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第一章 destinyー運命ー
第一話 ネス・カートス十六歳
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四月三十日。ネス・カートスは十六歳になった。
幼い頃から同年の友人達よりも多少背が低いことが悩みであった。その事で周りに馬鹿にされたという過去があり、それが嫌で当時は自分から笑いの種にしていた。
言葉で馬鹿にしてくる奴等を論破するために知力を身につけ、暴力で馬鹿にしてくる奴等に対抗するために、筋力と体力を身につけた。
あくまでも保身のためであったが、色々な意味で取っ付きにくくなったネスのことを馬鹿にする奴等は、時間の経過と共に減ってゆき、十六歳となった今では誰も身長のことをからかわなくなった。
そんな十六歳の誕生日パーティーの帰り道だった。
「──ネス・カートス」
名前を呼ばれネスは振り向いた。夕暮れ時の海岸道に一人の女性が立っている。彼女は昨日、この村にやって来た女戦士だ。
夕日に照らされる彼女の顔は、アグリー退治をした夜の祝賀会で一度見たきりだったが、凛として美しく、ネスが短い生涯で見てきた女性の中で、一番の美人であることに間違いなかった。
「誕生日おめでとう。さて……十六歳になった君は、これから世界中のあらゆるものに命を狙われることになるのだけれど、どうする? あたしと共に来るのならこの命にかけて君を守る」
「……はい?」
わけが分からず、ネスはすっとんきょうな声を上げる。そんなことはお構い無しに、長い髪を妖艶にかきあげながら女戦士は続ける。
「言っておくけれど君に拒否権はないから。明日の朝出発する。それまでに準備をしておくように」
「ちょ、ちょっと待って下さい、いきなり……なんですか、あなた」
胸の下で腕を組んだ女戦士の眉間に、深く皺が刻まれていく。ネスが言葉を紡げば紡ぐほど、彼女は不機嫌になっているようだった。先程から右目の下がピクピクと小刻みに動いているが、ネスもそんなことに気が付くほど、冷静ではなかったのだ。
「命を狙われる? わけがわからない。突然出てきて何を言っているんですか、あなたは……大体……」
「ハァ……説明、面倒なのよ。とりあえず一緒に来なさい、道中説明するから」
女戦士はネスの腕を掴み、強引に引っ張る。つんのめって転びそうになるも、どうにか踏み止まることができた。
「いやいやいやいや! え、何? 同一人物ですよね?」
「当たり前でしょ? 何言ってんの?」
「すみませんちょっと……展開が早すぎて、理解が追いつかないんですが」
彼女は呆れたように溜め息をつくと、ネスの腕を離した。
「とりあえず、こっちが本性だから」
「いや、そうじゃなくて」
「あ゙?」
「…………えっと」
(この人、もしかして性格悪いのか?)
「とりあえずこんな道端じゃ目立つし、あんたの家に行って話しましょ」
(あんたがこんな道端で呼び止めたんだろうが……)
口に出すと睨まれかねないので、ネスは出かかった言葉を口の中に押し込んだ。
と、刹那────
パキパキとガラスの砕ける音が二人の耳に届く。ネスが顔を上げると、頭上で控え目に光を放つ街灯のガラスが砕け散っていた。
「なっ──!」
そのガラス片は意思でも持っているのか、一斉に同じ方向を向くと──
「危ないっ!」
女戦士目がけて、物凄いスピードで飛んできたのだ。
幼い頃から同年の友人達よりも多少背が低いことが悩みであった。その事で周りに馬鹿にされたという過去があり、それが嫌で当時は自分から笑いの種にしていた。
言葉で馬鹿にしてくる奴等を論破するために知力を身につけ、暴力で馬鹿にしてくる奴等に対抗するために、筋力と体力を身につけた。
あくまでも保身のためであったが、色々な意味で取っ付きにくくなったネスのことを馬鹿にする奴等は、時間の経過と共に減ってゆき、十六歳となった今では誰も身長のことをからかわなくなった。
そんな十六歳の誕生日パーティーの帰り道だった。
「──ネス・カートス」
名前を呼ばれネスは振り向いた。夕暮れ時の海岸道に一人の女性が立っている。彼女は昨日、この村にやって来た女戦士だ。
夕日に照らされる彼女の顔は、アグリー退治をした夜の祝賀会で一度見たきりだったが、凛として美しく、ネスが短い生涯で見てきた女性の中で、一番の美人であることに間違いなかった。
「誕生日おめでとう。さて……十六歳になった君は、これから世界中のあらゆるものに命を狙われることになるのだけれど、どうする? あたしと共に来るのならこの命にかけて君を守る」
「……はい?」
わけが分からず、ネスはすっとんきょうな声を上げる。そんなことはお構い無しに、長い髪を妖艶にかきあげながら女戦士は続ける。
「言っておくけれど君に拒否権はないから。明日の朝出発する。それまでに準備をしておくように」
「ちょ、ちょっと待って下さい、いきなり……なんですか、あなた」
胸の下で腕を組んだ女戦士の眉間に、深く皺が刻まれていく。ネスが言葉を紡げば紡ぐほど、彼女は不機嫌になっているようだった。先程から右目の下がピクピクと小刻みに動いているが、ネスもそんなことに気が付くほど、冷静ではなかったのだ。
「命を狙われる? わけがわからない。突然出てきて何を言っているんですか、あなたは……大体……」
「ハァ……説明、面倒なのよ。とりあえず一緒に来なさい、道中説明するから」
女戦士はネスの腕を掴み、強引に引っ張る。つんのめって転びそうになるも、どうにか踏み止まることができた。
「いやいやいやいや! え、何? 同一人物ですよね?」
「当たり前でしょ? 何言ってんの?」
「すみませんちょっと……展開が早すぎて、理解が追いつかないんですが」
彼女は呆れたように溜め息をつくと、ネスの腕を離した。
「とりあえず、こっちが本性だから」
「いや、そうじゃなくて」
「あ゙?」
「…………えっと」
(この人、もしかして性格悪いのか?)
「とりあえずこんな道端じゃ目立つし、あんたの家に行って話しましょ」
(あんたがこんな道端で呼び止めたんだろうが……)
口に出すと睨まれかねないので、ネスは出かかった言葉を口の中に押し込んだ。
と、刹那────
パキパキとガラスの砕ける音が二人の耳に届く。ネスが顔を上げると、頭上で控え目に光を放つ街灯のガラスが砕け散っていた。
「なっ──!」
そのガラス片は意思でも持っているのか、一斉に同じ方向を向くと──
「危ないっ!」
女戦士目がけて、物凄いスピードで飛んできたのだ。
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