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勇者の子供編
壁しかない
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「釈然としないけど、とりあえず破壊しましょうか」
最終的にパルファもそう判断して、先ほどのユウと同じく剣を振りかぶる。
(本当にいいのか?これを破壊してしまって)
さまざまな感情を失っているユウだが、予感や第六感といった不明瞭ながらもアテになる感覚は残っている。
それらが妙にざわつくのだ。本当にこのダンジョンコアを、壊して大丈夫なのかと・・・
「待ってパルファ。まだ壊さないで」
そのざわつきが勝り、ユウは本来止める必要のない行為を止める。
「うん?・・・わかったわ」
パルファもなにか思うところがあったのか、あっさりと剣をおろす。
「まだ時間はある。ダンジョンはここまでだと分かったし、今まで来た道をもう一度調べなおしてみましょう」
パルファの案にユウも賛同し、2人はダンジョンボス部屋を後にした。
~~~~~
部屋から出た後、2人は今まで通った道を入念に調べた。
壁や絨毯の下に隠された空間が無いか、絵画の裏など隅々まで調べたあげくに、一階層のホールにまで帰ってきた。
「ここで最後・・・調べる場所は多そうね」
「そうだね。ここを調べてなにも無かったら、ダンジョンコアを破壊しよう」
そういって2人は手分けして部屋を調べ始めた。
(思えば、ここが結局一番の難関だったな・・・)
椅子の影や壁を調べながら、ユウはそんなことを考える。実際にここ以降の階層では、Aランクの魔物は一切出なかった。
「そういえばパルファ、建物の外はどんな感じだったの?」
ユウは調査をしつつ、以前パルファが建物の周囲を調べたときのことを聞く。あのときユウは建物を眺めており、パルファだけがぐるっと見回ったのだ。
「う~ん、何も変な所は無かったわよ。ここには窓も無いから・・・壁しか・・・無か・・・った」
突然パルファの言葉が途切れ途切れになる。パルファの方を見ると、何かに驚いているように祭壇の方を見つめていた。その視線の先には、十字架が描かれたステンドグラスがあった。
―――ステンドグラスがあるのに壁しかなかった?
―――そもそもなぜ外は明るいのにステンドグラスから光が入らない?
―――あのステンドグラスに描かれていた十字架に、
―――縛られていた男はどこに行った?
そう思ったのと同時に、ステンドグラスにヒビが入り盛大に砕け散った。
ステンドグラスがあった向こう側には建物の周りと同じ暗い闇が広がり、そこからタキシードを着た細身の男がふわりと降り立った。
~~~王都~~~
「これで5件目か・・・」
呟くジィファの目の前には、無残に切り殺された身なりの良い男が横たわっていた。
パルファとユウがダンジョンにて奇怪な現象に苛まれている頃、王都では恐ろしい事件が続いていた。
――貴族を狙った連続殺人事件
犯人の目星もつかないまま、すでに5人が手にかけられていた。
貴族の屋敷にはその家族だけでなく、使用人や護衛なども多くいる。それなのにどの事件も目撃者はいない。当主の部屋の中でひっそりと、惨劇が起こっているのだ。
そしておそらくだが、この事件は先の脅迫状と関係があるはずだ。脅迫状が届いてから最初の犠牲者が出たことからも、かなり確実は高いだろう。
現場を検証している騎士団の中の一人が近づいてきて耳元で告げる。
「ジィファ様・・・実は今回も・・・」
「やはり、か」
そして今回の事件の被害者には共通している点があった。
「今回も後ろ暗い者だったようだな」
「おいアラン!遺族が聞いていたら・・・!」
そう。アランが言ったとおり、この事件の被害者である貴族たちは、地方からの強引な徴税や禁止されている奴隷売買など、権力を利用して陰で悪事を働いている者たちだった。
悲しきかな、どれだけ治世に尽力しても騎士団による取り締まりをおこなっても、一定数の悪は消せないのが現状だ。ユウが素晴らしいと褒めたこの王都でさえ、表層には浮かんでこないだけで日陰は存在するのだ。
(まったく・・・)
ジィファはアランのあからさまな発現を静止しながら考える。
双子で外見は似ているが、立場上勇者よりも自由に生きてきたアランは少し配慮に欠ける部分がある。
奥方や子供が何も知らなかった場合、遺族に与えるショックは計り知れないだろう。なのにこの男は・・・
じとっとした目で我が兄を見つめていると、ため息交じりにアランが口を開く。
「悪かったよ。こっちはお前と違って勇者のしがらみなんかと無縁で育ってきたから、取り繕うとか苦手なんだ。今後気を付ける」
「・・・いや悪いな、少し気にし過ぎた。お前も勇者家系初の双子という立場で、色々あったというのに」
そう。勇者家系に双子が生まれたのは、実はジィファとアランが初のことだった。
男女に関わらず勇者に相応しいスキルは発現する。
歳が違う兄弟の場合は年長者が勇者となる。
だが歴史上唯一の双子であるジィファとアランはどちらが勇者を継ぐか、どちらが勇者に相応しいかを幼いころから大人たちに比較されて生きてきた。
その過程で2人は、さまざまな心無い言葉も聞いてきた。
『勇者に選ばれない方』『忌み子』『失敗作』
最終的に勇者として選ばれたジィファは大きな責任と引き換えに、そういった声を聞かなくなったが、アランは逆にその声を一手に引き受けることとなったのだ。
神妙な顔をしていると、アランがそれを察して口を開いた。
「この際言うが俺だってお前には感謝しているんだ。お前が勇者の立場や重圧を背負ってくれたおかげで、こうして自由気ままに生きてこられたんだからな」
「いや俺こそ・・・っと、こんな話は仏様の前でするものではないな。」
今は目の前の事件解決に尽くそう。アランとの昔語りは今まで何度もしたし、建国の式典を成功させれば久々に朝まで飲み明かすことだってできる。
娘とそのパートナーが王都に帰ってくるまでに、犯人を見つけ出さなくては。
最終的にパルファもそう判断して、先ほどのユウと同じく剣を振りかぶる。
(本当にいいのか?これを破壊してしまって)
さまざまな感情を失っているユウだが、予感や第六感といった不明瞭ながらもアテになる感覚は残っている。
それらが妙にざわつくのだ。本当にこのダンジョンコアを、壊して大丈夫なのかと・・・
「待ってパルファ。まだ壊さないで」
そのざわつきが勝り、ユウは本来止める必要のない行為を止める。
「うん?・・・わかったわ」
パルファもなにか思うところがあったのか、あっさりと剣をおろす。
「まだ時間はある。ダンジョンはここまでだと分かったし、今まで来た道をもう一度調べなおしてみましょう」
パルファの案にユウも賛同し、2人はダンジョンボス部屋を後にした。
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部屋から出た後、2人は今まで通った道を入念に調べた。
壁や絨毯の下に隠された空間が無いか、絵画の裏など隅々まで調べたあげくに、一階層のホールにまで帰ってきた。
「ここで最後・・・調べる場所は多そうね」
「そうだね。ここを調べてなにも無かったら、ダンジョンコアを破壊しよう」
そういって2人は手分けして部屋を調べ始めた。
(思えば、ここが結局一番の難関だったな・・・)
椅子の影や壁を調べながら、ユウはそんなことを考える。実際にここ以降の階層では、Aランクの魔物は一切出なかった。
「そういえばパルファ、建物の外はどんな感じだったの?」
ユウは調査をしつつ、以前パルファが建物の周囲を調べたときのことを聞く。あのときユウは建物を眺めており、パルファだけがぐるっと見回ったのだ。
「う~ん、何も変な所は無かったわよ。ここには窓も無いから・・・壁しか・・・無か・・・った」
突然パルファの言葉が途切れ途切れになる。パルファの方を見ると、何かに驚いているように祭壇の方を見つめていた。その視線の先には、十字架が描かれたステンドグラスがあった。
―――ステンドグラスがあるのに壁しかなかった?
―――そもそもなぜ外は明るいのにステンドグラスから光が入らない?
―――あのステンドグラスに描かれていた十字架に、
―――縛られていた男はどこに行った?
そう思ったのと同時に、ステンドグラスにヒビが入り盛大に砕け散った。
ステンドグラスがあった向こう側には建物の周りと同じ暗い闇が広がり、そこからタキシードを着た細身の男がふわりと降り立った。
~~~王都~~~
「これで5件目か・・・」
呟くジィファの目の前には、無残に切り殺された身なりの良い男が横たわっていた。
パルファとユウがダンジョンにて奇怪な現象に苛まれている頃、王都では恐ろしい事件が続いていた。
――貴族を狙った連続殺人事件
犯人の目星もつかないまま、すでに5人が手にかけられていた。
貴族の屋敷にはその家族だけでなく、使用人や護衛なども多くいる。それなのにどの事件も目撃者はいない。当主の部屋の中でひっそりと、惨劇が起こっているのだ。
そしておそらくだが、この事件は先の脅迫状と関係があるはずだ。脅迫状が届いてから最初の犠牲者が出たことからも、かなり確実は高いだろう。
現場を検証している騎士団の中の一人が近づいてきて耳元で告げる。
「ジィファ様・・・実は今回も・・・」
「やはり、か」
そして今回の事件の被害者には共通している点があった。
「今回も後ろ暗い者だったようだな」
「おいアラン!遺族が聞いていたら・・・!」
そう。アランが言ったとおり、この事件の被害者である貴族たちは、地方からの強引な徴税や禁止されている奴隷売買など、権力を利用して陰で悪事を働いている者たちだった。
悲しきかな、どれだけ治世に尽力しても騎士団による取り締まりをおこなっても、一定数の悪は消せないのが現状だ。ユウが素晴らしいと褒めたこの王都でさえ、表層には浮かんでこないだけで日陰は存在するのだ。
(まったく・・・)
ジィファはアランのあからさまな発現を静止しながら考える。
双子で外見は似ているが、立場上勇者よりも自由に生きてきたアランは少し配慮に欠ける部分がある。
奥方や子供が何も知らなかった場合、遺族に与えるショックは計り知れないだろう。なのにこの男は・・・
じとっとした目で我が兄を見つめていると、ため息交じりにアランが口を開く。
「悪かったよ。こっちはお前と違って勇者のしがらみなんかと無縁で育ってきたから、取り繕うとか苦手なんだ。今後気を付ける」
「・・・いや悪いな、少し気にし過ぎた。お前も勇者家系初の双子という立場で、色々あったというのに」
そう。勇者家系に双子が生まれたのは、実はジィファとアランが初のことだった。
男女に関わらず勇者に相応しいスキルは発現する。
歳が違う兄弟の場合は年長者が勇者となる。
だが歴史上唯一の双子であるジィファとアランはどちらが勇者を継ぐか、どちらが勇者に相応しいかを幼いころから大人たちに比較されて生きてきた。
その過程で2人は、さまざまな心無い言葉も聞いてきた。
『勇者に選ばれない方』『忌み子』『失敗作』
最終的に勇者として選ばれたジィファは大きな責任と引き換えに、そういった声を聞かなくなったが、アランは逆にその声を一手に引き受けることとなったのだ。
神妙な顔をしていると、アランがそれを察して口を開いた。
「この際言うが俺だってお前には感謝しているんだ。お前が勇者の立場や重圧を背負ってくれたおかげで、こうして自由気ままに生きてこられたんだからな」
「いや俺こそ・・・っと、こんな話は仏様の前でするものではないな。」
今は目の前の事件解決に尽くそう。アランとの昔語りは今まで何度もしたし、建国の式典を成功させれば久々に朝まで飲み明かすことだってできる。
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