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発熱
しおりを挟む最近は、季節が春に近づいて暖かくなってきていたので油断していた…。少し薄着で外に出たところ、思ったよりも風があったりして、寒く感じた。寒がってるってバレたら秋夜さんに帰宅させられかねない。
ところで今日何しに出てきたのかといえば、凰李さんが企画したバーベキューにお呼ばれしたのである。外だし、更に河原で行っているので風が凄い。それでも鳴海や秋夜さんたちと肉を焼いて食べるのは楽しくて帰りたくなかった。
だから頑張って秋夜さんにバレないように頑張った。さり気なくバーベキューの火で温まったりしながら、最後までバーベキューに参加した。
ここまでは、楽しくて良かったのだけど…帰りに秋夜さんに手を取られて、びっくりした顔をされた。と思ったら、すぐにタクシーに乗り込んでいた…。
「秋夜さん?」
「あとで」
「えぇ?どうかしましたか?」
「自分でわかってるでしょ?」
「あ…あぁ…ごめんなさい…。」
睨まれたので多分これは怒っていらっしゃる…。なんでこんなに怒っているのかわからないけど…というかいつバレた?手を取られたとき、だと思うけど。手冷たかったかな?
「歩ける?」
「はい、平気ですよ?」
平気だと思ったんだけど…タクシーを降りた一歩目から何故かふらついてしまっていた。もちろんそれをちゃんと目撃していた秋夜さんに抱き上げられる。お姫様だっこと言うやつだ。
うぅ…恥ずかしい…。
でも俺がふらついたの見て秋夜さんの顔が心配そうに歪んだのを見れば、何も文句など言えなかった。家に入って、抱き上げたまま器用に靴を脱がされ、ベッドまで一直線で運ばれた。ベッドに寝かされて、布団を首までしっかりかけられる。
「香夜、いつから?」
「え?なにがですか?」
「は?体調、悪いでしょ?」
「え?」
「なに?自覚無かったの?…ちょっと自分のことに無頓着すぎるね…。」
「えっと…俺…寒いなぁくらいしか…」
「寒かったんだ?」
「はい…」
「なんで言わなかったの?」
「だって…帰りたくなかったから…」
「はぁ…わかった…今はいいや。元気になったら覚悟しておけ。」
秋夜さんは俺の言葉に一瞬傷ついた表情をした。それをすぐに隠して、部屋を出ていってしまった。
うぅ…俺…最低だ…秋夜さんにあんな顔させて…。秋夜さんが優しいからってそれに甘えて…。今日だって…我儘で体調悪くなって迷惑かけてるし…。
すぐに戻ってきた秋夜さんの手にあったのは体温計だった。脇に差し込まれる。音がなって自分で取り出して画面に表示された体温に驚く。38.2℃…。そりゃ足もふらつくわけだ…。
「見せて」
「は、はい」
「38℃ね…香夜身体つらい?」
「ええっと…そんなに辛くないです。頭痛とかもないです」
「わかった。少し何か食べて薬飲もっか?」
「はい」
「食べられそう?」
「たぶん…」
「じゃあ買い物行ってくるから、寝てな。」
「はい…」
秋夜さんが出ていくことに寂しさを覚えたものの、引き止めることなんて出来ずにその背中を見送った。
しばらくは起きていたんだけど、気がつけば頭が痛くなってきて、身体もだるい…。寝転がってもう寝てしまおうと目を閉じるけれど、眠気は来ない。
「…秋夜さん…」
「ん、ただいま」
「あ…おかえりなさい…」
秋夜さんは俺の額に手を伸ばす。冷たい…。心地よい冷たさに目を細める。
「ん、あれ…さっきより体温上がった?」
「わかりません…でも…頭痛いし…身体もだるくて…」
「そっか…じゃあゼリーとかにしとく?」
「はい」
秋夜さんに食べさせてもらって、なんとかゼリー、一つを完食する。薬も飲ませてもらって、またベッドに横になる。
「寝れるなら寝ちゃいな。」
「しゅ…やさん…側いてほし…」
「ん、ここにいるから。おやすみ」
「ん…」
_______________
香夜が頼むから仕方なく、バーベキューに参加した。香夜は俺の側にいればいいのに、クソ情報屋のところに行ったりしていた。それと、調理に駆り出された。まぁGRACEのメンバーで料理できるやつなんかほとんど居ねぇから仕方ねぇけど。
それでも香夜の料理他のやつが食べるなんてムカつく。そんな理由で終始苛ついていたのもあって香夜の様子がおかしい事に最後まで気が付かなかった。
帰り際手を取ってやっとわかった。香夜の手は普段よりもずっと熱を持っていて、顔を見れば赤くなっていた。おそらく熱があると判断してさっさとタクシーに乗り込む。
タクシーから降りようとする香夜の身体がふらつく。クソ!こんなになるまで気づいてやれなかったなんて最悪だ。香夜も何も言わなかったからわからなかった。
香夜が話すところによれば、ずっと寒かったらしい。それなら俺の上着貸してあげたのに…。俺が帰ると言い出すのが嫌で言えなかったらしい。はぁ…。
38℃か。まぁまぁの熱だな。とりあえず、買い物行かないと何もないし。行って帰ってくる間に落ち着かねぇと。香夜に苛立ちぶつけたい訳じゃねぇし。
帰ってくると香夜は、更に体調悪化させてた。薬飲ませて寝かせたけど…側にいてって可愛かったな。
そういえば香夜の弱ったところって見たことなかったかもな。甘えられるのもいいかもな。でも香夜がキツそうなのは駄目だな。香夜の辛そうな顔は見たくねぇ。
「香夜…ゆっくり休んで早く良くなれよ」
頭をなでて、添い寝するように俺も布団に入る。キスしたら風邪移るか?ま、移ったら移ったでいいか。
チュッ
_______________
目が覚めると薬がきいたのか…それとも秋夜さんのおかげか…とにかく俺は元気になっていた。
隣には秋夜さんが寝ていた。あぁ…普段から一緒に寝てるけど、今回は側にいてっておねだりしたんだよな…。ちょっと恥ずかしい…。
「秋夜さん…ありがと…大好きです」
「ふっ…俺も好きだよ」
「うわぁ!!秋夜さん起きてたんですか?」
「まぁ」
「俺もう元気になりました!」
「よかった」
「はい!ご飯作ってきますね!」
「ん、それよりも離れないで香夜」
「ええっ!!秋夜…さん?」
「俺体調悪いかも…」
「ええ!!大変!!おでこ触りますよ?」
熱い…俺のが移ったのか…。看病しないと!!熱があったらしい秋夜さんは甘えただった。いつもかっこいいから、ドキドキしたぁ…たまには悪くない…かも。
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