追放された無能召喚士、最弱スライムの中に双子の魔王がいました

桜塚あお華

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第4章 錬金都市アラストと知り合いだと思いたくない知り合い

第38話 幼馴染のイディア

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 ノランが処罰されたのは、それから数日後のことだった。

 錬金協会が正式に調査結果を発表し、ノランの錬金術師としての称号は剥奪。
 違法な素材の取引、禁術の実験記録、裏金の流通経路――次々と明らかになるその黒い帳簿の山は、もはや弁明の余地すら与えなかった。

 彼は街を出ることすら許されず、地下牢へと移送されることに。
 いずれ、裁判にかけられ、永き拘禁が言い渡されるだろう。

「……なんだか、あっけなかったな」

 広場の片隅で、ガルドがつぶやいた。
 多くを語る必要はなかった。ただ、正しいことをしただけだ。
 その背後から、カツン、と硬い音を立ててブーツの音が近づく。

「やっほー、ガっちゃん。元気してた?」
「……え?」

 振り向いた瞬間、ガルドは思わず数歩後ずさる。
 そこに立っていたのは深紅の神官服に身を包んだ長身の女性。
 金色の髪を高く結び琥珀色の瞳には見覚えのある、挑発的な光。

「イディナ……!?お前、ほんとに……あのイディナか?」
「うっわ、なにその反応! もっと感動してよ~!ほら、『ガっちゃん』って呼んであげてるんだから!」

 ぱしん、と肩を叩かれたガルドは呆然としながらも苦笑した。

「……懐かしいな。まさか、こんなところで再会するとは……」
「ふふっ、私もよ。勇者パーティーに入ったって噂を聞いたときはビックリしたけどさ……数ヶ月後に『無能扱いで追放された』って聞いて、もっと驚いたよ?」
「それは……まぁ、うん。いろいろあってな」
「ねぇガっちゃん。アレ、燃やしていい?」
「やめろ!? 頼むから、やめてくれ!!」

 口調は冗談めいていたが、その目は本気だった。
 イディナは現在、聖王国の聖教会において『大司教』の座に就く人物。
 癖のある性格に反して、実力も人望も高く精霊信仰と人道支援に尽力している稀有な存在だ。

 ――そして、今回の事件。

 ノランの違法行為を精霊協会に通報する際、ガルドが匿名で送った通報文書の送り先がこのイディナだった。

「まったく……隠しごとがヘタなんだから」
「……俺の字って、やっぱりバレるか」
「小さい頃から変わってないんだもん。はい『ガっちゃん評価一覧』作ったわよ。『気は利くけど不器用』『誰かのためには全力出すけど、自分のこととなると途端に黙る』ってやつ。うんうん、間違いない!」

「やめてくれ……」

 ガルドがげっそりとため息をつく横で、ルーナとルージュがイディナをじっと見つめていた。

「……神聖系の高位魔力、しかも強い契約結界の加護持ち。大司教かそれ以上ですね」
「へぇー、さすがお兄ちゃん。教会の人って初めて見ましたー」

 イディナはくるりと振り向き、二人を一瞥した。
 そして、にやりと笑う。

「ふーん……『魔王』だね、君たち」
「――っ!?」

 ルーナとルージュの目に一瞬だけ警戒の色が浮かんだ。

「大丈夫。驚いたけど、別に騒がないよ?ガっちゃんが一緒にいるんだもの。ってことはちゃんと『契約』してるってことでしょ?」

 イディナは、まるで天使のように微笑んだ。

「どっちも、すっごく綺麗な魔力してる……それに、ガっちゃんの魔力とよく合ってる」

 その言葉に、ルーナがほっと肩の力を抜く。

「ふふ、ご主人様の幼馴染なら、きっと大丈夫だと思ってました!」
「……ガルド様の人間関係において、例外的に信頼に足る者と判断」
「君たち、正直でかわいいね~!あー、なんかちょっと……私、寂しいんだけど?もうちょっとガっちゃんと遊びたい気分なんだけどなー?」
「勘弁してくれ。正直、今の俺は旅だけで手一杯だ」

 ガルドはそう言いながら、少しだけ微笑んだ。

「それに……この二人といる方が、俺は楽しいんだ。のんびり旅して、時々誰かを助けて……それで十分」
「……そっか。うん、らしいね。ガっちゃんらしい」

 イディナは小さく頷き、口元に笑みを浮かべた。

「ま、私は教会に帰るけど……また困ったら頼って。今度こそ本当に『神の裁き』ってモノををあの勇者様ご一行にぶつけてあげるから」
「だからそれはやめてくれってば……」

 そんなやり取りの後、イディナは聖教会の騎士団と共に街を離れていった。
 その背中を見送りながら、ルーナがぽそっと呟く。

「なんだか……ちょっと、ご主人様の過去が垣間見えた気がします」
「……ガルド様にも、信頼を寄せる相手がいたということです。貴重な情報です」
「お前たち、地味に観察してるよな……」

 それでも――悪くなかった。
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