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アニエス、結婚式にて
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「「「アニエス~!」」」
「姫様!アイリスさん!アルマさん!」
「「「「会いたかった~~!!」」」」
久しぶりに姫様、アイリスさん、アルマさん
と四人揃って大はしゃぎな私。
四人で抱き合う。
花嫁の控え室。
私の付き添いであるマリーナ義母様と
エルドバルド家の侍女頭のマーサさんが
私達を微笑ましく見つめている。
う~ん。
私とアルマさん以外の二人のお腹が大きい。
ゆったり目のドレスに身を包み少しだけ
ふくよかになった姫様とアイリスさん。
幸せオーラが滲みでていてまぶしい。
思わず苦笑する私。
姫様もアイリスさんも妊婦さんだ。
十二年という長い間、白竜の結界のために
引き裂かれた姫様とロイシュタール様。
結婚式まで待てないのは、まあ分かります。
アイリスさんとアルフォンス様も十二年越し
に元サヤにおさまった。
結婚式まで待てないのは、まあ分かります。
婚前交渉の結果、二人ともご懐妊。
結婚式が大変だった。
式直前でウエディングドレスがサイズが
合わなくなってしまい大慌て。
お直しだけでは無理だった。
ここでグレン様が私のために作った八十着の
ウエディングドレスが役に立った。
私と姫様達は背丈もサイズもほぼ同じ。
王族の挙式で着用しても全く遜色のない
豪華なドレス。
元々私が結婚式までにお腹が大きくなって
も大丈夫なようにグレン様が変な先回りを
して作ってくれたドレス。
最初グレン様から話を聞いた時には……
『何をしているの魔王。馬鹿じゃないの?』
とか思ったけれど……何が役に立つか分から
ないものねぇ。思わず遠い目になる。
結局私は結婚式までにお腹が大きくなる事
なく無事にこの日を迎えた。
でも、私達四人は結果的に全員グレン様が
ふざけた理由で作ったドレスで結婚式を
挙げる事になった訳だ。
あはは。笑うしかない。
一番最初はアルマさんとマクドネル卿の
結婚式だった。
最初から妊婦のアルマさんはそれを見越して
ゆったり目なドレスをマクドネル卿が仕立て
ていたのに、それが結婚式の直前にサイズが
合わなくなった。
今から思えば双子だったからよりお腹が
大きかったのかも。
慌てふためくマクドネル卿にグレン様が
ドレスを提供してくれて無事に結婚式を
挙げる事ができた。
アルマさんはすでに出産済みなのでお腹が
ぺしゃんこ。元の体形に戻ってます。
生まれたお子さんは赤い髪のアルマさん
そっくりの男の子と女の子。
双子だ!
マクドネル卿はアルマさん似の息子ちゃん
と娘ちゃんにメロメロです。
何せ生まれた日は感動のあまりずっと涙を
流し続けアルマさんを呆れさせた。
仲が良くて何よりです。
次はアイリスさん。
帝国は未だ混乱の最中。
アルフォンス様が皇帝として即位されるのと
同時に結婚式を挙げた。
アイリスさんも妊娠のためにアルフォンス様
の用意していたドレスが着れず大慌て。
結局グレン様がドレスを提供してくれて
無事に結婚式を挙げた。
長い長い親子喧嘩をしていたアイリスさん
と父親のカルヴァン侯爵。
ワイバーンの毒で死にかけた事から和解。
だからこそなのかアイリスさんの花嫁姿に
カルヴァン侯爵は感動のあまり男泣き。
あまりの号泣っぷりに皆の生暖かい視線が
集まった。
長い回り道をして結ばれたアイリスさんと
アルフォンス様。
もうラブラブです。
仲が良くて何よりです。
そう今ではアイリスさんは帝国の皇后様だ。
そして次が姫様の結婚式。
ロイシュタール様も姫様のためにドレスを
用意していたのどけれどやっぱり妊娠の
ために着れず……結局、グレン様のドレスを
着て無事に結婚式を挙げた。
もうロイシュタール様の姫様への溺愛っぷり
は周りをドン引きさせるほどだ。
仲が良くて何よりです。
そう今では姫様はキルバンの王妃様です。
二人とも臨月間近の皇后と王妃。
今日は来れないと思っていたのに……。
ご夫婦ともに来てくれた。
帝国皇帝夫妻とキルバンの国王夫妻が
私達の結婚式に出席。
当然アルトリアの国王夫妻も出席。
アーサー殿下、プリシラ様にアイザック様。
おまけにカナンからは王弟バルド様が出席。
来賓が凄すぎる。
それに東の遠国ヨバルの王妃様。
ヨバルの王妃様は姫様の上の姉君。
第一王女であられたソフィア様だ。
母君が亡くなった時にすら帰郷しなかった
ソフィア様がグレン様の結婚式だからと
列席される予定。
けれどあともう少しで式が始まるというのに
未だアルトリアに到着されていない。
国王陛下も姫様もアーサー殿下もそわそわと
落ち着きがない。
優しい姉君。姫様はよくお姉様に会いたいと
言っていた。
グレン様やロイシュタール様にとっても姉の
ような方だと聞いている。
間に合う間に合わないはともかく無事に到着
する事を祈るしかない。
ヨバルは遠い。
何事もなければいいのだけれど。
「お忙しい中、私達のために来て下さって
ありがとうございます」
「や~ねぇ。アニエスとグレンの結婚式よ?
何があっても来るわよ。
アニエスは私の妹分だし、グレンは私にも
ロイにとっても弟分なんだから」
「ですよねぇ。アルも私も今日を楽しみに
公務を調整してきたのよ。ふふ!
それにしてもアニエス、きれいだわ」
アイリスさんが私のウエディングドレス姿
を褒めてくれる。
えへへ。
似合ってますかね?
「うん。本当にきれい。グレン様ったら絶対
にあなたに見惚れるわよ。ふふ!」
アルマさんが太鼓判を押してくれる。
本当?グレン様……見惚れてくれるかな?
どきどきしていると姫様が私の両手をとる。
なんだか真剣な表情。
「アニエス、ありがとう。グレンを幸せに
してくれて」
「え?姫様、逆ですよ。逆。私がグレン様
に幸せにしてもらったんです」
えっへん。胸を張って言える。
もう姫様ったら真面目な顔で何を私にお礼を
言っているの。逆ですよ。
私、グレン様が側にいてくれたら物凄く
幸せなんですよ?
「アニエスのそういう所、私、好きだわ」
姫様が苦笑する。
アイリスさんとアルマさんはニマニマ笑う。
「アニエスはいつでも素直だよね」
アイリスさんが笑う。
「ちょっとお間抜けさんだけど」
アルマさんの言葉に部屋にいた全員が笑う。
ひどい!マリーナ義母様まで笑っている。
マーサさん我慢しないで笑っていいですよ。
必死で笑うの我慢してるのバレてますって!
四人で思い出話に花が咲く。
結界で閉じ込められた姫様からしたら
とんでもない話だけれど楽しかったな。
四人の行く途は別れたけれどあの日々は
私達の人生の大きな糧になったと思う。
「アニエス、そろそろ時間よ。オーウェンが
迎えに来てるわ」
マリーナ義母様がハグしてくれる。
「グレンと幸せにね。嫁いでもあなたは
私達の可愛い娘よ」
「義母様!ありがとうございました」
「まあ、せっかくのきれいなお化粧が
駄目になるわ。泣いちゃだめよアニエス」
私、ザルツコードの養女になって本当に
よかった。
マリーナ義母様もオーウェン義父様も
お義兄達もみんな本当に優しくしてくれた。
「ああ……なんてきれいなんだアニエス」
オーウェン義父様がドレス姿を褒めてくれる。
涙ぐむ義父様。
義父様のエスコートでバージンロードを歩く。
「寂しいな……あっと言う間にお嫁に行って
しまうんだね。グレン様と喧嘩でもしたら
いつでも南辺境へおいで」
「もう義父様ったら……喧嘩はしなくても
遊びに行きますよ」
「はは!待っているよ」
ううっ!
列席者が……王族に高位貴族だらけ。
ヤバい緊張してきた。
どうか転びませんように。
慎重に歩く。
あれ?黒竜、青竜、赤竜ったら陛下の
隣にいるよ……なんで貴賓席にいるの。
ちょっとびっくり。
人外生物達は美形だから物凄い存在感。
その正装……誰に仕立ててもらったのだろう。
キラキラしい貴公子様仕様の竜達。
黒竜が小さく手を振っている。
ゆっくり長いべールを引きずりながら
歩いていると列席者の中に実家の家族の
姿を発見した。
ほっと気が緩む。
あ、父様と兄さん達がぼろぼろ泣いている。
もう、しょうがないなぁ。
エリック兄さんの隣には新妻のドーラが
いて手巾で兄さんの涙を甲斐甲斐しく拭いて
いる。ふふ!仲が良くて何よりです。
セドリック兄さんの隣には婚約者である
ルビィさんがいてやはり手巾で優しく
涙を拭いていた。
仲が良くて何よりです。
このルビィさん。
以前私が青竜に襲われた時と帝国から脱出
した時に診てくれた女医さんです。
あれが縁でセドリック兄さんと交際に発展。
先日、婚約した。
う~ん。残されたマリック兄さんが寂しい。
一人だけお相手がいない。
どこかにいいお嫁さんがいないかな?
なんて考えていたらすぐに祭壇の近くまで
たどり着いた。
祭壇の前には大司教様。
この方は神殿の粛清後に就任されたので
王家との関係性は良好だ。
温厚で清廉な人柄と評判。
祭壇の少し手前でグレン様が私を待っていた。
うわっ!グレン様……まぶしい!
白と銀の正装。
蕩けるような笑顔で私を見ている。
カッコいい!
最近軍服が白なので白は見慣れているはず
なのに……。
どうしよう。このカッコいい人がもうすぐ
私の夫になるんだ。
わ~~~!!
どうしよう。照れる。
オーウェン義父様からグレン様へエスコート
が代わる。
「ちゃんと幸せにして下さいよ。もし泣かせ
たら……ははは!分かっているな?小僧!」
「当然だ。啼かせても泣かせん」
グレン様とオーウェン義父様が睨み合う。
もう、お目出度い席で睨み会わないで下さい。
しかもさらっと何を言っているの
このエロ魔王。
「アニエス、美しいな。ドレスがとても
似合っているぞ」
私の手をとったグレン様が満足そうに
ドレスを褒めてくれる。
「あ、ありがとうございます」
「なんだ?元気がないな?」
「緊張しているんです」
「緊張?なんで?」
「来賓は高貴な方ばかりだし。グレン様は
カッコいいし。目が回りそうです」
「来賓が高貴?本当に高貴な奴は皆知り合い
だろう。あとの貴族はカボチャだと思え。
それより俺がカッコいいと緊張するのか?」
「しますよ。そりゃ」
「ふうん?いい加減見慣れろ。俺はいつでも
カッコいいだろう」
「ソウデスネ」
無駄口をたたいているうちにいつの間にか
祭壇の前まで来た。
「それでは式を始めます」
大司教様の宣言に私達は互いに見つめ合う。
その時外から大勢の悲鳴や怒号が聞こえて
来た。何?何があったの?
列席者達が不安感そうにざわめく。
大聖堂に兵士が駆け込んで来る。
「竜です!竜がこちらに飛んで来ます!!」
列席者達から悲鳴が上がる。
「皆、落ち着け!結界を張る。ここは安全だ
マクドネル、状況を把握しろ」
陛下が立ち上がり指示をとばす。
マクドナネル卿が外へと駆け出す。
え?竜?
竜はほとんどグレン様が支配している。
勝手に王都には入っては来ないはず。
グレン様が参列していた黒竜、青竜、赤竜を
見る。
けれど黒竜達は首を振る。
一体、どこの竜よ。
まさかリョクじゃないよね?
「行くぞ?」
「はい!」
グレン様の声に短く返事をした。
バルド様、カーマイン卿。義兄様達に
実家の家族が立ち上がる。
「アシェンティ!お前達はこの場に残り、
列席者を守れ!」
グレン様が熊父達に指示する。
「承知!」
野太い声で父様が請け負う。
私達は外へ駆け出した。
「姫様!アイリスさん!アルマさん!」
「「「「会いたかった~~!!」」」」
久しぶりに姫様、アイリスさん、アルマさん
と四人揃って大はしゃぎな私。
四人で抱き合う。
花嫁の控え室。
私の付き添いであるマリーナ義母様と
エルドバルド家の侍女頭のマーサさんが
私達を微笑ましく見つめている。
う~ん。
私とアルマさん以外の二人のお腹が大きい。
ゆったり目のドレスに身を包み少しだけ
ふくよかになった姫様とアイリスさん。
幸せオーラが滲みでていてまぶしい。
思わず苦笑する私。
姫様もアイリスさんも妊婦さんだ。
十二年という長い間、白竜の結界のために
引き裂かれた姫様とロイシュタール様。
結婚式まで待てないのは、まあ分かります。
アイリスさんとアルフォンス様も十二年越し
に元サヤにおさまった。
結婚式まで待てないのは、まあ分かります。
婚前交渉の結果、二人ともご懐妊。
結婚式が大変だった。
式直前でウエディングドレスがサイズが
合わなくなってしまい大慌て。
お直しだけでは無理だった。
ここでグレン様が私のために作った八十着の
ウエディングドレスが役に立った。
私と姫様達は背丈もサイズもほぼ同じ。
王族の挙式で着用しても全く遜色のない
豪華なドレス。
元々私が結婚式までにお腹が大きくなって
も大丈夫なようにグレン様が変な先回りを
して作ってくれたドレス。
最初グレン様から話を聞いた時には……
『何をしているの魔王。馬鹿じゃないの?』
とか思ったけれど……何が役に立つか分から
ないものねぇ。思わず遠い目になる。
結局私は結婚式までにお腹が大きくなる事
なく無事にこの日を迎えた。
でも、私達四人は結果的に全員グレン様が
ふざけた理由で作ったドレスで結婚式を
挙げる事になった訳だ。
あはは。笑うしかない。
一番最初はアルマさんとマクドネル卿の
結婚式だった。
最初から妊婦のアルマさんはそれを見越して
ゆったり目なドレスをマクドネル卿が仕立て
ていたのに、それが結婚式の直前にサイズが
合わなくなった。
今から思えば双子だったからよりお腹が
大きかったのかも。
慌てふためくマクドネル卿にグレン様が
ドレスを提供してくれて無事に結婚式を
挙げる事ができた。
アルマさんはすでに出産済みなのでお腹が
ぺしゃんこ。元の体形に戻ってます。
生まれたお子さんは赤い髪のアルマさん
そっくりの男の子と女の子。
双子だ!
マクドネル卿はアルマさん似の息子ちゃん
と娘ちゃんにメロメロです。
何せ生まれた日は感動のあまりずっと涙を
流し続けアルマさんを呆れさせた。
仲が良くて何よりです。
次はアイリスさん。
帝国は未だ混乱の最中。
アルフォンス様が皇帝として即位されるのと
同時に結婚式を挙げた。
アイリスさんも妊娠のためにアルフォンス様
の用意していたドレスが着れず大慌て。
結局グレン様がドレスを提供してくれて
無事に結婚式を挙げた。
長い長い親子喧嘩をしていたアイリスさん
と父親のカルヴァン侯爵。
ワイバーンの毒で死にかけた事から和解。
だからこそなのかアイリスさんの花嫁姿に
カルヴァン侯爵は感動のあまり男泣き。
あまりの号泣っぷりに皆の生暖かい視線が
集まった。
長い回り道をして結ばれたアイリスさんと
アルフォンス様。
もうラブラブです。
仲が良くて何よりです。
そう今ではアイリスさんは帝国の皇后様だ。
そして次が姫様の結婚式。
ロイシュタール様も姫様のためにドレスを
用意していたのどけれどやっぱり妊娠の
ために着れず……結局、グレン様のドレスを
着て無事に結婚式を挙げた。
もうロイシュタール様の姫様への溺愛っぷり
は周りをドン引きさせるほどだ。
仲が良くて何よりです。
そう今では姫様はキルバンの王妃様です。
二人とも臨月間近の皇后と王妃。
今日は来れないと思っていたのに……。
ご夫婦ともに来てくれた。
帝国皇帝夫妻とキルバンの国王夫妻が
私達の結婚式に出席。
当然アルトリアの国王夫妻も出席。
アーサー殿下、プリシラ様にアイザック様。
おまけにカナンからは王弟バルド様が出席。
来賓が凄すぎる。
それに東の遠国ヨバルの王妃様。
ヨバルの王妃様は姫様の上の姉君。
第一王女であられたソフィア様だ。
母君が亡くなった時にすら帰郷しなかった
ソフィア様がグレン様の結婚式だからと
列席される予定。
けれどあともう少しで式が始まるというのに
未だアルトリアに到着されていない。
国王陛下も姫様もアーサー殿下もそわそわと
落ち着きがない。
優しい姉君。姫様はよくお姉様に会いたいと
言っていた。
グレン様やロイシュタール様にとっても姉の
ような方だと聞いている。
間に合う間に合わないはともかく無事に到着
する事を祈るしかない。
ヨバルは遠い。
何事もなければいいのだけれど。
「お忙しい中、私達のために来て下さって
ありがとうございます」
「や~ねぇ。アニエスとグレンの結婚式よ?
何があっても来るわよ。
アニエスは私の妹分だし、グレンは私にも
ロイにとっても弟分なんだから」
「ですよねぇ。アルも私も今日を楽しみに
公務を調整してきたのよ。ふふ!
それにしてもアニエス、きれいだわ」
アイリスさんが私のウエディングドレス姿
を褒めてくれる。
えへへ。
似合ってますかね?
「うん。本当にきれい。グレン様ったら絶対
にあなたに見惚れるわよ。ふふ!」
アルマさんが太鼓判を押してくれる。
本当?グレン様……見惚れてくれるかな?
どきどきしていると姫様が私の両手をとる。
なんだか真剣な表情。
「アニエス、ありがとう。グレンを幸せに
してくれて」
「え?姫様、逆ですよ。逆。私がグレン様
に幸せにしてもらったんです」
えっへん。胸を張って言える。
もう姫様ったら真面目な顔で何を私にお礼を
言っているの。逆ですよ。
私、グレン様が側にいてくれたら物凄く
幸せなんですよ?
「アニエスのそういう所、私、好きだわ」
姫様が苦笑する。
アイリスさんとアルマさんはニマニマ笑う。
「アニエスはいつでも素直だよね」
アイリスさんが笑う。
「ちょっとお間抜けさんだけど」
アルマさんの言葉に部屋にいた全員が笑う。
ひどい!マリーナ義母様まで笑っている。
マーサさん我慢しないで笑っていいですよ。
必死で笑うの我慢してるのバレてますって!
四人で思い出話に花が咲く。
結界で閉じ込められた姫様からしたら
とんでもない話だけれど楽しかったな。
四人の行く途は別れたけれどあの日々は
私達の人生の大きな糧になったと思う。
「アニエス、そろそろ時間よ。オーウェンが
迎えに来てるわ」
マリーナ義母様がハグしてくれる。
「グレンと幸せにね。嫁いでもあなたは
私達の可愛い娘よ」
「義母様!ありがとうございました」
「まあ、せっかくのきれいなお化粧が
駄目になるわ。泣いちゃだめよアニエス」
私、ザルツコードの養女になって本当に
よかった。
マリーナ義母様もオーウェン義父様も
お義兄達もみんな本当に優しくしてくれた。
「ああ……なんてきれいなんだアニエス」
オーウェン義父様がドレス姿を褒めてくれる。
涙ぐむ義父様。
義父様のエスコートでバージンロードを歩く。
「寂しいな……あっと言う間にお嫁に行って
しまうんだね。グレン様と喧嘩でもしたら
いつでも南辺境へおいで」
「もう義父様ったら……喧嘩はしなくても
遊びに行きますよ」
「はは!待っているよ」
ううっ!
列席者が……王族に高位貴族だらけ。
ヤバい緊張してきた。
どうか転びませんように。
慎重に歩く。
あれ?黒竜、青竜、赤竜ったら陛下の
隣にいるよ……なんで貴賓席にいるの。
ちょっとびっくり。
人外生物達は美形だから物凄い存在感。
その正装……誰に仕立ててもらったのだろう。
キラキラしい貴公子様仕様の竜達。
黒竜が小さく手を振っている。
ゆっくり長いべールを引きずりながら
歩いていると列席者の中に実家の家族の
姿を発見した。
ほっと気が緩む。
あ、父様と兄さん達がぼろぼろ泣いている。
もう、しょうがないなぁ。
エリック兄さんの隣には新妻のドーラが
いて手巾で兄さんの涙を甲斐甲斐しく拭いて
いる。ふふ!仲が良くて何よりです。
セドリック兄さんの隣には婚約者である
ルビィさんがいてやはり手巾で優しく
涙を拭いていた。
仲が良くて何よりです。
このルビィさん。
以前私が青竜に襲われた時と帝国から脱出
した時に診てくれた女医さんです。
あれが縁でセドリック兄さんと交際に発展。
先日、婚約した。
う~ん。残されたマリック兄さんが寂しい。
一人だけお相手がいない。
どこかにいいお嫁さんがいないかな?
なんて考えていたらすぐに祭壇の近くまで
たどり着いた。
祭壇の前には大司教様。
この方は神殿の粛清後に就任されたので
王家との関係性は良好だ。
温厚で清廉な人柄と評判。
祭壇の少し手前でグレン様が私を待っていた。
うわっ!グレン様……まぶしい!
白と銀の正装。
蕩けるような笑顔で私を見ている。
カッコいい!
最近軍服が白なので白は見慣れているはず
なのに……。
どうしよう。このカッコいい人がもうすぐ
私の夫になるんだ。
わ~~~!!
どうしよう。照れる。
オーウェン義父様からグレン様へエスコート
が代わる。
「ちゃんと幸せにして下さいよ。もし泣かせ
たら……ははは!分かっているな?小僧!」
「当然だ。啼かせても泣かせん」
グレン様とオーウェン義父様が睨み合う。
もう、お目出度い席で睨み会わないで下さい。
しかもさらっと何を言っているの
このエロ魔王。
「アニエス、美しいな。ドレスがとても
似合っているぞ」
私の手をとったグレン様が満足そうに
ドレスを褒めてくれる。
「あ、ありがとうございます」
「なんだ?元気がないな?」
「緊張しているんです」
「緊張?なんで?」
「来賓は高貴な方ばかりだし。グレン様は
カッコいいし。目が回りそうです」
「来賓が高貴?本当に高貴な奴は皆知り合い
だろう。あとの貴族はカボチャだと思え。
それより俺がカッコいいと緊張するのか?」
「しますよ。そりゃ」
「ふうん?いい加減見慣れろ。俺はいつでも
カッコいいだろう」
「ソウデスネ」
無駄口をたたいているうちにいつの間にか
祭壇の前まで来た。
「それでは式を始めます」
大司教様の宣言に私達は互いに見つめ合う。
その時外から大勢の悲鳴や怒号が聞こえて
来た。何?何があったの?
列席者達が不安感そうにざわめく。
大聖堂に兵士が駆け込んで来る。
「竜です!竜がこちらに飛んで来ます!!」
列席者達から悲鳴が上がる。
「皆、落ち着け!結界を張る。ここは安全だ
マクドネル、状況を把握しろ」
陛下が立ち上がり指示をとばす。
マクドナネル卿が外へと駆け出す。
え?竜?
竜はほとんどグレン様が支配している。
勝手に王都には入っては来ないはず。
グレン様が参列していた黒竜、青竜、赤竜を
見る。
けれど黒竜達は首を振る。
一体、どこの竜よ。
まさかリョクじゃないよね?
「行くぞ?」
「はい!」
グレン様の声に短く返事をした。
バルド様、カーマイン卿。義兄様達に
実家の家族が立ち上がる。
「アシェンティ!お前達はこの場に残り、
列席者を守れ!」
グレン様が熊父達に指示する。
「承知!」
野太い声で父様が請け負う。
私達は外へ駆け出した。
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