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お揃い
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「次の花嫁の命も危ない事は最初から
分かっていた。
もう三人も死んでいる。
母と姉も入れれば五人だ。
だから結婚するのは嫌だった。
それなのに貴族議会の決定には逆らえず
結局、お前を娶る事になってしまった」
花嫁の命が危ないから結婚したくなかった
と言う事?
私の前の三人の王妃はどうなったのだろう。
それに母と姉?
「母君と姉君は…あなたに処刑されたのでは
ないのですか?巷ではそう噂されてますよ」
「とどめを刺したのは確かに俺だ。
母も姉も段々おかしくなっていった。
終いには完全に狂った。
気がついた時には、自分の腹を切り裂いて
内臓を引きずり出していた。
二人とも血まみれで笑っていたよ。
あれは助からない。
楽にしてやるしかできなかった」
「そんな事が……。もしかしたらそれは
赤い花のせいですか?」
「今から考えるとそうかもしれない。
当時は血筋による物狂いだと思われていた」
「血筋による物狂い?」
「ゴードルの王家は物狂いの家系だ。
昔から多くの狂人を生み出してきた。
事に女は狂い死にする事が多い。
近親婚の弊害だと言われていたが……。
だがこれらは悪夢の草が原因かもしれん。
知らないうちにロウソクから吸い込んだ
毒で頭をやられていてのかもな」
それってずっと長い間、王族が毒を
盛られ続けていたかもしれないの?
一体誰に?
「私の前のお妃様達は?」
「自殺が一人。暗殺が一人。事故が一人だ。
お前もすでに事故と暗殺未遂にあっている。
さらに警護を強化しないとな」
王の顔は暗い。
これは絶対に内部の者に犯人がいるわ。
頭の痛い。
「なんにしてもロウソクの事が分かった
のは幸いだった。これで女の狂死は
避けられる。
悪夢の草には解毒剤があるからな。
フェリシア、お手柄だ。
なぜロウソクの事が分かったんだ?」
ああ、人面瘡から教えてもらったとは
言えないわよね。
どうしよう。
「すみません。今はまだ話せません」
とりあえずの時間稼ぎをしておこう。
いつかは話せるかもしれないし、
駄目でも、もっともらしい理由を
思いつくかもしれない。
あ、でも拷問とかされてしまうのかしら。
「そうか……なるべく早く教えてくれると
助かる。それで……その。そのだな……」
あれ?簡単に許してくれたわ。
それになんだろう?
王が美しい顔を紅潮させて言い淀む。
今日のこの方は何だかいつもと違う。
いつもの冷たい表情ではなく
色々な表情をされる。
どうしたの?
「お前が正気を失って暴れている時に、
左足首の……アレを見てしまったのだが」
……左足首のアレというと人面瘡の事?
やだ。見られちゃったのね。
私以外には人の顔をした痣にしか見えない
はずたけれど、肌に気味の悪い痣があるのは
瑕疵になる。
どうしよう。離縁されてしまう?
賠償金をどうしよう。
冷たい汗が背中を伝う。
「お揃いだ」
「はい?」
今、なんて言ったの?お揃いと言った?
何がお揃いなの。
「人面瘡だろう?俺にもある」
「え!陛下にもあるのですか?」
お揃いって人面瘡の事なの。
ええ~?そんな事がある?
「あの、どのような人面瘡なのでしょう。
私の人面瘡はしゃべりますよ?」
「俺の人面瘡達もしゃべる」
「人面瘡達?」
なんで複数形なんですか?
おかしいでしょう。複数形。
いや、なんか怖い。
「初めて同じ境遇の人間に出会った」
王が頬を染めて言う。
まさかの事態。
人面瘡に親近感を持たれた!
嘘でしょう。
こんなモノに親近感を持たれても……。
それにこんなに美しい王のどこに
気味の悪い人面瘡が取り憑いているの?
思わず王を凝視する。
すると私の視線を感じたのか、おもむろに
王がシャツのボタンを外し始めた。
いや、別に見たくはないです!
どうしよう。
シャツを脱ぎ捨てると王は胸から腹に
かけてさらしを巻いていた。
それも取り始める。
次第に露になる王の裸体。
美しい。美しいけど!
その美しい体には似合わないグロテスクな
人面瘡が……。胸から腹に七つもある。
驚き過ぎて声がでない。
「どうだ。同じ人面瘡持ち同士だ。
仲良くしてくれると……うれしい」
照れながら言う王。
七つの人面瘡はやたら歯並びの良い口を
大きく開けて皆、笑っていた。
分かっていた。
もう三人も死んでいる。
母と姉も入れれば五人だ。
だから結婚するのは嫌だった。
それなのに貴族議会の決定には逆らえず
結局、お前を娶る事になってしまった」
花嫁の命が危ないから結婚したくなかった
と言う事?
私の前の三人の王妃はどうなったのだろう。
それに母と姉?
「母君と姉君は…あなたに処刑されたのでは
ないのですか?巷ではそう噂されてますよ」
「とどめを刺したのは確かに俺だ。
母も姉も段々おかしくなっていった。
終いには完全に狂った。
気がついた時には、自分の腹を切り裂いて
内臓を引きずり出していた。
二人とも血まみれで笑っていたよ。
あれは助からない。
楽にしてやるしかできなかった」
「そんな事が……。もしかしたらそれは
赤い花のせいですか?」
「今から考えるとそうかもしれない。
当時は血筋による物狂いだと思われていた」
「血筋による物狂い?」
「ゴードルの王家は物狂いの家系だ。
昔から多くの狂人を生み出してきた。
事に女は狂い死にする事が多い。
近親婚の弊害だと言われていたが……。
だがこれらは悪夢の草が原因かもしれん。
知らないうちにロウソクから吸い込んだ
毒で頭をやられていてのかもな」
それってずっと長い間、王族が毒を
盛られ続けていたかもしれないの?
一体誰に?
「私の前のお妃様達は?」
「自殺が一人。暗殺が一人。事故が一人だ。
お前もすでに事故と暗殺未遂にあっている。
さらに警護を強化しないとな」
王の顔は暗い。
これは絶対に内部の者に犯人がいるわ。
頭の痛い。
「なんにしてもロウソクの事が分かった
のは幸いだった。これで女の狂死は
避けられる。
悪夢の草には解毒剤があるからな。
フェリシア、お手柄だ。
なぜロウソクの事が分かったんだ?」
ああ、人面瘡から教えてもらったとは
言えないわよね。
どうしよう。
「すみません。今はまだ話せません」
とりあえずの時間稼ぎをしておこう。
いつかは話せるかもしれないし、
駄目でも、もっともらしい理由を
思いつくかもしれない。
あ、でも拷問とかされてしまうのかしら。
「そうか……なるべく早く教えてくれると
助かる。それで……その。そのだな……」
あれ?簡単に許してくれたわ。
それになんだろう?
王が美しい顔を紅潮させて言い淀む。
今日のこの方は何だかいつもと違う。
いつもの冷たい表情ではなく
色々な表情をされる。
どうしたの?
「お前が正気を失って暴れている時に、
左足首の……アレを見てしまったのだが」
……左足首のアレというと人面瘡の事?
やだ。見られちゃったのね。
私以外には人の顔をした痣にしか見えない
はずたけれど、肌に気味の悪い痣があるのは
瑕疵になる。
どうしよう。離縁されてしまう?
賠償金をどうしよう。
冷たい汗が背中を伝う。
「お揃いだ」
「はい?」
今、なんて言ったの?お揃いと言った?
何がお揃いなの。
「人面瘡だろう?俺にもある」
「え!陛下にもあるのですか?」
お揃いって人面瘡の事なの。
ええ~?そんな事がある?
「あの、どのような人面瘡なのでしょう。
私の人面瘡はしゃべりますよ?」
「俺の人面瘡達もしゃべる」
「人面瘡達?」
なんで複数形なんですか?
おかしいでしょう。複数形。
いや、なんか怖い。
「初めて同じ境遇の人間に出会った」
王が頬を染めて言う。
まさかの事態。
人面瘡に親近感を持たれた!
嘘でしょう。
こんなモノに親近感を持たれても……。
それにこんなに美しい王のどこに
気味の悪い人面瘡が取り憑いているの?
思わず王を凝視する。
すると私の視線を感じたのか、おもむろに
王がシャツのボタンを外し始めた。
いや、別に見たくはないです!
どうしよう。
シャツを脱ぎ捨てると王は胸から腹に
かけてさらしを巻いていた。
それも取り始める。
次第に露になる王の裸体。
美しい。美しいけど!
その美しい体には似合わないグロテスクな
人面瘡が……。胸から腹に七つもある。
驚き過ぎて声がでない。
「どうだ。同じ人面瘡持ち同士だ。
仲良くしてくれると……うれしい」
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七つの人面瘡はやたら歯並びの良い口を
大きく開けて皆、笑っていた。
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