婚前教育〜使用人たちに気が狂うまで愛されて、子作りの方法を教わらなければならないようです〜

こうしき

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一話 六之宮家の習わし

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 六之宮家には古くから伝わる習わしがあった。次期当主となる子が男児であれば使用人は皆、女。女児であれば皆、男。ある者は幼い頃から時を共に過ごさせ、あるものは難しい年頃の頃に召し抱えられる。
 そうして時期当主が二十歳になった翌日から行われる儀式があった。

「お前たち、わかっているとは思うが」

 夜も更け、二十一時。この家の現当主である六之宮茂が腰掛けるのは、革張りの大きな椅子。執務机に肘をつき、眉間の皺を深くしながら、前方に立つスーツ姿の三人の男達を見つめた。

「 史乃あやのも今日、二十歳を迎えた。ようやく、お前たちの真の役目が回ってきたということだ。私がそうであったように……史乃が良い婿を迎え、良い子を産むために、お前たち三人にはあの子を立派な……その……」
「旦那様、要はヤリまくれってことですよね?」
「 禄郎ろくろうっ!」

 禄郎と呼ばれた男は、日焼けした顔を歪ませながら、隣に立つ色白の男を睨み付けた。

「だって、旦那様ってばお顔が真っ赤ですよ。こういうことは俺が──」
「だからといって、旦那様の話の途中に割り込むのはいただけない」
「ジェイク、いいんだ。私の説明が下手なのが悪かった」

 茂は何度か深呼吸をすると、視線を机に落としながら再び口を開いた。

「史乃に……あの子が立派な子を沢山産めるように、正しい知識と、技術をしっかり叩き込んでやってくれ」
「はいっ!」
「はい」
「……はい」

 三人の声が重なると、茂は安心したのか額の汗をハンカチーフで拭った。

「悩んだんだが……  おさはジェイクに頼もうと思う」
「承知しました」
「旦那様!?」

 身を乗り出したのは禄郎であった。茂の決定が不満なのか、人差し指をジェイクに突きつけながら声を張り上げる。

「どうしてこんな……! どこの馬の骨ともわからない異人に!」
「ジェイクは我が家にも、史乃にも、良くしてくれているよ」
「そんなの、俺だって!」
「禄郎は、そうやってすぐに頭に血が上るのがいただけない」

 禄郎よりも大柄な男が、表情を崩さずに呟いた。壁のように大きな図体に禄郎も一瞬怯むが、負けじと下から睨み付ける。

「誠は黙ってろ! ジェイクなんかより……俺の方がお嬢と長いこと一緒にいるのに」
「お嬢様と過ごしている時の濃度であれば、僕のほうがきっと濃い」
「ジェイク、てめぇは喧嘩売ってんのか?」
「……その辺にしておきなさい、二人とも」

 茂が窘め、ようやく大人しくなった二人。二人の仲が悪いのはいつものことであったが、ここまで白熱するのは久方ぶりのことであった。

「お前たちが史乃のことを大切に思ってくれていることはわかった。しかし、あまり情をかけすぎるな、特に禄郎」
「ぅ……」
「お前たち三人が史乃に与える知識や経験は、婿殿との間で発揮されるのが目的なのだと忘れぬように。情をかけすぎると、あの子が結婚したときに辛いのはお前たちなのだから」

 茂の言葉に三人は顔を伏せる。
 
「……」

 無理もない。三人が三人とも、長年史乃に仕え、世話を焼いてきたのだ。史乃に抱く想いは互いに知っていた。知った上でこの儀式に挑み、史乃を一人前の当主に仕上げることが三人の使命なのだ。
 しかし自分たちが女に仕上げた彼女を、新たに迎え入れる婿に奪われることが苦痛で仕方がないのだ。

 この六乃宮家に古くから伝わる習わし──それは次期当主に仕える使用人三人が、その身を捧げて手取り足取り、跡継ぎの作り方を教えるというものだった。

「申し訳ありません……」
「わかればよい。夜分に悪かったな。さあ、明日は忙しい日になる、もう下っていいぞ」

 各々の部屋に足を進める男達。明日は大事な日だ──三人が三人、気合を入れながら床につく。

 一方の史乃はといえば、こんなことが起きているとは露知らず。布団を蹴り飛ばしては寝返りをうち、熟睡したまま朝を迎え、寝坊をすることとなるのであった。

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