歪な戦士の異世界転生録 〜授かった【変換】スキルが尖り過ぎてて異常な性能を得る〜

チャド丸

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勇者の子供編

スタンピード

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「なんでだー?捕まんないー!」

「あれ?今ここにいたのに!」

「まってえ・・・!」

ユウは今、子供たちと鬼ごっこをしている。といっても従来の鬼ごっことうって変わり、ユウが子供たちから追い回されるという逆鬼ごっこなのだが。



そしてユウは子供相手に強化された身体能力と眼力をフル稼働して、捕まるギリギリのところで避けて遊んでいる。大人気ないと思うかもしれないが、これはユウなりに考えた結果からの行動であった。



(いなすのは大人の特権だ。俺はまだまだ子供だし、子供との付き合い方も知らない。全力で一緒に遊ぶのが1番だな。)

真面目すぎるともいえるその考え方によって、ユウは本気で子供たちが掴みかかってくるのを避け続けていた。



村のことや父母のことを聞いたり、子供たちと冒険者ごっこという名のチャンバラをしたりしながら・・・ユウは穏やかな1日を過ごし「いっくらなんでもリラックスしすぎだっつーの!」



ズビシ!と良い音を立ててユウの頭に背後からチョップが入った。振り返ると笑いながら呆れたような顔をした、チョップの犯人であるオッド。そしてその背後には探索をしていたカノン達と、いつの間にか合流していたローラが居る。



全員が笑みを含めた顔でこちらを見ている。なんとなく恥ずかしくなって姿勢を正すが、くつくつと笑うオッドはいつものようにユウの頭をガシガシと撫でてきた。



「ま、たまには子供同士遊ぶのも大切だ。お前はいつも気を張りすぎだからよ。」

そう言って自分の横を通り過ぎ村長の家の方へ向かう。てっきり怒られるかとも思ったが、なんだか嬉しそうな顔をしていた。



「さでさでローラ!見張りかわっから休んでこい!」

ズーリンがそう言って、門の方へと歩いていく。残されたメンバーはオッドに続いて村長の家へと向かっていった。



「そういえば、周辺状況はどうだったの?」

向かう最中にローラが聞く。

「あぁ・・・ユウのおかげで少し落ち着いたけど、実はちょっとマズそうなのよねぇ・・・」

そう答えたのはカノンだ。先程の和らいだ雰囲気とは一転して、険しい表情をしている。



「深刻な面持ちで村に帰ってきたらユウが子供たちと凄く楽しそうに遊んでいるから・・・つい毒気が抜かれちゃったよ。」

ふふふっとローランドが思い出し笑いをしながら言う。

「ははは・・・えーっと、今日の探索でなにがあったんですか?」



照れながらも、ユウは1番気になっていることをローランドに聞いた。

するとローランドも真剣な顔に戻り、門の方を見ながら言った。



「近いうちに、スタンピードが起こる。」



~~~~~



『スタンピード』

数年に1度起こるとされる、魔物の集団的暴走状態のこと。

恐慌・興奮状態に陥った魔物が他の魔物を刺激し、それが連鎖することによって広範囲に被害を及ぼす。



スタンピードの厄介な点は、その魔物達の戦禍がさらなる獲物を求めて拡大し移動し続けるということだ。

範囲内の魔物を殲滅しない限り、スタンピードは終わらない。



果たして何が原因で、この森の魔物は興奮状態に陥ったのか・・・。それを知る者は誰もいない。



門を守るズーリン以外の春風の一行は、村の集会場に集まっている。

村長であるフウをはじめ、警護担当の若い衆など村で重要な役割を持つ大人たちもここに会した。

「まさか・・・スタンピードだなんて。」

「騎士団へ連絡したが・・・いつ来れるんだよ・・・」

「門を封鎖して周辺にトラップを敷き詰めよう」



皆が思い思いの話をしていると、フウが少し手を挙げた。粛々とした姿に全員が言葉を飲み込む。

「私の経験上、スタンピードに対抗出来る隊を編成し、この村まで行軍するのは最低でも2日はかかる。そもそも伝達に半日かかるとして、騎士団が来るのは3日・・・というところね。」



「今回俺たちはマッピングと魔物の密度によってスタンピードに気付いた。専門じゃないからおそらくになるが・・・3日となると、この村がスタンピードの範囲に入るのは免れねえな。」

オッドが顎に手を当てながらそう言い放つと、村人達の顔が絶望に染まる。



そんな中、フウだけが申し訳なさそうな顔をして立ち上がり、春風の一行に向かって頭を下げた。

「皆ごめんなさい。スタンピードだとは思わなくて、巻き込んでしまったわ。本来スタンピードは、王国騎士団へ出動要請をすべきなのに・・・」



そう、スタンピードの殲滅は本来騎士団が行うべき仕事なのだ。今回冒険者を巻き込んでしまったことは、フウの落ち度だと考える人もいるだろう。だが、

「おいおい、頭を上げてくれ。こんな閑静な地域でスタンピードが起こるなんて、誰も予想できなかったさ。」

オッドがフウにそう言って頭を上げさせる。



フウは座り直し、目を閉じて何かを考え始めた。

「王都までの道中も魔物が多く、村人全員で無事に避難することは不可能。近隣の村に避難も同様。森の向こうは崖で、こちらに来るのは免れない。こうなると籠城をして時間を稼ぐのが1番安全か・・・」



目を開けたフウは春風の一行に向かって告げる。

「重ね重ね申し訳ないけど、村の外壁補強を手伝ってもらえないかしら?もちろん謝礼金は先払いで、その後は王都へ避難してもらって大丈夫だから・・・」



真剣な眼差しでそう頼まれたのを受け、オッドが首を横に振った。

「ダメだな。1日2日でできる程度の補強じゃ、騎士団が来るまでの日数はギリギリ持ちこたえられないだろう。」

言いながらオッドは立ち上がり、フウの元へと歩み寄る。



「だから俺の案はこうだ。外壁を補強した後、俺たちは侵攻してくる魔物どもを外壁の外で出来るだけ抑え込む。全員で無事に凌いで、謝礼金は後払いだ。」

オッドはニカッと笑いフウに手を差し伸べる。フウは驚きつつも、安心したようにその手を取り握手を交わした。
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