【連載中】魔王様、婚約者は勇者の妹らしいですよ？

第1話「婚約者は、勇者の妹らしいです」

魔王城の玉座に座り、深いため息をついた。
魔王レグナス――それが俺の名前だ。だが実際のところ、俺は“魔王”という役割に特に興味がない。ただ穏やかに、静かに、平和に生きていきたい。それだけだ。

しかし、そんな俺に突然、長老たちがこんな話を持ちかけてきた。

「魔王様、そろそろご婚約を。」

「婚約？」
俺は玉座の肘掛けに腕を置き、冷たい目を向けた。

「いや、俺は戦いよりも平和を望む。そもそも婚約なんて必要ないだろう？」

長老の一人が咳払いをしながら言う。
「いえ、和平を築くためには象徴が必要です。それに……お相手はすでに決まっております。」

「なんだと？」
俺の眉がピクリと動く。どうせ勝手な取り決めだろう。

「それが……人間界の勇者エリオの妹、アリシア殿でございます。」

その言葉を聞いた瞬間、俺の頭がぐらりと揺れるほどの衝撃を受けた。

「……は？ 勇者の妹？」
俺は口元を歪め、立ち上がった。

「長老、冗談だろう。勇者の妹を婚約者にするだなんて、どうかしてる。」

「いえいえ、本気でございます。勇者エリオも認めてはおりませんが、妹君は大層魅力的で、和平の象徴として申し分ございません！」

「俺の婚約が、和平の象徴だと？」
どこか遠くを見つめながら、俺はその無茶苦茶な提案について考えた。勇者エリオは魔族にとって宿敵とも言える存在。その妹を連れてこられて、一体どうしろと言うのか？


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翌日――。

玉座の間の扉が大きく開かれた。そこには、長老に連れられた少女が立っていた。

「はじめまして！ 婚約者のアリシアです！」

彼女は輝くような笑顔を見せた。腰まで伸びる柔らかな金髪に、明るい碧眼。白いドレスがよく似合っているが、その無邪気な振る舞いは勇者とはまるで正反対だった。

「……君がアリシア？」
俺は険しい顔を崩さずに尋ねる。

「そうよ！ お兄ちゃん――勇者エリオね――は反対してたけど、私は全然気にしないわ！」

アリシアは楽しそうに魔王城を見渡す。

「すごいお城ね！ 暗いけど、なんだか落ち着く雰囲気！」

俺は頭を抱えたくなった。この無邪気さ、一体どう扱えばいい？

「……君、俺が“魔王”だって知ってるのか？」

「もちろん！ だからこそ、お兄ちゃんと仲良くしてほしいなって思うの！」

この子は、俺が勇者の宿敵だと理解しているのだろうか？いや、どうやらその自覚はあまりなさそうだ。

「ふむ……まあいいだろう。とりあえず、君の部屋を用意する。婚約という形だが、すぐに何かを期待されても困るからな。」

「はーい！ よろしくね、魔王様！」

その笑顔を見た瞬間、俺は悟った。
この婚約、平和どころか、俺にとっては新たな戦いの始まりになるだろうと。


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次回：勇者エリオ襲来！？魔王城で始まる大騒動！