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勇者の子供編
守るべき者たち
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「そう・・・。そんなことがあったのね。」
ゼレとバランの名前を聞いたあと、ユウは村に何があったかをフウに伝えた。
これは春風のメンバーにもはじめて話すことだったので、メンバーからも時折驚いたような声が聞こえていた。
「話してくれてありがとうね。最後にユウくんがいて、あの二人も村の全員も、幸せだったと思うわ。」
「そうだと嬉しいです・・・。ちなみに、お2人とフウさんはどういった関係なんですか?」
ユウは1番気になっていた事を聞く。
「実は私はカムス村出身の元騎士でね。2人とは幼なじみで、バランに至っては同僚でもあったの。」
「えっ!退役騎士さんだったんですか?」
「えぇ。退役後の配属先がこの村だったから、バランにカムス村を頼むって伝えてここに来たの。でも・・・バランはしっかりと守るべきものは守れたようね。」
フウはそういって優しい目を向ける。村の皆やアル、春風のメンバーと同じく自分を大切に考えてくれる人の目だ。
「今度は・・・僕が守る番です。」
自然とユウはそう口にしていた。
フウはあらあらと喜び、オッドがよく言ったとユウの背中を叩く。
そうして一同は、魔物による被害状況や種類などを聞き、対策を話し合うのだった。
~~~オッドside~~~
ユウの過去を聞いた。
初めてこいつを見た時、俺は自然と立ち上がって歩を進めていた。
無意識下で「こいつは心配だ」と感じたんだろう。初めて交わした言葉は「こいつに冒険者なんてやらせなくていい」というものだった。
・・・そういえばあの時から、近づいていく俺を察知して身構えていたな。まだ若いのに、どんな経験したらそんなに気を張るクセが身につくんだと思ったもんだ。
次にこいつを見たのは数週間後。負の感情に取り憑かれていて、最初会った時と比べ物にならないほど心配になった。
だから急いでリリアに何か出来ることはないかと聞いて、俺のパーティーに入れて欲しいというのを承諾した。その後目に見えて元気になっていくこいつを見て、本当に心底嬉しかったよ。
さっき自分が守る番だって言ってたが、お前も俺たち大人が守るべき対象の1人なんだぜ。
明日の見回りはお留守番だ。ダンディーなオジサンにまかせて、村の子供たちと遊んでてやんな。
~~~~~
次の日、春風の一行は2手に別れて行動をした。
機動力に長けるユウと魔法による攻撃力に長けるローラがペアとして村に残り、残り全員は周辺の森を探索している。
そしてユウは今、村の門に立ち周辺を鋭い眼光で見据えながらーーー子供たちに囲まれていた。
「なーなー!おれと冒険者ごっこしようぜー!」
「その目につけてるやつかっこいい!」
「あの・・・これ・・・あげます・・・!」
木の棒を剣に見立ててポーズを取るわんぱくそうな少年、眼帯をキラキラした目で見つめる小柄な少年、手に持った花の冠をオドオドしながら差し出してくる気弱そうな少女・・・
その他にもキャッキャ言いながらなぜかユウの周りを飛び跳ねている子供たち総勢7人ほどに取り囲まれて、ユウはカチコチに固まっていた。
(前世では孤独だったし、こっち来ても年上の人としか話したことなかったから、どうしていいか分からない・・・!!)
得体の知れない魔物が目の前に現れたような嫌な汗をダラダラとかき、どうしたものかと困っていると、同じく村に残ったローラが助け舟を出してくれた。
「みんな~、お姉さんもま~ぜて!♪」
いいよー!と返事をして、数人がローラの方に流れていく。人数が減ったことで少し落ち着き、ようやく残った子供たちに顔を向けることが出来た。
第一印象は「小さい」だった。
ユウはこの世界でこそ標準以下なものの、身長は一応170cmほどある。子供たちがいかに、頑張って声を出して身長差がある自分に話しかけていたかと思うと、ずっと放っておいたのが申し訳なく感じる。
花輪を受け取って頭に乗せしゃがみこみ、未だ周りにいる子供たちに挨拶をする。
「みんなごめんね。お兄ちゃん子供たちと話すのが初めてで緊張しちゃってた。僕はユウって言うんだけど、きみたちのお名前は?」
「ハキムってんだぜ!子供じゃないぞ!」
「ぼくはライト!」
「私は・・・シャナです・・・!」
各々の個性を出しつつ自己紹介をしてくれた子供たち。初めて触れ合う自分よりも幼い存在相手にこの後どうしようかと考えていると、ローラが近くに寄ってきた。
「も~、すぐ私に飽きて村の方に戻っていっちゃった。ユウくんは懐かれてるみたいね。」
「そのローラさん・・・その、僕子供と話すのが初めてで・・・どうしたらいいのか・・・」
子供たちがジーッと自分を見つめる視線に晒されながら、ぎこちない笑顔を向けてローラに告げる。ローラはふんふんと言いながら腕を組み、ニコッと笑って口を開いた。
「じゃあ、ユウくんの今日のお仕事は子供たちが村の外に行かないように見張ること!外からの敵は私が見てるから、ユウくんは子供たちを見ててね。」
そう言ってウインクをするローラ。それならばと役割の交代を申し出ようとすると、読まれていたのか口の前に指を立てられて発言を止められる。
「それにね、自分よりも年下の子供たちと触れ合うというのも大切な経験よ。ユウくんはまだ若いんだから、色々な経験を積んで立派な大人になっていくの。」
立派な大人になってお姉さんのこと守ってね。と最後に付け足し、ローラは元居た門の近くに歩いていく。
これも経験・・・か。確かに一生子供と触れ合わないなんて無理だし、今日は子供に慣れる日にしてみるか。
そう決めてユウは、ワクワクとした目を向けてくる子供たちに向き直ったのだった。
ゼレとバランの名前を聞いたあと、ユウは村に何があったかをフウに伝えた。
これは春風のメンバーにもはじめて話すことだったので、メンバーからも時折驚いたような声が聞こえていた。
「話してくれてありがとうね。最後にユウくんがいて、あの二人も村の全員も、幸せだったと思うわ。」
「そうだと嬉しいです・・・。ちなみに、お2人とフウさんはどういった関係なんですか?」
ユウは1番気になっていた事を聞く。
「実は私はカムス村出身の元騎士でね。2人とは幼なじみで、バランに至っては同僚でもあったの。」
「えっ!退役騎士さんだったんですか?」
「えぇ。退役後の配属先がこの村だったから、バランにカムス村を頼むって伝えてここに来たの。でも・・・バランはしっかりと守るべきものは守れたようね。」
フウはそういって優しい目を向ける。村の皆やアル、春風のメンバーと同じく自分を大切に考えてくれる人の目だ。
「今度は・・・僕が守る番です。」
自然とユウはそう口にしていた。
フウはあらあらと喜び、オッドがよく言ったとユウの背中を叩く。
そうして一同は、魔物による被害状況や種類などを聞き、対策を話し合うのだった。
~~~オッドside~~~
ユウの過去を聞いた。
初めてこいつを見た時、俺は自然と立ち上がって歩を進めていた。
無意識下で「こいつは心配だ」と感じたんだろう。初めて交わした言葉は「こいつに冒険者なんてやらせなくていい」というものだった。
・・・そういえばあの時から、近づいていく俺を察知して身構えていたな。まだ若いのに、どんな経験したらそんなに気を張るクセが身につくんだと思ったもんだ。
次にこいつを見たのは数週間後。負の感情に取り憑かれていて、最初会った時と比べ物にならないほど心配になった。
だから急いでリリアに何か出来ることはないかと聞いて、俺のパーティーに入れて欲しいというのを承諾した。その後目に見えて元気になっていくこいつを見て、本当に心底嬉しかったよ。
さっき自分が守る番だって言ってたが、お前も俺たち大人が守るべき対象の1人なんだぜ。
明日の見回りはお留守番だ。ダンディーなオジサンにまかせて、村の子供たちと遊んでてやんな。
~~~~~
次の日、春風の一行は2手に別れて行動をした。
機動力に長けるユウと魔法による攻撃力に長けるローラがペアとして村に残り、残り全員は周辺の森を探索している。
そしてユウは今、村の門に立ち周辺を鋭い眼光で見据えながらーーー子供たちに囲まれていた。
「なーなー!おれと冒険者ごっこしようぜー!」
「その目につけてるやつかっこいい!」
「あの・・・これ・・・あげます・・・!」
木の棒を剣に見立ててポーズを取るわんぱくそうな少年、眼帯をキラキラした目で見つめる小柄な少年、手に持った花の冠をオドオドしながら差し出してくる気弱そうな少女・・・
その他にもキャッキャ言いながらなぜかユウの周りを飛び跳ねている子供たち総勢7人ほどに取り囲まれて、ユウはカチコチに固まっていた。
(前世では孤独だったし、こっち来ても年上の人としか話したことなかったから、どうしていいか分からない・・・!!)
得体の知れない魔物が目の前に現れたような嫌な汗をダラダラとかき、どうしたものかと困っていると、同じく村に残ったローラが助け舟を出してくれた。
「みんな~、お姉さんもま~ぜて!♪」
いいよー!と返事をして、数人がローラの方に流れていく。人数が減ったことで少し落ち着き、ようやく残った子供たちに顔を向けることが出来た。
第一印象は「小さい」だった。
ユウはこの世界でこそ標準以下なものの、身長は一応170cmほどある。子供たちがいかに、頑張って声を出して身長差がある自分に話しかけていたかと思うと、ずっと放っておいたのが申し訳なく感じる。
花輪を受け取って頭に乗せしゃがみこみ、未だ周りにいる子供たちに挨拶をする。
「みんなごめんね。お兄ちゃん子供たちと話すのが初めてで緊張しちゃってた。僕はユウって言うんだけど、きみたちのお名前は?」
「ハキムってんだぜ!子供じゃないぞ!」
「ぼくはライト!」
「私は・・・シャナです・・・!」
各々の個性を出しつつ自己紹介をしてくれた子供たち。初めて触れ合う自分よりも幼い存在相手にこの後どうしようかと考えていると、ローラが近くに寄ってきた。
「も~、すぐ私に飽きて村の方に戻っていっちゃった。ユウくんは懐かれてるみたいね。」
「そのローラさん・・・その、僕子供と話すのが初めてで・・・どうしたらいいのか・・・」
子供たちがジーッと自分を見つめる視線に晒されながら、ぎこちない笑顔を向けてローラに告げる。ローラはふんふんと言いながら腕を組み、ニコッと笑って口を開いた。
「じゃあ、ユウくんの今日のお仕事は子供たちが村の外に行かないように見張ること!外からの敵は私が見てるから、ユウくんは子供たちを見ててね。」
そう言ってウインクをするローラ。それならばと役割の交代を申し出ようとすると、読まれていたのか口の前に指を立てられて発言を止められる。
「それにね、自分よりも年下の子供たちと触れ合うというのも大切な経験よ。ユウくんはまだ若いんだから、色々な経験を積んで立派な大人になっていくの。」
立派な大人になってお姉さんのこと守ってね。と最後に付け足し、ローラは元居た門の近くに歩いていく。
これも経験・・・か。確かに一生子供と触れ合わないなんて無理だし、今日は子供に慣れる日にしてみるか。
そう決めてユウは、ワクワクとした目を向けてくる子供たちに向き直ったのだった。
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