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第三章 collapseー崩壊ー
第五十五話 アンナの願い
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ミカエルは予めベッドの横に用意しておいた丸椅子に座る。サングラスを外し、ベッド脇の小さなテーブルの上にそれを置いた。
「酷いもんだね」
柔らかな黄金色の光に包まれたミカエルの両手が、アンナの体にそっと近づく。光の触れた部分の傷は、徐々に彼女本来の肌の色を取り戻していく。
傷を治癒するエルフ特有の力──
体の半分にエルフの血が流れているティリスに、この力は備わっていない。大昔、エルフからティリスが派生する過程で、彼等の中からこの力は少しずつ消え去っていった。それと引き換えにティリス達は、エルフ以上の体力と筋力を得た──と言われている。
エリックのように片親がエルフで、エルフの血が濃いティリスの場合、この治癒能力が備わっていることが多いが、流石にその能力は純血のエルフに届くものではない。
もう一つのティリスの特性として、人間やエルフと比べると傷の回復が早く、血気盛んな者が多いというものがある。そのせいかどうかは定かではないが、騎士団や軍には荒くれ者のティリスが多い。
「とりあえず今日は七割ほど進めて、明日仕上げをするから」
「いつもすまないわね」
「愛する君の為だもの。お安い御用さ」
(──愛する、ね)
男はみんな簡単にそういう台詞を吐く。こいつも、あいつも、あいつも、あいつも。
「君のことは心の底から愛しているけれど、君のためなら死ねるっていう彼等には敵わないからなあ。俺は、君のために死ねないし」
「彼等?」
「エリック・ローランド、シナブル・グランヴィ、ルヴィス・グランヴィ、それにレンブランティウス・ F・グランヴィ」
「どうしてそこに兄上が入るのよ」
ミカエルは時々、本当にわけのわからないことを言う。そんなミカエルをアンナは睨みつけた。いつもならここで、ヘラっと笑って見せるが、仕事モードの彼はそういうことはしない。
胸回りの傷が癒え、腰から腹にかけての治療にはいる。
「……? あれ、アンナ」
ミカエルはアンナの臍回りの傷を治療しながら言う。
「相手は誰かな」
「エリック以外にいると思うの?」
「シナブル・グランヴィってことも有り得るだろ? 事実、君は昔自分の父に、シナブル・グランヴィとの間に子を成せと言われたこともあるしね……というか、煙草ごめんね、気が付かなくて」
ミカエルの謝罪に、アンナは小さく首を横に振る。そして、彼の言葉に驚きを隠せないアンナは、何と言葉を返そうか、迷う。
──迷う。
ミカエルの言葉は事実ではあった。自分が生まれた時から仕えてくれている、三十歳年上(人間の年齢で考えると五歳年上)の従兄であるシナブル・グランヴィ。彼の父コラーユは、ファイアランス王国、現国王である自分の父エドヴァルド二世の実弟だ。
親子揃って非常に優秀。シナブルの他にあの時生き残った兄ルヴィスも、言うまでもなく優秀である。
あの頃のアンナは、エリックに心も体も許してはいたが──多忙な彼はあの頃、殆ど国に居なかった。
人を殺し過ぎたことで罹る命を奪う病、 血眼病。その流行がピークに達していたあの頃、余命僅かと自覚した父エドヴァルド二世は──国の今後を案じた父は、確かにそう言った。
「シナブルとの間に子を成せ」と。
自分が死んだら、後継ぎがいなかったのだから仕方がない。
作る相手もその場に居なかったのだから仕方がない。
仕方がない、という言葉で済まされるか、済ませていいのか、わからないことではあったのだが──
「……あんたは一体どこまで知っているのよ」
迷ったあげく、アンナの口から出た言葉が、静寂を破った。
「俺は特別耳がいいからね。偶然ファイアランスにいて、偶然王城の近くにいて、偶然それが聞こえたってだけのことさ」
果たしてそんな偶然があるのか。
「ふふ、口止め料、払う?」
子供のように無邪気に笑いながらも、ミカエルは手を休めることなく言った。
この事実は、本当に一部の者しか知らない。知られてはならない。
──一番知られたくない人には、既に知られているのだけれど。
はぁ、と、本当に大きな溜め息をついたアンナは「いくらよ」と言ってミカエルを睨む。彼は右手の人差し指を一本だけ立てた。
そう、右手。
その指をアンナは黙って睨んだ。
「計算をしようか」
ミカエルが支払の話を持ち出すのは、治療が終盤に差し掛かったことを意味している。
少しだけ首を浮かせて、アンナが自分の体を見ると、あれだけ酷かった傷は、多少の擦り傷を残して殆ど癒えていた。上半身を起こして胸を張ってみる。内蔵や骨の損傷は完璧に回復していた。
「流石ね。ありがとう」
最大限の賛辞を受け取ったミカエルは、アンナの腰に腕を回して、彼女の左手の甲に軽く口づけをする。
傍に置いてあったガウンをアンナの肩にかけてやると、彼女はゆっくりと袖を通した。ミカエルは彼女のその動作が堪らなく好きだった。
「ミカエル?」
しなやかに伸びるその腕を見ると、指の先まで舐めまわしたくなる──衝動を──抑えようと──ミカエルは唾を飲み込む。
腕だけではない。その足先にも、太股にも、臍にも、胸にも、首筋にも、耳にも──唇を押しあてて、お互いがとろけ合うまで身を絡ませて──
「ちょっと、聞いているの?」
──そう、今日分の仕事は終わったのだ。そしてこの場の主導権は自分にある。
「……ミカエル?」
ガウンの腰紐を結び終えたアンナが、ミカエルの瞳を訝しげに覗き込む。
「ああ、ごめんごめん」と言ってミカエルは右指を四本立てた。「これでどう?」
「……多くない?」
「怪我の治療分、無名の情報分、口止め料、そして『それ』をどうしたらいいのか、という情報」
ミカエルの視線は、不満げにへの字に結ばれたアンナの唇から、その腹へと移る。
「今後の激しい戦いに、『それ』は不便でしかないだろう? いくら君が強いといっても、 身重の状態で全力を出せるとは、到底思えないよ。下手をしたら二人とも死ぬけど、いいの?」
「いいわけ、ないでしょ」
グランヴィ家は自分の代で終わらせたい。それがアンナの願いであった。十六年前の四月三十日。生まれたばかりのネスをこの手で抱いたとき、自分の中に「何か」が芽生えた。
命の大切さを知ってしまったあの日、芽生えた感情──
その感情は、自分の中の新たな命──それを認識した時、確信へと変わった。
苦しい思いなんて、数えきれないくらいしてきた。痛い思いなんて、どれくらいあったか覚えていない。
我が子に、自分と同じ道を辿らせたくない。
ハクラから事実を突き付けられたあの夜からずっと、考えていた。このままでいいのかと。
苦しい思いも、痛い思いも自分の子にさせたいわけがない。誰だって、きっとそうだ。
自分には自覚が全く足りなかった。自分が人の親になるだなんて、考えたこともなかった。跡継ぎとして、次期国王として、考えなければならないということは分かっていた。けれどずっと──自分はそれから逃げていた。触れないようにしてきた。面倒なことは嫌いだった。目先のことを考えるのが疎ましかった。
(──母上は、どんな思いだったのだろう)
アンナの母ネヴィアス・F・グランヴィ。
ファイアランス王国の生まれではなかったからなのだろうか。鬼のような父エドヴァルドや祖母アリアとはまるで正反対に優しい母。
その昔、父エドヴァルドは国土拡大の足掛けの為、遠国に単独で攻め行った。そこで出会ったのがその国の姫、ネヴィアスだった。母の美貌に目の眩んだ父は、国を滅ぼさない代わりに、ネヴィアスを妃として迎え入れたいと言ったそうだ。
そんな経緯がありながらも、母は父に、国に良く尽くしている。それは娘のアンナから見ても理解できていた。
そんな優しく献身的な母は、息子や娘たちが傷付く姿を見て、何を思っていたのだろう。
四肢の一部が吹き飛んだこと──片目が潰れたこと──腹を裂かれたこと──幾度となく子供達の傷付く姿を見ていた母。
そして『あの時』、二人の子供を殺された母。
自身の息子によって殺された二人の子。
(あたしには、無理だ──)
「え……」
目が熱い。頬が火照る。
涙だった。アンナは、泣いていた。母の悲痛な胸の内を想像したことにより、涙を流していた。
(なんて駄目な殺し屋──)
その涙を拭うことが、止めることが出来ない。思考が止まらないのだ。母は、どれだけ、どれだけ辛かったことだろう──
「母体転移、という術がある」
ミカエルの一言が、アンナの思考を止めた。彼は、意図的に止めてくれたのかもしれない。
ミカエルは続ける。
「ごく一部の魔法使いのみ使える、希少な魔法だ。使用者が少なすぎて、禁術指定はされていないけれど」
「どういう魔法なの」
アンナの頬にミカエルの指が伸びる。それによってアンナの涙は塞き止められた。
男性にしては色白で、柔らかく形の良い指。女性かと見紛う程綺麗な手だ。見とれるほど美しいがしかし、アンナが一番好きなのは、愛する 彼の手だ。健康的に程よく日焼けした、力強く大きな手のひら。そこから伸びるほっそりと長い指。溢れ落ちる全てを、絡めとって受け止めてくれる、愛しいあの人の手──
「胎児を母体から、他の体に移す魔法さ。母体と血縁関係が近くなければ使用できないんだけど……母親とか、姉妹とかね」
言い終えて伸びてきた、ミカエルの反対側の手を軽く払いのけるも、彼はアンナの頬に触れることを諦めない。両手でアンナの頬を包み込み、そして──
「──ちょ、──や──はっ……ん──」
直後、アンナの左目の端に飛び込んできたのは、乳白色の枕、それに同色のヘッドボード。真正面にはミカエルの顔。
「────んっ……ミカ……エ……ル」
涙を塞き止めた柔らかく形の良い指は、アンナの左手首を完全に封じていた。右手はミカエルの肘によって固定されている。彼の自由に動く前腕から先は、アンナの体に触れていた。
(──唇が──熱い)
アンバーホワイトの光沢のあるシーツ。二人の体とシーツの擦れ合う音が、静かに、少しずつ大きくなっていく。
(──舌が────)
ミカエルのこれから逃れる方法は一つしかない。アンナは身をもってそれを知っていた。
唇には唇で返す。それしかないのだと。
「っは……ハァッ……ハァ…………ばか」
酸素を求めて、激しく上下するアンナの胸。まだ息が苦しいのか、彼女は身を起こすとヘッドボードに背中を預けた。自然とミカエルとの距離が離れる。
「ごめん、我慢できなかった」
悪びれた様子もなく、ミカエルは言う。本当に悪びれた様子がない。距離を詰めてきた彼は、アンナの腰の上に跨がっている。
「減額」
アンナは右指を四本立てた。そしてその数字を、小指を折って三の数字に変える。
「えー」
「えー、じゃないわよ。話を進めてよ」
ミカエルがアンナを押し倒したのは、アンナの涙を止めるため、彼女のことを思ってのことだったが、誰もここまでしろとは言っていない。
「しょうがないな……」
やっとのことでアンナから下りたミカエルは、ベッド脇の丸椅子に座り直した。
「この術を使える奴で、君の顔見知り。それは二人しかいないよ」
アンナは黙ってミカエルの言葉を待つ。
「ベルリナ・ベルフラワー。それにレフ・バースレイン」
「う」
聞きたくない名前が二つ並んだ。
二人とも苦手な、いや、自分に対して嫌悪感を向けている魔法使いだった──特に後者。
ベルリナ・ベルフラワー。第二騎士団団長にして、騎士団の総団長。魔法使い特有の 白髪に、吸い込まれるような深い色の 碧眼。人懐っこい普段の態度とは裏腹に、任務においては非情で冷徹。実力で総団長の座に登り詰めた、恐ろしい魔法使い。
十一年前の騎士団壊滅事件。アンナが結果的に最後に襲撃したのはこのベルリナの務める第二騎士団の本部だった。ある一人──当時第二騎士団員だったアイザック・アスターを除いて、アンナは全ての団員を殺し、最後にベルリナと対峙した。
『ま……参りました……』
あの時ベルリナは言った。尻餅をついたままの態勢で右手を差し出し、彼女は降伏を求めたが、アンナは 黒椿の切っ先をベルリナの喉元に突きつけたまま動かなかった。
『許さない──全員殺す』
とどめを刺そうとした瞬間、父エドヴァルドから通信が入った──『やめろ』と。何故、と問うことは許されない。『はい』と短く返事をし、そこで全てが終わった──かのように思われた。
ベルリナが差し出した右手を、仕方無くアンナは掴んだ。立たせてやろうと、ぐい、と腕に力を入れた瞬間──彼女に押し倒された。
『私、あなたに惚れちゃいました。アンナ・F・グランヴィさん』
あの時ベルリナがアンナにかけた魔法。それは「今後十二年間、身体的に術者に逆らうことが出来ない」というものだった。押し倒されれば抵抗することは出来ないし、体を撫で回されても、払い除けることは出来ない。
(あの時、エディンがいてくれなかったら──本当にまずかった)
「アンナ、すごい顔になっているよ」
ミカエルがアンナの顔を覗き込みながら、面白そうに言った。
「苦手な奴の名前を二人も出されたら、そりゃ嫌な気分にもなるわよ」
「特にレフ・バースレイン?」
「うう……」
レフ・バースレイン。
アンナが初めて彼に会ったのは、二十二年前の第一次アブヤドゥ・ブンニー戦争だった。
シムノン・カートスの仲間の一人として有名な大魔法使い。くしゃりとした帽子から覗く白髪に、金色と青色のオッドアイを初めて見たとき、柄にもなく背筋が冷えたのをよく覚えている。
『去れ。この人殺しが』
レフは三年後の第二次アブヤドゥ・ブンニー戦争で顔を合わせ、別れるまでずっと、アンナのことを「人殺し」としか呼ばなかった。
レフは殺し屋という存在を、忌み嫌っているようだった。殺し屋を好む奴なんてそうそういないし、彼の態度は正常だったが──異常寄りの正常だった。
嫌悪という言葉より、憎悪という言葉の方が相応しい、そんな態度だった。彼がアンナを睨む度、『まーまーお二人さん、仲良くやれよ』と、よくシムノンが仲裁に入ったものだった。
レフにはもう二度と会いたくない。アンナがそう思うよりも、レフのほうが強く思っているに違いなかった。
「ベルか……嫌だな」
正直、ベルリナにも会いたくはない。ノルの町で啖呵を切り、ブエノレスパの儀式の場でも、散々嫌がらせを仕掛けてきた彼女。
「なんで? ベルリナは君のこと大好きなのに」
「それって本当なの?」
ミルスラ・ミントも先程同じことを言っていた。今までのベルリナの態度からすると、アンナにそれを信じることは難しかった。
「彼女は君のファンクラブの会長だよ?」
「ファン……クラブ?」
なんだそれは。初めて聞いた、という顔をするアンナ。
「アンナ・F・グランヴィを盛り上げる会会長、ベルリナ・ベルフラワー」
有名だよ? と首を傾げるミカエル。
「活動内容とか興味ある?」
「全くないわ」
「即答だなー。あ、そうだアンナ」
丸椅子から腰を浮かせ、前のめりになったミカエルは、アンナに顔を寄せながら言う。「支払い、先払いでよろしく。明日、治療が終わって逃げられても困るしね」
「──わかったわよ」
今になってアンナは、乱れたガウンの胸元を正す。自分で見て驚いた。胸が半分──いや、半分以上露わになっていた。露わにした犯人は目の前のこいつだ。
ベッドの右側にある窓の外を見る。塗装された木製の窓枠の間の硝子の向こうに、白い鳥の群れが列を成して飛んで行く。その全てが視界の外に消えるのを待って、アンナは枕と同色のカーテンを勢いよく引いた。
「酷いもんだね」
柔らかな黄金色の光に包まれたミカエルの両手が、アンナの体にそっと近づく。光の触れた部分の傷は、徐々に彼女本来の肌の色を取り戻していく。
傷を治癒するエルフ特有の力──
体の半分にエルフの血が流れているティリスに、この力は備わっていない。大昔、エルフからティリスが派生する過程で、彼等の中からこの力は少しずつ消え去っていった。それと引き換えにティリス達は、エルフ以上の体力と筋力を得た──と言われている。
エリックのように片親がエルフで、エルフの血が濃いティリスの場合、この治癒能力が備わっていることが多いが、流石にその能力は純血のエルフに届くものではない。
もう一つのティリスの特性として、人間やエルフと比べると傷の回復が早く、血気盛んな者が多いというものがある。そのせいかどうかは定かではないが、騎士団や軍には荒くれ者のティリスが多い。
「とりあえず今日は七割ほど進めて、明日仕上げをするから」
「いつもすまないわね」
「愛する君の為だもの。お安い御用さ」
(──愛する、ね)
男はみんな簡単にそういう台詞を吐く。こいつも、あいつも、あいつも、あいつも。
「君のことは心の底から愛しているけれど、君のためなら死ねるっていう彼等には敵わないからなあ。俺は、君のために死ねないし」
「彼等?」
「エリック・ローランド、シナブル・グランヴィ、ルヴィス・グランヴィ、それにレンブランティウス・ F・グランヴィ」
「どうしてそこに兄上が入るのよ」
ミカエルは時々、本当にわけのわからないことを言う。そんなミカエルをアンナは睨みつけた。いつもならここで、ヘラっと笑って見せるが、仕事モードの彼はそういうことはしない。
胸回りの傷が癒え、腰から腹にかけての治療にはいる。
「……? あれ、アンナ」
ミカエルはアンナの臍回りの傷を治療しながら言う。
「相手は誰かな」
「エリック以外にいると思うの?」
「シナブル・グランヴィってことも有り得るだろ? 事実、君は昔自分の父に、シナブル・グランヴィとの間に子を成せと言われたこともあるしね……というか、煙草ごめんね、気が付かなくて」
ミカエルの謝罪に、アンナは小さく首を横に振る。そして、彼の言葉に驚きを隠せないアンナは、何と言葉を返そうか、迷う。
──迷う。
ミカエルの言葉は事実ではあった。自分が生まれた時から仕えてくれている、三十歳年上(人間の年齢で考えると五歳年上)の従兄であるシナブル・グランヴィ。彼の父コラーユは、ファイアランス王国、現国王である自分の父エドヴァルド二世の実弟だ。
親子揃って非常に優秀。シナブルの他にあの時生き残った兄ルヴィスも、言うまでもなく優秀である。
あの頃のアンナは、エリックに心も体も許してはいたが──多忙な彼はあの頃、殆ど国に居なかった。
人を殺し過ぎたことで罹る命を奪う病、 血眼病。その流行がピークに達していたあの頃、余命僅かと自覚した父エドヴァルド二世は──国の今後を案じた父は、確かにそう言った。
「シナブルとの間に子を成せ」と。
自分が死んだら、後継ぎがいなかったのだから仕方がない。
作る相手もその場に居なかったのだから仕方がない。
仕方がない、という言葉で済まされるか、済ませていいのか、わからないことではあったのだが──
「……あんたは一体どこまで知っているのよ」
迷ったあげく、アンナの口から出た言葉が、静寂を破った。
「俺は特別耳がいいからね。偶然ファイアランスにいて、偶然王城の近くにいて、偶然それが聞こえたってだけのことさ」
果たしてそんな偶然があるのか。
「ふふ、口止め料、払う?」
子供のように無邪気に笑いながらも、ミカエルは手を休めることなく言った。
この事実は、本当に一部の者しか知らない。知られてはならない。
──一番知られたくない人には、既に知られているのだけれど。
はぁ、と、本当に大きな溜め息をついたアンナは「いくらよ」と言ってミカエルを睨む。彼は右手の人差し指を一本だけ立てた。
そう、右手。
その指をアンナは黙って睨んだ。
「計算をしようか」
ミカエルが支払の話を持ち出すのは、治療が終盤に差し掛かったことを意味している。
少しだけ首を浮かせて、アンナが自分の体を見ると、あれだけ酷かった傷は、多少の擦り傷を残して殆ど癒えていた。上半身を起こして胸を張ってみる。内蔵や骨の損傷は完璧に回復していた。
「流石ね。ありがとう」
最大限の賛辞を受け取ったミカエルは、アンナの腰に腕を回して、彼女の左手の甲に軽く口づけをする。
傍に置いてあったガウンをアンナの肩にかけてやると、彼女はゆっくりと袖を通した。ミカエルは彼女のその動作が堪らなく好きだった。
「ミカエル?」
しなやかに伸びるその腕を見ると、指の先まで舐めまわしたくなる──衝動を──抑えようと──ミカエルは唾を飲み込む。
腕だけではない。その足先にも、太股にも、臍にも、胸にも、首筋にも、耳にも──唇を押しあてて、お互いがとろけ合うまで身を絡ませて──
「ちょっと、聞いているの?」
──そう、今日分の仕事は終わったのだ。そしてこの場の主導権は自分にある。
「……ミカエル?」
ガウンの腰紐を結び終えたアンナが、ミカエルの瞳を訝しげに覗き込む。
「ああ、ごめんごめん」と言ってミカエルは右指を四本立てた。「これでどう?」
「……多くない?」
「怪我の治療分、無名の情報分、口止め料、そして『それ』をどうしたらいいのか、という情報」
ミカエルの視線は、不満げにへの字に結ばれたアンナの唇から、その腹へと移る。
「今後の激しい戦いに、『それ』は不便でしかないだろう? いくら君が強いといっても、 身重の状態で全力を出せるとは、到底思えないよ。下手をしたら二人とも死ぬけど、いいの?」
「いいわけ、ないでしょ」
グランヴィ家は自分の代で終わらせたい。それがアンナの願いであった。十六年前の四月三十日。生まれたばかりのネスをこの手で抱いたとき、自分の中に「何か」が芽生えた。
命の大切さを知ってしまったあの日、芽生えた感情──
その感情は、自分の中の新たな命──それを認識した時、確信へと変わった。
苦しい思いなんて、数えきれないくらいしてきた。痛い思いなんて、どれくらいあったか覚えていない。
我が子に、自分と同じ道を辿らせたくない。
ハクラから事実を突き付けられたあの夜からずっと、考えていた。このままでいいのかと。
苦しい思いも、痛い思いも自分の子にさせたいわけがない。誰だって、きっとそうだ。
自分には自覚が全く足りなかった。自分が人の親になるだなんて、考えたこともなかった。跡継ぎとして、次期国王として、考えなければならないということは分かっていた。けれどずっと──自分はそれから逃げていた。触れないようにしてきた。面倒なことは嫌いだった。目先のことを考えるのが疎ましかった。
(──母上は、どんな思いだったのだろう)
アンナの母ネヴィアス・F・グランヴィ。
ファイアランス王国の生まれではなかったからなのだろうか。鬼のような父エドヴァルドや祖母アリアとはまるで正反対に優しい母。
その昔、父エドヴァルドは国土拡大の足掛けの為、遠国に単独で攻め行った。そこで出会ったのがその国の姫、ネヴィアスだった。母の美貌に目の眩んだ父は、国を滅ぼさない代わりに、ネヴィアスを妃として迎え入れたいと言ったそうだ。
そんな経緯がありながらも、母は父に、国に良く尽くしている。それは娘のアンナから見ても理解できていた。
そんな優しく献身的な母は、息子や娘たちが傷付く姿を見て、何を思っていたのだろう。
四肢の一部が吹き飛んだこと──片目が潰れたこと──腹を裂かれたこと──幾度となく子供達の傷付く姿を見ていた母。
そして『あの時』、二人の子供を殺された母。
自身の息子によって殺された二人の子。
(あたしには、無理だ──)
「え……」
目が熱い。頬が火照る。
涙だった。アンナは、泣いていた。母の悲痛な胸の内を想像したことにより、涙を流していた。
(なんて駄目な殺し屋──)
その涙を拭うことが、止めることが出来ない。思考が止まらないのだ。母は、どれだけ、どれだけ辛かったことだろう──
「母体転移、という術がある」
ミカエルの一言が、アンナの思考を止めた。彼は、意図的に止めてくれたのかもしれない。
ミカエルは続ける。
「ごく一部の魔法使いのみ使える、希少な魔法だ。使用者が少なすぎて、禁術指定はされていないけれど」
「どういう魔法なの」
アンナの頬にミカエルの指が伸びる。それによってアンナの涙は塞き止められた。
男性にしては色白で、柔らかく形の良い指。女性かと見紛う程綺麗な手だ。見とれるほど美しいがしかし、アンナが一番好きなのは、愛する 彼の手だ。健康的に程よく日焼けした、力強く大きな手のひら。そこから伸びるほっそりと長い指。溢れ落ちる全てを、絡めとって受け止めてくれる、愛しいあの人の手──
「胎児を母体から、他の体に移す魔法さ。母体と血縁関係が近くなければ使用できないんだけど……母親とか、姉妹とかね」
言い終えて伸びてきた、ミカエルの反対側の手を軽く払いのけるも、彼はアンナの頬に触れることを諦めない。両手でアンナの頬を包み込み、そして──
「──ちょ、──や──はっ……ん──」
直後、アンナの左目の端に飛び込んできたのは、乳白色の枕、それに同色のヘッドボード。真正面にはミカエルの顔。
「────んっ……ミカ……エ……ル」
涙を塞き止めた柔らかく形の良い指は、アンナの左手首を完全に封じていた。右手はミカエルの肘によって固定されている。彼の自由に動く前腕から先は、アンナの体に触れていた。
(──唇が──熱い)
アンバーホワイトの光沢のあるシーツ。二人の体とシーツの擦れ合う音が、静かに、少しずつ大きくなっていく。
(──舌が────)
ミカエルのこれから逃れる方法は一つしかない。アンナは身をもってそれを知っていた。
唇には唇で返す。それしかないのだと。
「っは……ハァッ……ハァ…………ばか」
酸素を求めて、激しく上下するアンナの胸。まだ息が苦しいのか、彼女は身を起こすとヘッドボードに背中を預けた。自然とミカエルとの距離が離れる。
「ごめん、我慢できなかった」
悪びれた様子もなく、ミカエルは言う。本当に悪びれた様子がない。距離を詰めてきた彼は、アンナの腰の上に跨がっている。
「減額」
アンナは右指を四本立てた。そしてその数字を、小指を折って三の数字に変える。
「えー」
「えー、じゃないわよ。話を進めてよ」
ミカエルがアンナを押し倒したのは、アンナの涙を止めるため、彼女のことを思ってのことだったが、誰もここまでしろとは言っていない。
「しょうがないな……」
やっとのことでアンナから下りたミカエルは、ベッド脇の丸椅子に座り直した。
「この術を使える奴で、君の顔見知り。それは二人しかいないよ」
アンナは黙ってミカエルの言葉を待つ。
「ベルリナ・ベルフラワー。それにレフ・バースレイン」
「う」
聞きたくない名前が二つ並んだ。
二人とも苦手な、いや、自分に対して嫌悪感を向けている魔法使いだった──特に後者。
ベルリナ・ベルフラワー。第二騎士団団長にして、騎士団の総団長。魔法使い特有の 白髪に、吸い込まれるような深い色の 碧眼。人懐っこい普段の態度とは裏腹に、任務においては非情で冷徹。実力で総団長の座に登り詰めた、恐ろしい魔法使い。
十一年前の騎士団壊滅事件。アンナが結果的に最後に襲撃したのはこのベルリナの務める第二騎士団の本部だった。ある一人──当時第二騎士団員だったアイザック・アスターを除いて、アンナは全ての団員を殺し、最後にベルリナと対峙した。
『ま……参りました……』
あの時ベルリナは言った。尻餅をついたままの態勢で右手を差し出し、彼女は降伏を求めたが、アンナは 黒椿の切っ先をベルリナの喉元に突きつけたまま動かなかった。
『許さない──全員殺す』
とどめを刺そうとした瞬間、父エドヴァルドから通信が入った──『やめろ』と。何故、と問うことは許されない。『はい』と短く返事をし、そこで全てが終わった──かのように思われた。
ベルリナが差し出した右手を、仕方無くアンナは掴んだ。立たせてやろうと、ぐい、と腕に力を入れた瞬間──彼女に押し倒された。
『私、あなたに惚れちゃいました。アンナ・F・グランヴィさん』
あの時ベルリナがアンナにかけた魔法。それは「今後十二年間、身体的に術者に逆らうことが出来ない」というものだった。押し倒されれば抵抗することは出来ないし、体を撫で回されても、払い除けることは出来ない。
(あの時、エディンがいてくれなかったら──本当にまずかった)
「アンナ、すごい顔になっているよ」
ミカエルがアンナの顔を覗き込みながら、面白そうに言った。
「苦手な奴の名前を二人も出されたら、そりゃ嫌な気分にもなるわよ」
「特にレフ・バースレイン?」
「うう……」
レフ・バースレイン。
アンナが初めて彼に会ったのは、二十二年前の第一次アブヤドゥ・ブンニー戦争だった。
シムノン・カートスの仲間の一人として有名な大魔法使い。くしゃりとした帽子から覗く白髪に、金色と青色のオッドアイを初めて見たとき、柄にもなく背筋が冷えたのをよく覚えている。
『去れ。この人殺しが』
レフは三年後の第二次アブヤドゥ・ブンニー戦争で顔を合わせ、別れるまでずっと、アンナのことを「人殺し」としか呼ばなかった。
レフは殺し屋という存在を、忌み嫌っているようだった。殺し屋を好む奴なんてそうそういないし、彼の態度は正常だったが──異常寄りの正常だった。
嫌悪という言葉より、憎悪という言葉の方が相応しい、そんな態度だった。彼がアンナを睨む度、『まーまーお二人さん、仲良くやれよ』と、よくシムノンが仲裁に入ったものだった。
レフにはもう二度と会いたくない。アンナがそう思うよりも、レフのほうが強く思っているに違いなかった。
「ベルか……嫌だな」
正直、ベルリナにも会いたくはない。ノルの町で啖呵を切り、ブエノレスパの儀式の場でも、散々嫌がらせを仕掛けてきた彼女。
「なんで? ベルリナは君のこと大好きなのに」
「それって本当なの?」
ミルスラ・ミントも先程同じことを言っていた。今までのベルリナの態度からすると、アンナにそれを信じることは難しかった。
「彼女は君のファンクラブの会長だよ?」
「ファン……クラブ?」
なんだそれは。初めて聞いた、という顔をするアンナ。
「アンナ・F・グランヴィを盛り上げる会会長、ベルリナ・ベルフラワー」
有名だよ? と首を傾げるミカエル。
「活動内容とか興味ある?」
「全くないわ」
「即答だなー。あ、そうだアンナ」
丸椅子から腰を浮かせ、前のめりになったミカエルは、アンナに顔を寄せながら言う。「支払い、先払いでよろしく。明日、治療が終わって逃げられても困るしね」
「──わかったわよ」
今になってアンナは、乱れたガウンの胸元を正す。自分で見て驚いた。胸が半分──いや、半分以上露わになっていた。露わにした犯人は目の前のこいつだ。
ベッドの右側にある窓の外を見る。塗装された木製の窓枠の間の硝子の向こうに、白い鳥の群れが列を成して飛んで行く。その全てが視界の外に消えるのを待って、アンナは枕と同色のカーテンを勢いよく引いた。
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