追放された無能召喚士、最弱スライムの中に双子の魔王がいました

桜塚あお華

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第4章 錬金都市アラストと知り合いだと思いたくない知り合い

第36話 暴かれた真実

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 夜のアラストは、昼間の華やかさとは打って変わって静まり返っていた。
 だが、その静寂の裏で、ある真実が暴かれようとしていた。

「……解析完了。証拠の精製、完了しました」

 ルージュが低く告げたその言葉に、ガルドは小さく頷いた。
 ルージュの掌に浮かぶのは、魔力を可視化した特殊な結晶。
 淡い青の光を放つそれは、ノランの研究所で検出された『禁術契約の魔力痕跡』を封じ込めた『証拠』そのものだった。

「これを……」
「ギルド……は、信用していいのかわからないので。何処か第三者の中立機関であればノランと街の関係性を問わず、正式な調査が入るはずです」
「そうだね……伝手があるにはあるから、そこに言ってみようかな」
「伝手、ですか?」
「信用できる人だから大丈夫だよ、多分」

 ガルドはそのように言いながら、静かに笑った。
 ルージュは既に通報書を準備している。
 それをガルドが受け取り、鞄にしまう。

「さすがルージュ……抜かりないな」
「当然です。我らの主が不当に貶められる理由などどこにもありませんから」

 その言葉には静かな怒りと、揺るぎない忠誠がにじんでいた。

 そして――翌朝、アラストはざわつきに包まれた。

 隣町の教会からからの公式要請により、都市警備隊と監査官が『ノラン錬金研究所』を急襲したのだ。
 頑丈に封じられた研究所の門が破られ、次々と中へと踏み込む調査員たち。
 その手には、禁術取締りに関する明確な許可証と拘束命令が握られていた。

「っ、待て! 誤解だ!私がそんなことをするはずが――!」

 ノランの声が怒号混じりに響くが、それを取り囲む監査官たちの手は止まらない。

「第七区画、黒霊銀の使用記録確認!……これは明らかに規制対象です!」
「闇属性魔力の加工痕を確認!しかも……これは精霊を素材にした痕跡か……!?」
「裏帳簿、発見しました!」
「……こ、これは……っ」

 都市幹部の一人が、顔を青くしてその帳簿をめくった瞬間、背筋に冷たいものが走った。
 そこに記されたのは、金の流れ、裏契約、違法な素材取引――全てが、『錬金都市アラスト』の威信を揺るがすほどの、黒すぎる実態だった。

「ノラン、お前……これは一体……!」
「……違う、違うんだ! 私を陥れようとしている者がいる! これは罠だ!」
「証拠は、揃っています」

 静かに響いたのは――ルージュの声。
 調査員の一人が振り返り、警備隊の隊長も眉をひそめる。

「君は……?」
「ただの旅人です。ですが、ある『善意の通報者』から、証拠としてこの魔力結晶を託されました」

 ルージュが手渡した結晶が、調査員の手に渡る。
 瞬間、魔力がほのかに反応し魔術痕の記録が空中に再現された。

「……これは、間違いない。錬金術による禁術契約の魔力痕跡……そして術式の構造は……ノラン氏、あなた独自のものです」
「っ、そ、そんなはずが……!私はっ、嘗て勇者パーティーに属していた男だぞ!?この都市に、どれだけ貢献してきたと思っている!!」
「その『貢献』の裏で、何を積み上げてきたか……全て、記録に残っていますよ」

 幹部の一人が、重たく言葉を落とす。
 ノランの顔が、蒼白に染まっていく。
 その姿を、街角の路地裏から、ガルドは静かに見ていた。

「……これが、『自分の言葉』で勝手に切り捨てた代償だよ、ノラン」

 ルーナとルージュが、左右に立つ。
 ルーナは珍しく、笑っていなかった。

「これで……ご主人様を無能呼ばわりしたこと、後悔してくれたらいいのに」
「いえ、後悔すら届かないところまで堕ちた人間かと」

 ルージュが冷たく断じる。
 ガルドは目を伏せ、肩の力を抜いた。

 ――仕返しをしたいわけじゃなかった。

 ただ、自分が信じて進んできた道が、間違っていなかったことを証明したかった。
 その思いが、いま確かに果たされたのだ。

「行こう。ここにもう用はないな」
「はい、主様」
「うんっ!ごはん、食べにいこ!」

 ルーナの声が、いつもの明るさを取り戻す。

 空は、よく晴れていた。
 そして、そんな監察員の中に一人、静かに笑いながら三人の後姿を眺めている一人の女性がいると言う事に、気づかないまま。

「フフ……相変わらずね、ガっちゃんは」
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