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第08話 勝利の微笑み【愛人視点】
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――やっと、終わった。
この瞬間を、どれほど夢見てきたことか。
「フフっ……んっフフフ、あははっ……」
私は、王宮の回廊をゆっくりと歩きながら、笑っていた。
金色の光が射す大理石の廊下。ステンドグラスに映る私の姿は、【侍女】ではなく、王太子殿下の【寵姫】としてのそれだ。
抑えようとしても、笑いが込み上げてくる。
あのセレスティア・アルセインが、完璧な侯爵令嬢が、未来の王妃が――国外追放として扱われるなんて、笑いがこみ上げてくるしかない。
あれほど気高く、偉そうに振る舞っていた女が、まるで罪人のように王宮を去るなんて。
(ざまあみなさいよ、セレスティア様)
胸の奥から込み上げるこの感情を、私はずっと抑えてきた。
侍女として頭を下げ、微笑み、従順に振る舞いながら――その裏でどれほど歯を食いしばってきたと思っているの?
貴女は、いつだって完璧だった。
立ち居振る舞いも、言葉選びも、政務の手腕も。
誰にも媚びず、誰にも寄りかからず、正しさだけを身にまとって、まるで自分は他の女とは違う、と言わんばかりに。
どれだけ私たち侍女を見下していた?
表向きは優しく微笑み、民の声に耳を傾ける理想の令嬢。
でも、その瞳の奥にはいつも冷たい線があった――対等だなんて、一度も思っていなかったでしょう?
「私は正しい」「私は選ばれた存在」
その自信が、どれほど周囲の女たちを苛立たせ、傷つけてきたか、貴女は気づきもしなかった。
ええ、そうよ。
貴女は正しすぎた。
そして美しすぎた。完璧すぎた。
だからこそ、誰もが貴女を疎ましく思った。
誰もが、心のどこかで――貴女が堕ちる瞬間を待っていた。もちろん、私も。
「お優しいセレスティア様ぁ……あの民たち、今じゃ貴女を売国奴って呼んでるわよ?」
誰に聞かせるでもなく、私は囁いた。
言葉にした瞬間、喉の奥が甘く痺れる。
ああ、なんて気分がいいの。
滑稽だ。
とても滑稽だわ。
あれほど努力して、あれほど気高くあろうとして、「民のため」「国のため」なんて綺麗事を並べて――最後は、ただの【罪人】だ。
結局、誰一人、貴女を守らなかった。
王太子殿下でさえ。
レオンハルト殿下が、冷たく言い放ったあの言葉――貴女は、もはやこの王国に不要だ、と。あれこそ、私がずっと、ずっと聞きたかった一言だった。
殿下が私を選んだ時は世界がひっくり返った気がした。
胸が熱くなって、足が震えて、それでも――確信した。
――この私が、侯爵令嬢を超えたのだと。
地位も、家柄も、育ちもない私が、正しさだけで玉座に近づこうとした貴女を蹴落とし、愛される女として選ばれたのだ。
(……見た? セレスティア様?それが、貴女の敗北よ……やっと、見下される側から抜け出せたのよ)
忘れる事のない。
あの瞳は絶対に。
「貴女の誇りって、結局何だったの? 誰も守ってくれなかったじゃない。あんなに国のために尽くしてきたのに、王太子様一人、信じてすらもらえなかった」
あなたは、強いふりをしていただけ。
自分の正しさにすがって、他人を斬ってきた。
冷たく、傲慢で、気取った女。そんな貴女が、地べたに膝をついて泣く姿――見たかったな。
結局、泣く事はなかったけど。
でももう、それすら見られない。
貴女は、王宮から消える。歴史からも消える。
私は、貴女の【後】に座るのよ。
(……勝ったのよ、私が)
そう確信して、私はそっとドレスの裾を直した。
鏡に映る私の姿は、どこからどう見ても王子の愛された女だ。
「さようなら、セレスティア様――王妃の椅子は、貴女には重すぎたのよ」
この瞬間を、どれほど夢見てきたことか。
「フフっ……んっフフフ、あははっ……」
私は、王宮の回廊をゆっくりと歩きながら、笑っていた。
金色の光が射す大理石の廊下。ステンドグラスに映る私の姿は、【侍女】ではなく、王太子殿下の【寵姫】としてのそれだ。
抑えようとしても、笑いが込み上げてくる。
あのセレスティア・アルセインが、完璧な侯爵令嬢が、未来の王妃が――国外追放として扱われるなんて、笑いがこみ上げてくるしかない。
あれほど気高く、偉そうに振る舞っていた女が、まるで罪人のように王宮を去るなんて。
(ざまあみなさいよ、セレスティア様)
胸の奥から込み上げるこの感情を、私はずっと抑えてきた。
侍女として頭を下げ、微笑み、従順に振る舞いながら――その裏でどれほど歯を食いしばってきたと思っているの?
貴女は、いつだって完璧だった。
立ち居振る舞いも、言葉選びも、政務の手腕も。
誰にも媚びず、誰にも寄りかからず、正しさだけを身にまとって、まるで自分は他の女とは違う、と言わんばかりに。
どれだけ私たち侍女を見下していた?
表向きは優しく微笑み、民の声に耳を傾ける理想の令嬢。
でも、その瞳の奥にはいつも冷たい線があった――対等だなんて、一度も思っていなかったでしょう?
「私は正しい」「私は選ばれた存在」
その自信が、どれほど周囲の女たちを苛立たせ、傷つけてきたか、貴女は気づきもしなかった。
ええ、そうよ。
貴女は正しすぎた。
そして美しすぎた。完璧すぎた。
だからこそ、誰もが貴女を疎ましく思った。
誰もが、心のどこかで――貴女が堕ちる瞬間を待っていた。もちろん、私も。
「お優しいセレスティア様ぁ……あの民たち、今じゃ貴女を売国奴って呼んでるわよ?」
誰に聞かせるでもなく、私は囁いた。
言葉にした瞬間、喉の奥が甘く痺れる。
ああ、なんて気分がいいの。
滑稽だ。
とても滑稽だわ。
あれほど努力して、あれほど気高くあろうとして、「民のため」「国のため」なんて綺麗事を並べて――最後は、ただの【罪人】だ。
結局、誰一人、貴女を守らなかった。
王太子殿下でさえ。
レオンハルト殿下が、冷たく言い放ったあの言葉――貴女は、もはやこの王国に不要だ、と。あれこそ、私がずっと、ずっと聞きたかった一言だった。
殿下が私を選んだ時は世界がひっくり返った気がした。
胸が熱くなって、足が震えて、それでも――確信した。
――この私が、侯爵令嬢を超えたのだと。
地位も、家柄も、育ちもない私が、正しさだけで玉座に近づこうとした貴女を蹴落とし、愛される女として選ばれたのだ。
(……見た? セレスティア様?それが、貴女の敗北よ……やっと、見下される側から抜け出せたのよ)
忘れる事のない。
あの瞳は絶対に。
「貴女の誇りって、結局何だったの? 誰も守ってくれなかったじゃない。あんなに国のために尽くしてきたのに、王太子様一人、信じてすらもらえなかった」
あなたは、強いふりをしていただけ。
自分の正しさにすがって、他人を斬ってきた。
冷たく、傲慢で、気取った女。そんな貴女が、地べたに膝をついて泣く姿――見たかったな。
結局、泣く事はなかったけど。
でももう、それすら見られない。
貴女は、王宮から消える。歴史からも消える。
私は、貴女の【後】に座るのよ。
(……勝ったのよ、私が)
そう確信して、私はそっとドレスの裾を直した。
鏡に映る私の姿は、どこからどう見ても王子の愛された女だ。
「さようなら、セレスティア様――王妃の椅子は、貴女には重すぎたのよ」
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