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ノワール帝国編
奴隷商人
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「次の街までの道中、野盗がよく出没するエリアがあります。どうか気を付けてくださいね」
次の日の朝、アリスは見送りに来てくれていた。
そして野盗の情報をくれる。
「わかりました、気をつけていってきます!アリスさんもお元気で!」
「えぇ、皆さまもお元気で!」
そう言って手を振り、一行は歩き出した。
「帝国で初めてできた知り合いが、あんなに良い人でよかったよ」
「えぇ。初日はどうなるかと思ったけれど、なんだか安心したわ」
ユウの言葉にパルファも賛同する。
だがシルバとベルベットは、相変わらず自分の世界にいるようだ。
「シルバさんとベルベットさんはどうでした?」
たまには会話に引き込んでやろう。ユウはそう考えて、2人に対して話を振った。
「俺は特になにも思わなかったな」
「俺も俺もー」
・・・マイペースの極致に至った2人の回答に、話を振ったことを後悔するユウ。
なにか別の話題をと考えたとき、前方から嫌な気配を感じた。
真っ先に駆け出したのはベルベットだ。
歩行状態から一瞬で加速し、四足歩行になりそうなほど低い姿勢で走っていく。
次いでシルバ、ユウ、パルファの順でほぼ同時に駆け出す。
林道を抜けちょっとした丘を越えて目に飛び込んで来たのは、数台の荷馬車を取り囲む野盗の集団。
そしてその集団に今にも突っ込んでいく、ベルベットの姿だった。
「はええな、あいつ」
1人で野盗の集団を蹂躙するベルベットを見て、シルバがぼそっとつぶやく。
ベルベットは、戦う動きが特段速いわけではない。異常なのは反応と適応の速度だ。
野生の勘ともいうべきか、一瞬で異変を察知して動き出すその反応速度。
一瞬でトップギアまで上げて、知らない土地かつ初めて通る道の質感を掴んでそれに適した力のかけ方で走る適応能力。
天才と言われる片鱗を、ユウは目撃した。
そんなことを考えているうちに、赤髪の天才は野盗の群れを全滅させたのだった。
「よーし終わった、爽快爽快♪」
野盗たちが横たわるなかで、大空に向けて伸びをするベルベット。
「あ、ありがとうございます!傭兵の方・・・やや、冒険者様でしたな!失礼いたしました!」
荷馬車のなかから現れた男は、最初軽装のベルベットを見て傭兵だと勘違いをする。が、バッジを見て冒険者だと分かりすぐに謝った。
「私はこの先の街リブラで商人をしております、マッシュと申します!ぜひお礼をさせてください」
マッシュと名乗った商人はベルベットへ揉み手をしつつ、数台のうち1台の荷馬車の御者にサインを出して荷台を開けさせた。
その荷台のなかをみて、少し遠くにいたユウたちは驚愕する。
なかには年端もいかない男女が、首輪を付けられ乗せられていた。
そうだった。帝国は王国と違い、奴隷が認められているのだ。
「ここにいるのはまだ子供ですが、みな勤勉できっとお役に立つことでしょう。此度のお礼にぜひ1人お選びください」
そう言うマッシュに対して、ベルベットは「へー」と言いながら興味深そうに中を見始める。
「ま、まさか普通に貰ったりしないわよね?」
パルファが声を震わせながら、一部始終を心配そうに見守る。
たしかに、変わり者の領域にいるベルベットのことだ。予想だにしないことをしでかすかもしれない。
しばらく中を見たベルベットは、「よし決めた!」といってマッシュを振り返った。
「断って断って断って・・・!」
ベルベットのその晴れやかな表情をみて、パルファはもはや天へ祈りを捧げている。
そんななかベルベットが口を開いた。
「なんかムカつくから、とりあえずお前をぶっ飛ばす」
「なにをいぶべっ!」
にこやかなベルベットの右ストレートが、マッシュの顔面に吸い込まれるようにヒットした。
攻撃を受けていないはずのパルファも、その光景を見て悲鳴にならない悲鳴をあげる。
帝国に来て3日目、遂に取り返しのつかないトラブルを起こしてしまったのだった。
~~~~~
「どうしましょう・・・」
倒れ伏したマッシュを見つめて、絶望混じりにパルファがボソリとつぶやく。
当のベルベットはバツが悪そうに頬をポリポリと掻いていた。
「だってボロっちい服着て首輪つけられて、可哀想だったんだもん。俺悪くないよ」
拗ねたように言うベルベットに、パルファが冷静に説明をする。
「王国では奴隷が禁止されていますし、子供たちが縛られているのを見て怒るのも分かります。でもこの国ではこれが合法なのです。それにほら」
そう言ってパルファは、荷馬車の壁部分に貼られた紙を指さす。
「奴隷商人の認定証です。つまりこの男は、奴隷の健康管理や食事に気を遣う、真っ当な商人ということでしょう。現にあの子たちも、痩せ細ってないし体に傷も少ないでしょう?」
言われてみると、人体そのものは健康であることがうかがえる。
何より、子供たちはいきなり主人を殴り飛ばしたベルベットの方を怖がっているようだ。
「だってー・・・うううう」
困ったように髪をガシガシと掻くベルベット。
パルファも俗世に疎い彼の事情を知っている分、強くは責めれないようだ。
「でもまぁ、素直に謝るしかありませんね」
ユウがそう提案するが、シルバがそれに待ったをかける。
「奴隷が当たり前のこの国で、奴隷が可哀想だから殴ったなんて言ったら、俺たちの素性がバレるぞ」
集まって狼狽えている御者たちに聞こえないよう、シルバがそう言った。
「・・・分かったわ。ベルベットさんは荒くれ者で、ついつい殴ってしまったことにしましょう。ベルベットさん、お願いしますね?」
「ううううう分かったよー」
かなり無理やりな設定を考えて、パルファはマッシュへと回復スキルを使い始めた。
次の日の朝、アリスは見送りに来てくれていた。
そして野盗の情報をくれる。
「わかりました、気をつけていってきます!アリスさんもお元気で!」
「えぇ、皆さまもお元気で!」
そう言って手を振り、一行は歩き出した。
「帝国で初めてできた知り合いが、あんなに良い人でよかったよ」
「えぇ。初日はどうなるかと思ったけれど、なんだか安心したわ」
ユウの言葉にパルファも賛同する。
だがシルバとベルベットは、相変わらず自分の世界にいるようだ。
「シルバさんとベルベットさんはどうでした?」
たまには会話に引き込んでやろう。ユウはそう考えて、2人に対して話を振った。
「俺は特になにも思わなかったな」
「俺も俺もー」
・・・マイペースの極致に至った2人の回答に、話を振ったことを後悔するユウ。
なにか別の話題をと考えたとき、前方から嫌な気配を感じた。
真っ先に駆け出したのはベルベットだ。
歩行状態から一瞬で加速し、四足歩行になりそうなほど低い姿勢で走っていく。
次いでシルバ、ユウ、パルファの順でほぼ同時に駆け出す。
林道を抜けちょっとした丘を越えて目に飛び込んで来たのは、数台の荷馬車を取り囲む野盗の集団。
そしてその集団に今にも突っ込んでいく、ベルベットの姿だった。
「はええな、あいつ」
1人で野盗の集団を蹂躙するベルベットを見て、シルバがぼそっとつぶやく。
ベルベットは、戦う動きが特段速いわけではない。異常なのは反応と適応の速度だ。
野生の勘ともいうべきか、一瞬で異変を察知して動き出すその反応速度。
一瞬でトップギアまで上げて、知らない土地かつ初めて通る道の質感を掴んでそれに適した力のかけ方で走る適応能力。
天才と言われる片鱗を、ユウは目撃した。
そんなことを考えているうちに、赤髪の天才は野盗の群れを全滅させたのだった。
「よーし終わった、爽快爽快♪」
野盗たちが横たわるなかで、大空に向けて伸びをするベルベット。
「あ、ありがとうございます!傭兵の方・・・やや、冒険者様でしたな!失礼いたしました!」
荷馬車のなかから現れた男は、最初軽装のベルベットを見て傭兵だと勘違いをする。が、バッジを見て冒険者だと分かりすぐに謝った。
「私はこの先の街リブラで商人をしております、マッシュと申します!ぜひお礼をさせてください」
マッシュと名乗った商人はベルベットへ揉み手をしつつ、数台のうち1台の荷馬車の御者にサインを出して荷台を開けさせた。
その荷台のなかをみて、少し遠くにいたユウたちは驚愕する。
なかには年端もいかない男女が、首輪を付けられ乗せられていた。
そうだった。帝国は王国と違い、奴隷が認められているのだ。
「ここにいるのはまだ子供ですが、みな勤勉できっとお役に立つことでしょう。此度のお礼にぜひ1人お選びください」
そう言うマッシュに対して、ベルベットは「へー」と言いながら興味深そうに中を見始める。
「ま、まさか普通に貰ったりしないわよね?」
パルファが声を震わせながら、一部始終を心配そうに見守る。
たしかに、変わり者の領域にいるベルベットのことだ。予想だにしないことをしでかすかもしれない。
しばらく中を見たベルベットは、「よし決めた!」といってマッシュを振り返った。
「断って断って断って・・・!」
ベルベットのその晴れやかな表情をみて、パルファはもはや天へ祈りを捧げている。
そんななかベルベットが口を開いた。
「なんかムカつくから、とりあえずお前をぶっ飛ばす」
「なにをいぶべっ!」
にこやかなベルベットの右ストレートが、マッシュの顔面に吸い込まれるようにヒットした。
攻撃を受けていないはずのパルファも、その光景を見て悲鳴にならない悲鳴をあげる。
帝国に来て3日目、遂に取り返しのつかないトラブルを起こしてしまったのだった。
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「どうしましょう・・・」
倒れ伏したマッシュを見つめて、絶望混じりにパルファがボソリとつぶやく。
当のベルベットはバツが悪そうに頬をポリポリと掻いていた。
「だってボロっちい服着て首輪つけられて、可哀想だったんだもん。俺悪くないよ」
拗ねたように言うベルベットに、パルファが冷静に説明をする。
「王国では奴隷が禁止されていますし、子供たちが縛られているのを見て怒るのも分かります。でもこの国ではこれが合法なのです。それにほら」
そう言ってパルファは、荷馬車の壁部分に貼られた紙を指さす。
「奴隷商人の認定証です。つまりこの男は、奴隷の健康管理や食事に気を遣う、真っ当な商人ということでしょう。現にあの子たちも、痩せ細ってないし体に傷も少ないでしょう?」
言われてみると、人体そのものは健康であることがうかがえる。
何より、子供たちはいきなり主人を殴り飛ばしたベルベットの方を怖がっているようだ。
「だってー・・・うううう」
困ったように髪をガシガシと掻くベルベット。
パルファも俗世に疎い彼の事情を知っている分、強くは責めれないようだ。
「でもまぁ、素直に謝るしかありませんね」
ユウがそう提案するが、シルバがそれに待ったをかける。
「奴隷が当たり前のこの国で、奴隷が可哀想だから殴ったなんて言ったら、俺たちの素性がバレるぞ」
集まって狼狽えている御者たちに聞こえないよう、シルバがそう言った。
「・・・分かったわ。ベルベットさんは荒くれ者で、ついつい殴ってしまったことにしましょう。ベルベットさん、お願いしますね?」
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