またね、わたしの世界にいないきみへ

おとはつき

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1巻

1-3

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「いやいやなんで颯斗なわけ? 手、出したの俺だったんですけどー」

 金髪の彼は両手を頭の後ろで組みながら、大きな歩幅で進んでいく。
 ちゃりんちゃりんとギターケースにぶら下がる魔除け人形のような怪しい、だけどちょっとかわいらしいキーホルダーがそのたびに音を立て揺れた。

「刷り込みだろ。卵からかえったヒナが最初に見たものを親だと思うっていうあれみたいなもんだよ、きっと」

 颯斗はそう言いながら、わたしのことを振り返った。彼の黒いリュックサックの紐を、わたしはぎゅっと握りながら歩いていた。
 どこを歩いても見知らぬ景色ばかりで、手ぶらで歩いていたら再び迷子になってしまいそうな気がしたから。

「クロは野良猫で、ずっと家に連れ帰りたかったんだけど。いざとなるとすぐに逃げちゃってさ」

 颯斗は彼があの公園に来た経緯を話してくれる。
 明日は台風予報で、今夜こそあの黒猫を絶対に連れ帰るぞと意気込んでいったところ、膝を抱えるわたしがいたというわけだ。

「クロ一匹連れ帰るのも、もうひとり増えるのも変わんないっしょ」

 あっけらかんとした悠の物言いは、この状況をそこまで深刻に考えなくてもいいと思わせてくれるようで心が軽くなる。それと同時に、本当にこんな軽くて大丈夫なのかと不安にもなるので、現実的な颯斗とはいいコンビなのかもしれない。

「家に帰ったら、何かおいしいもんでも作ってもらえばいいよ」

 そう言う悠がわたしに差し出したのは、真四角のころんとした小さなキャンディ。ピンク色と黄緑色のものがひとつの袋の中にかわいらしく並んでいる。指先に力が入らずぺりぺりと袋の端に苦戦していれば、立ち止まった颯斗がそれを開けてくれた。

「作ってもらえばいいって、あおいが家にいるか分からないだろ」
「いるね。俺の予想では葵は今日、家から一歩も出てないはず!」

 自信満々に答える悠に、ため息をつく颯斗。
 どうやらこれから向かう場所には、葵さんという人がいるらしい。
 悠がくれたキャンディは、どこか懐かしい甘味と共に心を柔らかくしてくれた。


「到着!」という声と共に悠が足を止めたのは、大きな一軒家の前。庭先で咲き誇る白い花の香りが、ふわりとわたしの頬を撫でる。
 ……なんだっけこの香り……ジャスミン?
 思わず鼻をスンと鳴らすと、颯斗が「ジャスミンだよ」と教えてくれる。すごい。どうしてわたしが考えていたことが分かったんだろう。
 それにしても、大きな家だ。
 颯斗も悠も、わたしより少し年上くらいに見える。ふたりの話から、数人で暮らしているのだとは思っていたけれど、まさかこんな立派な一軒家に住んでいたなんて。もしかして、ふたりは友達じゃなくて兄弟なのかもしれない。

「緊張してる?」

 家を見上げていると、颯斗が小首を傾げながらわたしを見る。

「あの、ご両親とかは……?」

 颯斗と悠は、わたしを警察に連れていくようなことはしなかった。
 しかし、大人はそれを許してはくれないはずだ。再び行き場をなくす未来が見えた気がして、思わず身を硬くする。
 そうこうしている間にも、悠は「ただいまー」と躊躇なく玄関扉を押し開ける。

「大丈夫。そういう大人はいないから」

 颯斗はそう言いながら、悠に続くようにとわたしの背中をそっと押す。戸惑いつつ大きな玄関に足を踏み入れると、石鹸のような香りに包まれた。お香のような異国風の香りも混ざっているように感じる。
 自分が生活していると気が付かないが、家には独特の匂いというものがある。甘い匂いがする家、南の国みたいな匂いがする家、ちょっと苦い匂いがする家。それでも全ての匂いに共通するのは、ここで誰かが生活しているんだと感じさせる安心感を持っていること。この家も例外ではなく、優しい匂いはわたしの心をふわりと包み込んだ。

「おかえりー。チャーハン作ってるけど、食う?」

 奥から聞こえてきた女の子の声に、どきんと心臓が飛び跳ねる。
 もしかして、悠が話していた葵さんだろうか。
 その人が同性であるということに、ほっとすると同時に緊張感が高まっていく。颯斗と悠は、彼女には何も言わずわたしのことを連れてきている。もしかしたら、葵さんはわたしのことを歓迎してくれないかもしれない。
 玄関に上がるのをためらっていると、そんな気持ちをくみ取ったのか、颯斗は安心させるように頷いた。

「ほら! やっぱり葵、うちにいたじゃん!」

 一歩先にリビングまで進んだ悠が誇らしげにこちらに言うと、ひょこりとドアから小さな顔が覗く。黒髪のクールなボブスタイルに翡翠ひすい色の瞳の綺麗な子だ。

「あ! 女の子だ! 颯斗の? それとも悠の? あーっ、クロやっと連れてこれたんだ!」

 言いたいことだけを言って、葵さんは、「焦げる!」とお玉片手にすぐキッチンへと戻っていく。

「葵は嵐みたいだから」

 よかった、わたしが来たことを悪くは思っていなさそうだった。サバサバとしていて、優しそう。さっきまでの心配は、葵さんの笑顔で吹き飛ばされた。
 颯斗に促されるままリビングへ足を踏み入れると、そこは香ばしいお醤油の匂いでいっぱい。キャンディで誤魔化されていたお腹は空腹感を思い出したようで、もう一度わたしのお腹は悲鳴をあげた。

「おっ、景気いいねえ! 腹ペコ大歓迎だよ、葵亭特製チャーハンまであと三十秒!」

 白のタンクトップにデニムのショートパンツ姿の葵さんは、手際よくフライパンからお皿にチャーハンを移している。失礼にならないように、そっとその横顔を見つめてみる。流した前髪をピンで留めている葵さんは、メイクなどしていないように見える。それでも、十分に綺麗な人だということが分かった。

「何人前ある?」
「ざっと三・五人前」

 颯斗はリビングに置いてあったケージ内に、そっとクロを下ろす。そこにはキャットフードやお水、おトイレに猫用のクッションなどが用意されてあった。きっとクロのために、みんなで準備していたのだろう。

「そっか、じゃあ俺の分はユキにあげて」

 颯斗がわたしをダイニングテーブルに座らせながらそう言うと、葵さんはニヤニヤと口元を緩ませる。

「ふぅん、ユキちゃんっていうんだ~。颯斗のオンナかぁ」
「あの、わたしそんなんじゃ……」
「わたしのことは葵ちゃんって呼んで! よろしくねユキちゃん!」

 颯斗の言う通り、葵ちゃんは嵐のように全てを自分のペースに巻き込んでしまうだけの力があるみたいだ。
 戸惑いつつも、わたしはこくりと頷いた。


「おいしい……! 今まで食べたチャーハンの中で一番おいしい!」

 完成したチャーハンを食べ、わたしは感動していた。
 程よく香ばしい、パラパラのチャーハン。卵もふわふわのままで、口の中に入れるとお醤油の香ばしい香りと合わさって甘みと旨みを引き出すようで。それは決してお世辞でもない、心からの感想だった。
 この瞬間を収めなきゃ! 
 不意にそう思い、手が勝手にポケットの中を探る。しかし、そこにはもちろん何もない。公園で感じた焦燥感を思い出し、わたしはぶるりと身震いをした。
 だけどその様子は、誰にも気付かれなかったらしい。

「もーっ、ユキちゃんかわいい! 大好き!」

 隣にいる葵ちゃんに抱きつかれ、その腕の温かさにふと泣きそうになってしまう。
 自分が誰なのかも分からないわたしのことを、当たり前のように受け止めてくれる人たちがいるなんて。ここに連れてきてもらえたわたしは、とても幸運だったと思う。
 チャーハンを食べながら聞いた話によると、この一軒家は葵ちゃんの叔父さんの家なんだそうだ。海外転勤で空家になるということで、葵ちゃんが大学生になるタイミングで引っ越してきたらしい。

「大学からも近いし、ちょうどいいなあって思ってね。最初はひとりで住んでたんだけど、ちょっと広すぎて。それに物騒でしょ、女子一人じゃ」
「葵なら野生のクマが襲ってきたって平気っしょ!」

 テーブルの下、悠の足に葵ちゃんの蹴りがヒットする。痛がる悠を置いて、葵ちゃんは話を進める。

「それで、まず颯斗のことを誘ったんだよね。部屋が余ってるから一緒に住まない? って」

 颯斗を見ると、彼は頷く。

「葵と俺は学年は違うけど、中学時代からの付き合いなんだよ。腐れ縁みたいなもん。で、まだ部屋が余ってるっていうから同じ大学だった悠を誘ったわけ」

 現在、葵ちゃんは大学三年生。颯斗と悠は大学一年生ということだった。この家にはさらにもうひとり、げんさんという男性も暮らしているらしい。世界中を巡るバックパッカーで、日本には一年に一度戻るか戻らないかとのことだった。

「それじゃあここは、シェアハウスみたいなところなの?」

 わたしの質問に、三人は顔を見合わせて首を傾げる。

「シェアハウス?」
「えっと、みんなで同じ家で暮らす、みたいな……」

 もしかして、もうシェアハウスという言葉自体古いのかな。そんなことを考えながら言い直すと、三人は同時に頷く。

「そうそう、そんな感じ! 恋人でもない男と暮らすなんておかしいとか言われることもあるけど、何も知らない人にどう思われても構わないと思ってるんだ」

 葵ちゃんはそう言いながら、缶ビールをぐいっと飲む。二十歳の葵ちゃんは、とても大人に見える。

「人間関係の形なんて、人それぞれだよ。今のわたしにとっては、ここにいるみんなが大事な家族!」

 両手を大きく広げた葵ちゃんに、悠が「酒臭い」と顔をしかめ、颯斗が呆れたように笑う。それから葵ちゃんは、わたしの頬を両手で優しく包んだ。

「ユキちゃんもさ、好きなだけうちにいていいんだからね」

 きっと、颯斗たちからわたしが何も覚えていないことを聞いていたのだろう。その声があまりに優しくて、わたしの瞳にはじわりじわりと涙が滲んでいく。
 そんなわたしの頭を、颯斗が笑いながら優しく撫でた。


   ◇


 人間は順応する生き物だと、以前誰かが言っていたような気がする。
 この家に来た日の夜は、不安でなかなか寝付くことができなかった。
 二日目になると、みんながどんな性格なのかがなんとなく分かるようになった。
 三日目には、ただで置いてもらい、ご飯も食べさせてもらっていることに申し訳ないと思うようになった。
 四日目は家事を手伝いたいと申し出て、五日目には初めて葵ちゃんにオムライスが食べたいとリクエストすることができた。
 そうして気付けば、この家に来てから一週間以上が経過していた。

「颯斗、朝だよ。朝ご飯も、もうできてるよー」

 ここは、颯斗の部屋。ベッドの中で丸くなっている体を、布団の上からゆさゆさと揺らすも彼は構わず眠っている。最初の頃こそ心配したこともあったけれど、今ではもう、朝が弱いだけだと知っている。
 やっとのことで颯斗を目覚めさせ下に降りれば、お玉を片手にした葵ちゃんが笑った。

「颯斗の寝起きの悪さ、尋常じゃないでしょ?」
「絶対にひとり暮らしできないと思う。遅刻ばっかで留年しちゃうよ」

 わたしがそう言う横で、颯斗は大あくびをしている。
 意外にもこの家で一番早起きなのは悠で、毎朝庭でラジオ体操をしている。何度か誘われたけど、わたしに朝からそこまでの元気はない。

「ユキちゃん、ココア飲む?」
「うん、飲みたい!」

 葵ちゃんは毎朝ココアを飲んでいて、わたしの分も一緒に作ってくれる。
 探り探りではあるけれど、ここでの生活にも少しずつ慣れてきた。
 記憶がないことへの不安。そして時折襲われる〝何かがない〟という焦燥感と戦うことはあるものの、どうにか正気を保っていられるのは、葵ちゃんに悠、そして颯斗が一緒にいてくれるからだ。
 平日の昼間、颯斗と悠は大学に出かける。大学三年生の葵ちゃんはそんなに講義がないらしく、わたしは彼女とクロと共に時間を過ごすことが多い。葵ちゃんや悠が出かけるときには颯斗が必ず家にいて、わたしがなるべくひとりにならないようにしてくれていた。
 そんな心遣いを申し訳なく思いながらも、いつもほっとしている。
 作ってもらったココアを一口飲むと、颯斗が声をかけてきた。

「ユキ、今日の午後少し出かける?」

 やっと目が覚めてきたのか、コーヒーの入ったマグカップを手にしている。

「えっ、いいの? 大学とかバイトは?」
「午後は休講。バイトは今日休み」
「やった!」

 どこに連れていってくれるのだろう。わたしがわくわくと胸を躍らせていると「ひゃっ!」という葵ちゃんの悲鳴にも似た声が響いた。

「教授に手伝い頼まれてたの忘れてた!」

 ガタッとテーブルから立ち上がった葵ちゃんは、バタバタと廊下へと走っていく。
 どうやら大事な用事を忘れていたらしい。しばらくすると「すみません! これからすぐに向かうので、十五分遅れくらいでは入れるかと。はい、はい……、よろしくお願いします!」と電話で話している声が聞こえてくる。
 この家には固定電話が引いてあって、葵ちゃんはそれを使っている。
 いつでも使っていいよとは言われているけれど、今のところそんな機会はない。
 戻ってきた葵ちゃんは洗面所でメイクをしながら「ユキちゃんごめん! 颯斗が帰ってくるまで、ひとりでも平気?」とわたしに質問を投げかける。
 今日は颯斗も悠も、これから大学に行ってしまう。今までひとりで留守番をしたことはなかったけど、この家にもだいぶ慣れてきたし、実際にはほんの数時間だけのことだ。

「大丈夫だよ、洗濯とかしておくね」

 わたしがそう返事をすると、いつものように「ユキちゃん大好き!」という声が返ってきて笑ってしまう。
 わたしの隣では、颯斗が少しだけ心配そうに首を傾げた。

「本当に平気?」
「大丈夫だよ、小さい子供じゃないんだから」
「まあ、そうかもしれないけど」
「それに、留守番を任せてもらえて嬉しい。この家の一員って感じがするから」

 そう言うと、颯斗は「そっか」と笑ってわたしの頭をくしゃりと撫でた。胸の奥が、きゅっと音を立てる。颯斗に優しくされると、なんだか心がかゆくなって、嬉しくなってしまうんだ。


 そうして三人が出かけたあと、わたしは張り切って部屋のすみずみまで掃除をした。お庭の雑草取りもしたし、洗濯だってシーツやブランケットまで洗ってベランダに干してきた。隙間時間ではクロとおもちゃで遊んで、お風呂の鏡もぴかぴかに磨いた。

「わ、クロかわいい……!」

 リビングに戻ってくると、ソファでクロがぐでんと体を伸ばして仰向けになっている。
 そこでわたしはレンズ付きフィルムを引出しから取り出した。
 数日前、わたしが葵ちゃんの料理を写真に残しておきたいと言ったら、まだフィルムが残っているから、と颯斗がくれたものだ。
 わたしはたびたび、クロのかわいい姿や、葵ちゃんが作ってくれた料理、それにみんなの笑顔を撮った。現像しないと見られないけれど、きっとわたしの宝物になるはず。
 ふと襲ってくる正体不明の焦燥感も、カメラのシャッターを切ると落ち着くことが多い。

「クロ、撮るよ」

 ソファの上でくつろぐクロを写真におさめ、そのまま隣に腰を下ろす。ソファは、ぽふっとわたしの体を心地よく包んでくれる。
 さすがにちょっと疲れたのかもしれない。
 とろりとした心地よい眠気に襲われて、わたしはゆっくりと目を閉じた。


   ◆


 ツンとする薬品の匂い。やたらと白い天井に眩しいライト。
 ぽた、と頬に生温かい感触を感じ、ゆっくりと視線を彷徨さまよわせる。やがてそれは、涙をためるお母さんの姿に行きついた。

「ユキ──!」

 お母さんに抱きしめられるなんて、何年ぶりだろう。
 懐かしくもほっとするような匂いと温かさの中、ぼんやりとした意識のまま黒目だけを左右にゆっくりと動かした。
 震えながら嗚咽おえつを漏らすのは紛れもなくわたしの母親だ。抱きしめられたまま、だらんと落ちたわたしの左腕からは細長いチューブが伸びている。その先は点滴台。硬いベッドに素っ気ない掛け布団。
 ──ああ、ここは病院なのか。


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