俺の配信のコメント欄は出会いの場と化している

山田空

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1話

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「よし今日も配信がんばって始めますか」

画面の前で深呼吸をひとつ。

今日の視聴者数はいつも通り数人程度

まあこれでも多い方だ。

でも別に気にしてない。

俺は配信が楽しめればそれでいい。

配信では視聴者のお悩みを解決する系の配信をしている。

視聴者の相談は色々………だった。

そう色々のはずだったのになぜか恋愛相談に片寄ったんだ。

「さて今日の相談はなにをするよ?」

『あんさあマジで私の彼氏バリクソやろうなんですけど』

なるほど。恋のトラブル第一弾

「へえ」

最初は頷くだけでいい。

でも頷いているだけじゃダメだ。

「それでなにがあったの?」

お次は質問をして話を広げる。

これで配信の時間を長引かせる。

『私の彼氏がね私の本を勝手に売りやがったんよ』

「え?マジでくそじゃん?」

『だよねだよね』

そんで話を聞いていき視聴者の心の悩みを取り除く。

『なるほど!ありがとう、試してみるね!』

数分後、また別のコメントが流れる。

『私の好きな人

他の子と仲良くしててマジ最悪なんですけど』

「なるほど」

面倒くせええ

俺は画面に向かって叫びたい気持ちを抑えながら話をする。

「嫉妬は自然な感情だけど、相手にぶつけすぎないこと

あとは自分の気持ちを整理して冷静に行動するといいとおもうよ」

面倒くさいと思ったときはこうやって適当言っておけばよい。

ただしきちんと相談者に向き合った上での発言だ。

『なるほど……冷静か……ありがとう』

はあ

今日もコメント欄は恋愛相談ばっかでいやになる。

そして俺はその渦中にいるのに巻き込まれない――ただの傍観者

そろそろじぶんにも青い春が来てもいいと思うんだけどな。

ふと画面をスクロールして気づく。

『あなたのおかげで私たち付き合うことになりましたありがとうございました』

……はあなんでこうやって感謝をされるのか俺にはいわれがない。

相談に乗っただけなのに恋人ができた報告が次々に届く。

羨ましい?いやそんなことよりも……うそですやはり羨ましいし妬ましい。

『助けてください私の好きな人が取られてしまうかも』

でも大体が同じような悩みばかりで

『好きなひとにふられたマジで最悪』

でも大体の悩みは俺がなにも言わなくてもじぶんで答えが出るものばかり

だから俺が出来るのはその道を導くことだけ

俺はただコメントを眺めて画面に向かって淡々と返事をする。

「そうか……うん、頑張れ」とか「それは辛いな……」とか

視聴者は恋愛で大騒ぎ

俺は巻き込まれずただ相談に乗るだけ。

でも、そんな立場が意外と面白い。

誰かの恋の始まりや終わりを他人事として体験できるんだから。

「……俺、今日も平和に生き延びたな」

胸の内でそうつぶやきつつ、俺は次の相談コメントを読む。

今日も俺の配信は、誰かの恋愛を動かす舞台であり、俺はただの観察者――それで充分なわけがねえ

でもそんな俺の前に落ちていたのは1つのスマホだった。

その画面にはVTuberの俺がいて

やべえ身バレする

そう思って拾うか拾わないか悩んでいた。

でも拾うことにしてキョロキョロと辺りを見回すと黒髪のイケメンが「すまないそれを返してくれないか」といってきた。

返してもくそも取った覚えはねえよ。

そう言い返してしまいたくなったがいけないことなので俺は「おう返すよ」といってその場を後にしようとした。

黒髪イケメンはスマホを受け取るとちらっと画面を確認して――すぐ電源を落とした。

「……助かったよありがとう」

低い、落ち着いた声。

見た目も声もイケメンだ。

俺なんかが近くに立っていいのか迷うレベルのやつ

「いやまあ拾っただけだし」

とっとと帰りたいのにそいつはじっと俺を見つめてくる。

なんだこいつ怖いな。

「君ここらへんの人?よく見かける気がして」

「えあ、まあ……住んでるけど」

やめろよそんな観察眼

身バレするから。

でもイケメンはフッと優しく笑って首を振った。

「変な意味じゃない。ただ……助けてもらった礼がしたくて」

なんだこの王子様みたいなやつ。

「いいよいいよほんとに拾っただけだから」

「いや……俺が困ってるときに拾ってくれたんだ。

……あ、変かな、こういうの」

イケメンが耳の後ろを掻く仕草をした瞬間フードの奥の首筋のラインがちらっと見えた。

妙に白くて華奢で線が細い。

手首も細いし指も長い。

なんつうきれいな男だ。

こういうやつがもてるんだろうな。

「……そのもし迷惑じゃなかったら……連絡先だけでも」

「は?」

いきなりの申し出に固まる俺。

「いや違うんだ別に怪しい意味とかじゃなくてね

困ったときのお礼を……そのしたくて」

慌てているようで声が一瞬だけ高くなった。

今の……俺の知り合いの女VTuberの声じゃね?

いや、気のせいだ。

俺は人のこと疑うの嫌だしというか面倒くさそうだし

イケメンは深呼吸して落ち着こうとし、

「……その、今日の君……なんか疲れてる顔してた。

だから少し話をしてみたくて」

と言って微笑む。

片言になっていて

なんだこいつ……怖すぎないか

だって俺のこといつも見ていないとそんなこと言えねえし

俺はこいつのこと知らねえのに

「じゃあ……」

俺は気づけばスマホを出していた。

というかさっさと怖いので帰りたかった。

イケメンは控えめに笑って指先で俺のスマホを操作して自分の連絡先を登録する。

その横顔を見ながら俺はまた思った。

こいつどっかで見た覚えが

でも決定的な証拠を得る前にイケメンは軽く会釈をして
「また話せたらいいね」とだけ言って去っていった。

残された俺のスマホにはたった一言の名前が登録されていた。

『カイ』

イケメンの名前

だけど中身は――まだわからない。

……いや、わからないままでいいか

なんか怖いけど悪くない。

配信のネタに出来るから

そんなふうに思ってしまった自分にも驚きながら俺は家に戻った。
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