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あの頃は不倫するなんて思いもしませんでした
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「あれ、同じサークルだよね。最近見かけていないけど、どうしたの?」
声につられて、冬枯れの景色から向かいの席に座る政志に、沙羅は視線を移す。
大学4年の政志は、内定をもらい卒業を待つばかり、今日はサークルに顔を出しにきたのだ。
その前にコーヒーでも飲もうかとカフェに立ち寄り沙羅を見つけ声を掛けた。
「サークルは、辞めました。挨拶もしないですみません」
「熱心に活動していたから、ちょっと意外。何か事情でもあるの?」
政志に「両親に不幸があって辛い」などと胸の内を明かせるほど、親しい関係ではない。
でも、政志の態度は、からかいやナンパなどではなく、とても真摯だ。
「あの、家庭の事情でバイトを探さないと生活が苦しくなりそうで……」
当たり障りのない理由を口にした。
きっと、「大変だね」とか「頑張ってね」で会話が終わると思ったから。
それなのに、政志の返事は予想していたものと違った。
「そうか、何か力になれればいいけど……。あっ、カテキョのバイトは? 今俺が受け持っている子で、中1と中2の生徒が居るんだけど、就職だから後任探そうと思っていたんだ。良かったら紹介するよ」
そう言って、政志はバイト内容の詳細を説明し始めた。
普通に販売や接客のバイトをするより時給は高く、なにより好条件。
「こんなに良いバイトを譲ってもらっていいんですか?」
「もちろん。サークルでも熱心に活動しての見ていたからね。岩崎さんなら安心して任せられるよ」
こうして、ふたりの距離は近くなっていった。
政志は大学を卒業した後もこまめにメールや電話をくれた。
最初は家庭教師のバイトの引継ぎで、教え方などの相談に乗ってもらううちに、少しづつプライベートな話しをするようになる。
暫くして、沙羅が両親を亡くした事も打ち明けた頃から、政志は休日に食事や映画に誘い出すようになった。
戸惑いつつも、両親を亡くし心許なくなった沙羅にとって、頼れる兄のような存在になった政志と出かけるのは、だんだんと楽しみになっていく。
「ねえ、お母さん。それで、なんでお父さんと結婚しようと思ったの?」
美幸の声に、沙羅は過去の回想から引き戻される。
好奇心で目を輝かさせた美幸は、パフェのイチゴをスプーンですくいモグモグと口を動かしながら、沙羅の回答を待ちわびていた。
その様子を見た沙羅は、あきらめたように語り出した。
「お母さんが、風邪をひいて動けなくなったことがあったの。その時にね、お父さんが、駆け付けてくれて看病してくれたの」
「うん、うん、それで?」
「熱が上がって、意識が朦朧として、お母さん一人暮らしだったから、誰も頼れないでしょう。正直言って、このまま死んじゃうのかなって思っていた所にお父さんが、薬や飲み物をもって来て、一晩中看病してくれたの。この人となら穏やかに暮らして行けるのかなって思ったから」
そう、燃えるような恋ではなかった。けれど、両親を亡くして辛い時期にいつも横に居て支えてくれて、家族になろうと言ったのは政志だった。
声につられて、冬枯れの景色から向かいの席に座る政志に、沙羅は視線を移す。
大学4年の政志は、内定をもらい卒業を待つばかり、今日はサークルに顔を出しにきたのだ。
その前にコーヒーでも飲もうかとカフェに立ち寄り沙羅を見つけ声を掛けた。
「サークルは、辞めました。挨拶もしないですみません」
「熱心に活動していたから、ちょっと意外。何か事情でもあるの?」
政志に「両親に不幸があって辛い」などと胸の内を明かせるほど、親しい関係ではない。
でも、政志の態度は、からかいやナンパなどではなく、とても真摯だ。
「あの、家庭の事情でバイトを探さないと生活が苦しくなりそうで……」
当たり障りのない理由を口にした。
きっと、「大変だね」とか「頑張ってね」で会話が終わると思ったから。
それなのに、政志の返事は予想していたものと違った。
「そうか、何か力になれればいいけど……。あっ、カテキョのバイトは? 今俺が受け持っている子で、中1と中2の生徒が居るんだけど、就職だから後任探そうと思っていたんだ。良かったら紹介するよ」
そう言って、政志はバイト内容の詳細を説明し始めた。
普通に販売や接客のバイトをするより時給は高く、なにより好条件。
「こんなに良いバイトを譲ってもらっていいんですか?」
「もちろん。サークルでも熱心に活動しての見ていたからね。岩崎さんなら安心して任せられるよ」
こうして、ふたりの距離は近くなっていった。
政志は大学を卒業した後もこまめにメールや電話をくれた。
最初は家庭教師のバイトの引継ぎで、教え方などの相談に乗ってもらううちに、少しづつプライベートな話しをするようになる。
暫くして、沙羅が両親を亡くした事も打ち明けた頃から、政志は休日に食事や映画に誘い出すようになった。
戸惑いつつも、両親を亡くし心許なくなった沙羅にとって、頼れる兄のような存在になった政志と出かけるのは、だんだんと楽しみになっていく。
「ねえ、お母さん。それで、なんでお父さんと結婚しようと思ったの?」
美幸の声に、沙羅は過去の回想から引き戻される。
好奇心で目を輝かさせた美幸は、パフェのイチゴをスプーンですくいモグモグと口を動かしながら、沙羅の回答を待ちわびていた。
その様子を見た沙羅は、あきらめたように語り出した。
「お母さんが、風邪をひいて動けなくなったことがあったの。その時にね、お父さんが、駆け付けてくれて看病してくれたの」
「うん、うん、それで?」
「熱が上がって、意識が朦朧として、お母さん一人暮らしだったから、誰も頼れないでしょう。正直言って、このまま死んじゃうのかなって思っていた所にお父さんが、薬や飲み物をもって来て、一晩中看病してくれたの。この人となら穏やかに暮らして行けるのかなって思ったから」
そう、燃えるような恋ではなかった。けれど、両親を亡くして辛い時期にいつも横に居て支えてくれて、家族になろうと言ったのは政志だった。
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