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第3の異世界ー死にたい魔王
第24話 勇者と魔王の世界
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――トレーニングを始めてから1週間と6日が経つ。
今日のトレーニングメニューを終えた俺は、シャワーを浴びて汗を流したのち、鏡の前に立った。
「なかなか鍛え上がったな」
パンツを穿いて全身を眺める。
鍛え始める前よりだいぶ全身の筋肉がついた。まるで最前線に立って戦う屈強な兵士のような身体だ。
「安寧に暮らす王子の身体ではないな。うん。悪くない」
トレーニングも明日で最後か。
ツクナが満足する身体になれただろうか、ちょっと不安であった。
タオルで髪を拭きながら脱衣所を出る。と、そのとき、
「ん?」
トレーニングルームの扉が開く。
「準備が少し早く終わったから様子を見に来たのじゃ。サボらずにちゃんと鍛えて……」
「おお、ツクナ」
側へ行ってツクナの頭をポンと撫でる。
「どうだ? だいぶ鍛え上がったと思うけど」
「……」
しかしツクナはなにも答えず、口を半開きにして俺を見上げていた。
「うん? どうした? まだ鍛え方が足りないか?」
「あ……いやその、うむ。まだまだじゃ。もっと鍛えねばツクナの理想にはなれんぞ」
「はははっ、そうだな。まあ、あと1日ある。もう少しなんとかしてみるよ」
「いや、もうよい。あと1日はじっくり身体を休めるのじゃ」
「そうか? うん。ツクナがそう言うならそうしよう」
「うむ。しかしよくがんばったの。褒美に今夜はツクナが一緒に寝てやろう」
「う、うん」
服を着た俺はツクナを持ち上げて胸に抱く。
と、小さな身体がヒシと俺の身体にしがみついた。
「んふふ……もっと鍛えてでかくなるんじゃぞ」
「ああ」
別に身体を鍛え上げることに興味があるわけでもないが、ツクナがそれを望むならばそうしようと思った。
……
次の日、俺とツクナは目的地に向かうためデュロリアンへ乗り込んだ。
『間も無く到着します』
デュロリアンから流れる音声を聞きながら、俺は助手席のツクナへと目をやる。
「次の異世界ではなにをするんだ?」」
「うむ」
ツクナはパソコンのキーボードを指でポンポンと叩く。
「ある女に死んでもらう」
「死んでもらう? そいつが死ぬことで得をする人間がいるということか?」
「うむ。死ぬこの女自身が得をするのじゃ」
「よくわからないな」
自分が死んで自分が得をする? どういうことだろう?
「この女は、ある状況下で死にたいと願っている。しかしそれが満たされず、結局は自らの手で死に至るという悲しい結末を迎えてしまうのじゃ」
「じゃあ俺たちでその女が望んでいる状況を作って殺してやればいいのか?」
「まあそういうことじゃ」
「ううん……」
敵でも無し、恨みがあるわけでも無い人間を殺すのは心苦しい。
「その女はなぜ死にたいんだ?」
「さあの。それは会って聞いてみなければわからん」
「そうか」
良い人だったら、やっぱり殺すのは難しいと思う。
「ハバンは勇者や魔王という存在は知っているかの?」
「勇者は勇敢な戦士のことだろ。魔王っていうのは知らないな。それがどうしたんだ?」
「ふむ。一般的に魔王とは、人間を滅ぼそうとする魔の者の王じゃな。勇者とはそれを倒すための存在じゃ」
「なるほど。その勇者が善で、魔王が悪ということか」
「少なくとも人間にとっては、その考えで正しいじゃろう」
「うん。けど、その勇者と魔王がどうしたんだ?」
「これから行く世界にはその2人がおる。死ぬことで幸せ人生になるのがこの魔王じゃ」
「ふーん」
悪人を殺すなら、気持ち的には楽かな。
手動運転へ切り替わると同時に現れたハンドルを握る。と、
「お」
異空間道路を抜け、どこか暗い場所へと出た。
「夜みたいだな」
空に星が見えることから、建物の中でないことはわかる。
「うむ。とりあえずデュロリアンを止めて周囲を確認するかの」
「ああ」
ヘッドライトをつけてブレーキを踏もうとした。そのとき、
ドンッ!
「うわっ!?」
突然、目の前に現れた黒い物体をはね飛ばしてしまう。
「な、なんだ?」
「なにかはねたようじゃな」
冷静な声音でツクナは言う。
「ど、どうしよう?」
「安心せい。なにかはねてもこのデュロリアンに傷などつかん」
「いや、そういう問題じゃ……」
「ん? ああ、この世界には道交法など無いから免許の取り消しとかは心配せんでよい」
「そういう問題でも……」
「周囲はなにもない草原じゃ。目撃者などおらんから大丈夫じゃろ」
「……」
はねた相手の安否……などはまったく考えていないようだ。
「ちょっと見て来るよ」
パソコンを操作をするツクナを助手席に残し、俺は外へ出て車ではねたなにかへ近づく。
周囲はなにもない草原だ。人の姿や気配などはまったくない。
「動物でもはねたかな?」
その可能性が高そうだ。
「うん?」
デュロリアンの先になにか転がっている。
黒い布を纏った……人間だろうか?
「へ、平気か?」
「……」
反応は無い。
言葉や文字が理解できるようになる薬は飲んだから、言っていることはわかるはずだが。
「死んでる?」
そう思ったとき、
ガバッ!
「うおっ!?」
突然、それは起き上がってこちらを向く。そして、
「我が名はリュアン・エグダークっ! 魔王であるこの私に不意打ちを食らわすとは良い度胸ではないかぁ! ふぅはははははっ!」
黒い布を勢いよく脱いで元気に名乗りだす。
今日のトレーニングメニューを終えた俺は、シャワーを浴びて汗を流したのち、鏡の前に立った。
「なかなか鍛え上がったな」
パンツを穿いて全身を眺める。
鍛え始める前よりだいぶ全身の筋肉がついた。まるで最前線に立って戦う屈強な兵士のような身体だ。
「安寧に暮らす王子の身体ではないな。うん。悪くない」
トレーニングも明日で最後か。
ツクナが満足する身体になれただろうか、ちょっと不安であった。
タオルで髪を拭きながら脱衣所を出る。と、そのとき、
「ん?」
トレーニングルームの扉が開く。
「準備が少し早く終わったから様子を見に来たのじゃ。サボらずにちゃんと鍛えて……」
「おお、ツクナ」
側へ行ってツクナの頭をポンと撫でる。
「どうだ? だいぶ鍛え上がったと思うけど」
「……」
しかしツクナはなにも答えず、口を半開きにして俺を見上げていた。
「うん? どうした? まだ鍛え方が足りないか?」
「あ……いやその、うむ。まだまだじゃ。もっと鍛えねばツクナの理想にはなれんぞ」
「はははっ、そうだな。まあ、あと1日ある。もう少しなんとかしてみるよ」
「いや、もうよい。あと1日はじっくり身体を休めるのじゃ」
「そうか? うん。ツクナがそう言うならそうしよう」
「うむ。しかしよくがんばったの。褒美に今夜はツクナが一緒に寝てやろう」
「う、うん」
服を着た俺はツクナを持ち上げて胸に抱く。
と、小さな身体がヒシと俺の身体にしがみついた。
「んふふ……もっと鍛えてでかくなるんじゃぞ」
「ああ」
別に身体を鍛え上げることに興味があるわけでもないが、ツクナがそれを望むならばそうしようと思った。
……
次の日、俺とツクナは目的地に向かうためデュロリアンへ乗り込んだ。
『間も無く到着します』
デュロリアンから流れる音声を聞きながら、俺は助手席のツクナへと目をやる。
「次の異世界ではなにをするんだ?」」
「うむ」
ツクナはパソコンのキーボードを指でポンポンと叩く。
「ある女に死んでもらう」
「死んでもらう? そいつが死ぬことで得をする人間がいるということか?」
「うむ。死ぬこの女自身が得をするのじゃ」
「よくわからないな」
自分が死んで自分が得をする? どういうことだろう?
「この女は、ある状況下で死にたいと願っている。しかしそれが満たされず、結局は自らの手で死に至るという悲しい結末を迎えてしまうのじゃ」
「じゃあ俺たちでその女が望んでいる状況を作って殺してやればいいのか?」
「まあそういうことじゃ」
「ううん……」
敵でも無し、恨みがあるわけでも無い人間を殺すのは心苦しい。
「その女はなぜ死にたいんだ?」
「さあの。それは会って聞いてみなければわからん」
「そうか」
良い人だったら、やっぱり殺すのは難しいと思う。
「ハバンは勇者や魔王という存在は知っているかの?」
「勇者は勇敢な戦士のことだろ。魔王っていうのは知らないな。それがどうしたんだ?」
「ふむ。一般的に魔王とは、人間を滅ぼそうとする魔の者の王じゃな。勇者とはそれを倒すための存在じゃ」
「なるほど。その勇者が善で、魔王が悪ということか」
「少なくとも人間にとっては、その考えで正しいじゃろう」
「うん。けど、その勇者と魔王がどうしたんだ?」
「これから行く世界にはその2人がおる。死ぬことで幸せ人生になるのがこの魔王じゃ」
「ふーん」
悪人を殺すなら、気持ち的には楽かな。
手動運転へ切り替わると同時に現れたハンドルを握る。と、
「お」
異空間道路を抜け、どこか暗い場所へと出た。
「夜みたいだな」
空に星が見えることから、建物の中でないことはわかる。
「うむ。とりあえずデュロリアンを止めて周囲を確認するかの」
「ああ」
ヘッドライトをつけてブレーキを踏もうとした。そのとき、
ドンッ!
「うわっ!?」
突然、目の前に現れた黒い物体をはね飛ばしてしまう。
「な、なんだ?」
「なにかはねたようじゃな」
冷静な声音でツクナは言う。
「ど、どうしよう?」
「安心せい。なにかはねてもこのデュロリアンに傷などつかん」
「いや、そういう問題じゃ……」
「ん? ああ、この世界には道交法など無いから免許の取り消しとかは心配せんでよい」
「そういう問題でも……」
「周囲はなにもない草原じゃ。目撃者などおらんから大丈夫じゃろ」
「……」
はねた相手の安否……などはまったく考えていないようだ。
「ちょっと見て来るよ」
パソコンを操作をするツクナを助手席に残し、俺は外へ出て車ではねたなにかへ近づく。
周囲はなにもない草原だ。人の姿や気配などはまったくない。
「動物でもはねたかな?」
その可能性が高そうだ。
「うん?」
デュロリアンの先になにか転がっている。
黒い布を纏った……人間だろうか?
「へ、平気か?」
「……」
反応は無い。
言葉や文字が理解できるようになる薬は飲んだから、言っていることはわかるはずだが。
「死んでる?」
そう思ったとき、
ガバッ!
「うおっ!?」
突然、それは起き上がってこちらを向く。そして、
「我が名はリュアン・エグダークっ! 魔王であるこの私に不意打ちを食らわすとは良い度胸ではないかぁ! ふぅはははははっ!」
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