誰からも愛される聖獣に転生したのに、推しにだけ嫌われています

羽里うめこ

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成長

 めちゃくちゃに、イきまくってしまった。

 数日前の己の痴態を思い起こすたび、リトは羞恥でどうにかなりそうだった。

(恥ずかしい……)

 いくら疼いていたとはいえ、ヴォルフの指であんなに乱れてしまうとは。しかも、脱衣場にはノアとレヴィが控えていたのだ。信頼する侍従と清廉な護衛騎士に、一部始終を聞かれていたのである。

(おれ、ぜったい変なこと口走ってた。ドライでイキすぎて最後のほうよくわかんなくなってたし)

 とはいえ、もっと、と何度もねだったことも、きもちいい、と叫んだことも覚えている。

(ヴォルフは、フェルの魂が成長しているからだって言ってたけど……)

 聖獣としてのリトの種族であるフェルの中でも、母胎となるマテリスの素養があるものは特に中で感じやすくなるらしい。

 ――淫奔であることはおまえの正しい姿だ。恥ずべきことではない。

 湯あたりしてしまったリトに治癒魔法をかけてくれたあと、ヴォルフは真面目な顔をしてそう言った。以前にもそのようなフォローをしてくれたことがあったが、だからといって「よかった~!」とはならない。

 ヴォルフから話が伝わったのか、週明けに邸へやってきたダレンにも「子宮ができたとお聞きしました。おめでとうございます」とにこやかに祝われてしまった。聖獣の魂が正しく成長しているということだから、魔界にとっては確かにめでたいことなのかもしれない。

「リト、子宮ができたんだって?」

 おおよそ一週間ぶりに邸を訪ねてきたハロルドは、リトの肩を抱いて客間に入るなりそう言った。

「なっ、なんで知ってるんですか?!」
「兄上たちから聞いた」

 ダレンが知っているということは、当然王宮にも報告されたのだ。彼はリトの教育係でありつつ後見人のような立ち位置でもあるから、その成長を記録し報告する義務がある。

「おめでとう。皆よろこんでいたぞ」
「……ありがとう、ございます……?」

 なんとなく気恥ずかしくて、疑問形になってしまった。

「発情期が来るのがいまから待ち遠しいな」

 リトを抱き寄せたままソファに腰を下ろしたハロルドが、そんなことを言いながらこめかみにキスをしてきた。
 ――発情期。いずれはリトの身にも訪れるだろうとヴォルフも言っていた。

(ぜんぜん実感ない。発情期がどんなかんじなのかもわかんないし)

 ヴォルフにも、年に二回発情期があるとこのあいだ教わった。通常は二、三週間ほどでおさまるが、そのあいだは魔界のマナを調整することができないので、魔族たちにとっては他人事ではないらしい。発情期のヴォルフの相手を務めるために、国中から選りすぐりの娼妓たちが何十人と聖殿へ送り込まれてくると聞いた。

(死活問題だもんなあ……)

 ちなみに第五王子と第七王子の母であるエレイン王妃は元高級娼夫で、いまでも発情期のたびに聖殿に招ばれるヴォルフのお気に入りだ。後宮入りした当時は、聖獣の情人を国王が寝取ったとかで話題になったのだと、いつぞやのサロンで本人が笑いながら教えてくれた。そういうことをあっけらかんと笑い飛ばしてしまえるひとなのだ。切れ長の双眸がうつくしいものすごい美人なのだが、言動がヤンキーっぽいのでリトはすこし苦手である。

「リトは、三代前の聖獣と同じ種族なんだろう? その激しい発情を鎮めるために、送り込まれた娼夫だけでは足りずに王宮中の魔族が駆り出されたっていう伝承の」
「な、なんですかその伝承……?!」
「まあ、二千年近くまえの話だから、伝わるうちにいろいろ盛られているとは思うが」

 ハロルドは笑いながら言って、その逞しい腕でリトの腰を抱いた。

「発情期が来るときまでには、君を抱けるようになっていることを願うよ」
「う……」

 ストレートにそういうことを言われると、反応に困ってしまう。

(でも、それまでに『はじめてのえっち』できてないとほんとにまずい気がする……)

 発情してわけのわからない状態で大切にしてきた純潔を失うなんて嫌すぎるし、いつもフェリックスから護ってくれているレヴィに申し訳なさすぎる。
 
(ちゃんと、見つけなきゃ……おれのはじめてを、捧げられるひと……)

「ところでリト。子宮ができたってことは、濡れるようになったんだろう?」
「えっ、」

 びくっとして見上げた先で、ハロルドはにこりとほほ笑んでいた。完璧な王子様スマイルだ。

「俺にも、君の成長を確かめさせてくれ」



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