事をする俺を引っ張るように、いや、連行する様に腕をガッチリ確保される。逃げたりしないのに。というか強制なんだ…。
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