【完結済】ヒメサマノヒメゴト2〜殺し屋の姫、孕むまで終わらぬ臣下との交情〜

こうしき

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3.こんな姿を見られるなんて

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「──おい、起きろ」

 午後二時。予め決められていた時刻となり、ルヴィスがアンナの私室を訪れ扉をノックするも返事はなく。致し方なくベッドルームまで足を運ぶとこの有り様だ。

「ったく……おい、シナブル起きろ」

 こんな小声で、弟が起きるとは思えない。肩を揺すろうにも、その腕はぴたりと密着したアンナの身体に回されており、彼を起こすとアンナも起こしてしまう可能性が高い。この状況でそれは流石に避けておきたい所であった。仕方無しにシナブルの耳を摘み、ぐいと引き上げる。

「ん……」

 ゆるりと瞼が持ち上がり、腕の中で眠る裸のアンナに驚いたのだろう、ビクリと肩が跳ね上がった。

「起きたか」
「……あに、うえ」
「二時だぞ」
「もう少し……休ませて差し上げてくれ。兄上が出ていったあと、もう一回やったんだ。疲れていらっしゃる」
「そう言われてもな。陛下の命だ、悪いが……」

 と、ここで、アンナが目覚めたのか、もぞもぞと身を捩り出す。ルヴィスは足早にベッドの足元に移動して背を向け、シナブルは体を強張らせた。

「…………やっ……! なっ……な、なんで……あっ……そっか……今、何時なの」
「十四時です」
「もうそんな時間なの」

 一旦身を起こし、自身の状態を確かめる。乱れたベッドに皺の寄ったシーツ。赤い跡の残る胸元に、じんわりと熱い身体。

「アンナ様。お時間です、よろしくお願い致します」
「……わかった」

 足元で背を向けるルヴィスの声に、アンナは顔を上げる。揃って起き上がったシナブルの剥き出しの身体に視線を投げ、瞳を見つめた。

「姫……」

 吸い寄せられるように、互いの唇が重なる。最早躊躇いも恥じらいもなく、欲し、求め合う二つの赤。

「んッ……あ……あっ……!」

 とすん、とベッドに押し倒されたアンナの身体に、シナブルはすぐに覆い被さった。そっと血色の髪に触れ、己の下半身を見下ろす。

「寝覚めで……すみません、準備はもう出来てはいるのですが」
「いいわよ、すぐ挿れても」
「しかし、その、ぜ……前戯もなしに」
「……構わないわ」

 その表情を目の当たりにしたシナブルは、ごくりと唾を飲み干す。恥じらいながらも「早くよこせ」と求める主の、なんと愛らしいことか。


(たっぷりと焦らしたあと……貪るように食べてしまいたいというのに……我慢ができないのは、お互い様なのか)


 開いた股にスッと身を入れると陰茎を握り、じっとりと濡れた膣口に亀頭を押し当てる。押し当てたままくるくると円を描くと、ひくひくとアンナの腰が浮き上がる。

「あッ……あッ……あッ………お願いっ、シナブル」
「何なりと」
「早くっ……お願いッ……!」
「もう少し」

 かくかくと震える太腿を、ぐいと押し上げ舌を這わす。びくりと跳ね上がったのは、内腿のほくろに触れたせいか。

「はぁッ……んっ……んっ……んぐッ……」

 口元を覆い、これ以上言葉で求めるまいと指を噛み堪えるアンナは、堪らずシナブルの腕を掴む。首を横に振ると、再び「お願い」と声を上げた。

「お願いっ、お願いっ、お願いッ……もう無理……!」
「アンナ様……」
「お願いッ……シナブル、お願いもうだめ無理なの早くちょうだい……! ん……あ゙……あッあッあ゙ぁ……!」
「アンナ……」
「あッ……シナブル……!」

 刹那、ぐい、と押し込まれ一体となる身体。互いが互いを求め、何度も名を呼んだ。背徳的だと己を責めれば責めるほど、快楽に溺れてゆく。

「あぁッ……あッ……あんッ、あッ……!」
「はぁッ……はぁッ……すみません、失礼します」
「えっ、あ、ちょ……やッあ、あッあッあっああッだめこれ、ぇ……!」

 ぐっと足を上に上げ、奥の奥にまで辿り着き、密着し、膣口から尻の穴まで、すべてを曝け出す。このような姿、 婚約者フィアンセにすら見られたことはなかった。

「ぐ、う、ッ……あ、ぁ゙、お゙ぐ、おく、奥ッだめっ、だめっ、だめぇッあ゙ッあ゙ッ、い、い゙……い゙く、ィ゙く、ぅッイクッ!! はッ……あ……あ……!」
「まだ……もっと……」
「あ、あ、あッ……はぁッ……シナブル……」

 一度抜き取り体勢を変え、後ろから覆い被さる。顎先に触れ、くいと持ち上げると唇を吸い合い、指を絡ませた。

「ん……ん……ん゙ぅッ!」
「失礼します」

 重なっていた唇が離れると、二人の間に銀の雫が糸を引いた。ぽたりと落下した雫は、アンナの手を抑え込むシナブルの手の甲を濡らした。

「あ……はぁッ……あ、ん、あ、あぁッ……!」

 括れた腰を掴み、暴れぬよう抑えつけ腰を打ち付ける。やわやわとした尻に触れ、撫で、揉み、背中に手を這わせてゆく。

「あぁッ……うッ、あ゙ッ……! なか、きもち、い、いッ……きもちいい……」
「……気持ちいいですか」
「う、う、ゔ、んッ……!」
「姫……姫ッ……!」
「あ゙、あ゙ッあ゙ッ待っ……あああッ、待って、だめ、だめ、だめえ……い……い゙ッ、イっちゃう……!」
「すみません、動きます」
「はッ……はッ……はッ……あ゙……!」

 挿入したままアンナの肩を掴み、後ろへぐいと引き寄せる。膝立ちのアンナはシナブルの足の間に挟まれたまま、打ち付けられる彼の腰に身を委ねた。

「待っ……て、これ、だめ……やッ……ちょっと……やめっ……!」
「申し訳ありません……」
「あッ、あ……ああッ! あッ! あぁんッ! ああッ! あッ! あ゙ッあ゙ッ! あぁんッ!」
「はぁッ…………はぁッ…………アンナ……」
「や゙、あ゙、だ、め゙、だめ゙ッあ゙ッ! あ゙、あ゙ッ! い゙、い、いッ、イク、ぅ゙、あ゙……イクッ、イクッイクッ、イクッ! イクから、ぁ、や、だめ゙、だめ、イッちゃう……!!」

 達しても尚打ち付けられる腰に、悲鳴にも似たアンナの矯声がこだまする。身を伏せ抑えつけて隠そうにも、拘束されたまま、もっと啼けと言わんばかりに交情は激しさを増してゆく。

「ああッあッあッ……やッ……あ、……やだあッ……やだ、また、イク、むりッ、これ、あ゙……あ、あ、あ゙ッ、イクッ、イク、シナ、ブル、すき……すき……すき……すき……! あ゙、あ゙、あ゙ッ、イクぅッ……!!」
「ッ……あ、あ゙……、ぅ……!!」

 ぴたりと止んだ音に、ルヴィスはサッと振り返り足を動かす。息の荒いまま膝を付きアンナの背にしなだれたままのシナブルと、尻を突き上げたままのアンナの姿に思わず全身がカッと熱を孕む。

「……おい、シナブル」
「はぁッ……う……」

 ぬ──、とアンナの膣から抜き取られた陰茎から、真っ白な精液が滴る。その場にがくりと座り込むと、シナブルはアンナの尻を舐め、何度も吸い付いた。

「……確認させて頂きました」
「はぁっ……はぁ……ルヴィス、ごめ、ん……」
「謝らないで下さい。では、失礼致します……また夜の十時に参ります」

 ルヴィスが去るのを待たず、シナブルはアンナに覆い被さる。背中に何度も唇を推し当て、両の胸に手を伸ばし、そっと触れ続けた。

「はぁッ……はッ……アンナ、様……」
「んッ……」
「愛して、います……愛しています」
「ありがとう……すき……大好きだからお願い、許して……」
「言ったではありませんか、十分ですと。共に……堕ちると」
「うん……」

 うなじを吸い上げ、遂には唇が重なる。求め合った二人の腕が絡まり、向かい合い、引き寄せ合い、それが激しさを増す頃、ルヴィスが部屋を出て行った。

 アンナはベッドの上でくるりと身を翻し、シナブルと向かい合う。真っ直ぐな瞳に吸い寄せられてしまう。

「んッ……」

 再び重なる唇の間から、荒い息が漏れる。互いの体に腕を回し、求め合い──絡まってゆく。

「アンナ……」

 乱れた血色の髪をそっと撫で、頬を包みこんで唇を落とす。優しく胸を愛撫すると、くぐもった声に欲情してしまう。

「……っ」
「どうしたの?」

 こめかみを抑え、ごろりと横たわるシナブルの頬に、アンナの細い指が触れる。鼻がくっつきそうな距離だというのに、互いに恥ずかしがる様子もない。

「すみません……姫が……その、姫の全てが……お美しすぎて……昂っていたものが落ち着いてきた途端、目眩が」
「何、言ってんの」
「申し訳ありません……」
「……そんなの、あたしだって」
「何を……」
「ここも、ここも……」

 明るい星空のようなシナブルの髪に触れ、指で梳く。 耳朶みみたぶに唇を落とし甘咬みすると、首筋をべろりと舐められ、小さな声が漏れた。

「髪は……褒められ飽きてるでしょ?」
「……いえ、そんなこと」
「こんなに綺麗なのに?」

 この髪色は、シナブルの父譲りであったが、元を辿れば二人の祖父由来のものであった。陽の光を受けてきらきらと輝く髪は、見ていて飽きることがない。

「ここも、好き。綺麗……」

 スッと触れるのは先程口に含んだ耳朶だった。彼の 耳殻じかくをまじまじと見つめたのは今日が初めてのことであったが、整ったその形をつい目で追ってしまっていた。

「ここも、ここも」

 薄い唇に触れて頬を撫で、首筋を撫で喉仏に触れた。二の腕に唇を落とし、厚い胸板に鼻を擦り付け、空いた両手は腹から腰、更にはその下へと伸びる。

「ここも、ここも、全部……綺麗よ。声だって……」
「声?」
「だって、あなたのあんな声……聴いたこともない……」

 思い出すだけで全身が熱くなってゆく。伏せていた視線を持ち上げると、すかさず唇が下りてきた。

「んッ……ん、はッ……」
「……同じですよ」
「ん……」
「思い出すだけで、クラクラします」
「やだ……」
「姫?」
「見ないで」
「何故?」

 このままでは気が触れてしまうと、小声で呟き背を向けた。駄目だと気持ちを抑え込むように、アンナはベッドの上で膝を抱え身を丸めた。

「お腹……痛いの。少し休むから、先にシャワー使って」
「大丈夫ですか?」
「大丈夫……しすぎると……いつもこうだから」
「温めます」
「ううん……大丈夫よ」
「わかりました。すみません、外で一服してきます」
「……うん」

 起き上がるとローブを身に付け、壁にかけてあったフロックコートの内ポケットから煙草を取り出した。ベッドの右手の、バルコニーへと続く大窓から外に出ると、前髪をかき上げベンチに腰を下ろし、火をつける。

「フーッ…………はぁ……」

 気が触れてしまいそうなのは、こちらも同じであった。エリックが仕事を終え、帰国するまで一体何日かかるのか。


(予定では二週間だったが……二週間もの間、毎日……三度もこれを……)


「……無茶だ」

 頭を抱え、足元に視線を落とす。手の中の煙草を燃やし尽くすと、シナブルはゆるりと立ち上がる。ガラス戸を開けると、アンナの頭がゆっくりと動いた。

「……シナブル、来て」
「はい」
「もっと、来て」
「はい……」

 ベッドに滑り込むと、アンナの白い指が耳朶に伸びてきた。「来て」と 強請ねだられるのでぴったりと身体を寄せると、耳殻にちゅ、と下りてくる唇。

「やっぱり……ここ、好き」
「ありがとうございます。……お具合は?」
「もう少し休むわ……。ねえ、少し話をしてもいい?」
「はい」

 シナブルの耳殻に触れながら、アンナはぽつり、ぽつりと言葉を紡ぐ。

「……もう、きっと…………あたしたち……元の関係には戻れない。自信がないもの……」
「姫……」
「ごめんなさい……! 弱い……自分が弱くて、醜くて、吐き気がする! こんなことになって……エリックに何て言えばいいの……!」

 アンナの目からはつらつらと涙が零れ落ちる。堪らえようと唇を噛みしめるが、意味をなさない。

「俺も、自信がありません。意志の弱い男で、申し訳ありません」
「あたしが……あたしが悪いの。父上に逆らっていれば、こんなことには……!」
「しかし、それですと姫は……!」
「わかってる……ああもう、どうしたらいいの……!」

 頭を抱えて縮こまると、大きな手が伸びてきた。顔を上げる間もなく、堅い胸に抱き寄せられてしまう。

「今は……ゆっくり休まれて下さい。眠られるまで、傍におります」
「ん……」
「一旦自室に戻ります。その後、 執務室となりで仕事をしておりますので、何かありましたらお呼び付け下さい」
「うん……」

 互いの額に唇を落とし、アンナは瞼を下ろした。すぐに聞こえてきた寝息を確認すると、シナブルは名残惜しげにその場を後にした。


 

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