歪な戦士の異世界転生録 〜授かった【変換】スキルが尖り過ぎてて異常な性能を得る〜

チャド丸

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勇者の子供編

死にたくないと生きたいの違い

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「パルファ!大丈夫?」
スキルの性能は上がっていたとしても、耐久力や防御力が上がったわけではない。
衝撃波で吹き飛ばされるパルファのもとにユウは駆け寄る。

「げほっ!・・・大丈夫。って言いたい、ところだけど、ちょっとキツイわね」
四肢の欠損などは無かったものの、強く全身を打ち付けられて流血もあるパルファは息も絶え絶えで答える。
「でも、奴も、同じよ」
そう言うパルファの目線の先には、右腕を切り落とされた状態での力の放出により明らかに弱っているハイドの姿があった。

深呼吸をしてパルファは息を整える。
「おそらく奴の狙いは、私を排除して、光を消すこと」
「・・・暗闇に戻ったら、もう勝ち目はない」
ハイドも弱ってはいるが、パルファの光が無くなりあの常闇スキルが復活したら、一気に逆転されるだろう。

「私のこの光も、このままだと、維持できるのは5分くらい、だからユウ」
「分かった。行ってくる」
そう言ってユウはパルファを優しく横たわらせて、ハイドへと向き直った。

『ヤット・・・オワル・・・』
「あぁ、お前を倒して終わりだ」
その発言を皮切りに、2人は序盤と同じように熾烈な打ち合いを始めた。

満身創痍なハイドと、パルファのおかげで回復をし続けているユウ。
パッと見て優勢なのはユウだが、光が無くなったときに力関係は一転する。
それでなくても、ただでさえ自分は攻撃が避けられないのだ。殺傷能力が増した今のハイドの攻撃を無防備な状態で食らったら、光が失われる前だとしても終わるだろう。

慎重に、かつ確実な立ち回りで、ユウはハイドを追い詰めていく。
焦燥感が無いことによって、ユウは時間制限があるとは思えないほど精密で堅実な動きができていた。
打ち合いが始まって3分を過ぎたころ、ハイドの膝が崩れて手をつき胸元に隙ができる。
(これで終わりだ)

そう思い心臓部を貫こうと突きを放ったとき、ハイドの口元が歪んだのが見えた。
あと数センチのところでハイドは鋭敏に動いた。結果として突きの場所はズレ、このままでは致命傷とはならないだろう。
さらにハイドは、カウンターのように左手をユウの首元目掛けてふるう。鋭利な爪が生えたこの攻撃を食らえば、確実に自分の首は飛ばされるだろう。

「ユウ!!!」
遠くからパルファが叫ぶ。
迫りくるハイドの手がスローになり、ユウは二度目の走馬灯を視る。

ゼレやバラン、村の皆との生活と、最後の言葉。
春風の皆との思い出。
背後にいるパルファの命、帰りを待つリリア、大好きなアル

―――俺が生きなきゃ大切な人が悲しむ
―――大切な人を守れない
―――大好きな人に会えない

「死にたくない」と「生きたい」は、似て非なるものだ。
走馬灯を見たことによるその意識の変化ひとつで、運命は変わった。

ユウは首元に迫る攻撃を紙一重で避ける。
失った危機感頼みだった回避を、未だある生存欲求による回避へと切り替えたのだ。
驚愕に染まるハイドは、左手を振り抜き動きが取れない。再度放ったユウの突きは、吸い込まれるようにハイドの心臓部を貫き打ち砕いた。

~~~~~

「はぁ・・・はぁ・・・悔しいですねぇ・・・」
倒れこむハイドの胸には、ぽっかりと大きな穴が開いている。
少し前まで獣の風貌だったこの男は当初の人間に近い外見に戻り、ぼろぼろと身体が砂になって崩れ落ちながらも爽やかげにそう言った。

「あのタイミングで・・・克服するとは・・・ずるいですよ・・・ふふ・・・」
身体の端部から消滅しつつも、心底楽しそうに言うハイドを見てユウは考えていた。
このダンジョンは自分たちが初めての冒険者であり攻略者だ。高い知能を持ったこの男は、初めて出会って、初めて会話をした自分たちによって殺された。

この場所に生まれたというだけで縛り付けられ、この場所に生まれたというだけで孤独に死んでいく。前世の、阪東夕陽だった頃の姿と重ねて、ユウの目からは一滴の涙が落ちた。
「おや・・・まさか私を・・・憂いているのか・・・ふふふふ・・・」
ユウの顔を見て、驚いたように笑うハイド。もう首から下は砂になっている。

「黒い方は・・・あなたの折れた剣に・・・白い方は・・・彼女にあげてください・・・」
ささやかなお礼です、とハイドはそう言い残して完全に砂となった。頭部があった場所には、拳ほどの大きさの石が、白と黒でひとつずつあった。

自由を求めた孤独な魔物は、楽しさを与えてくれた人間へ贈り物をこの世からいなくなった。
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