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ノワール帝国編
兇手
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~~~ワンドside~~~
次の日、ワンドの耳に凶報が舞い込む。
『マッシュは冤罪だったらしく釈放された』という凶報。
ワンドは慌てて支度をして、マッシュの商館へと向かった。
(ゴロツキ共も帰ってきとらん・・・一体何が起こった?)
理解できない状況にイライラしつつ、ワンドを乗せた馬車はマッシュの商館にたどり着いた。
足早に馬車を降りて商館の中に入ると、そこには何事も無かったかのように掃除をするマッシュがいる。
「おぉワンド様、私の方から出向こうと思っておりましたのに、来てくれたのですね。この度は私の奴隷たちを預かっていただいたようで」
「そんなことはどうでもよい!なぜヌシがここにいる!?」
その問いに、マッシュはにこやかに答えた。
「実は先日、冒険者のご一行と親しくなりまして。その方々が私のために、事件を色々と調査してくださったのです。そして事件に深く関与する証人を見つけ出してくださいまして、晴れて自由の身となりました」
一期一会に感謝ですなと笑うマッシュに対し、ワンドの体温は急激に下がっていった。
(まさか・・・そんなはずは・・・)
最悪のケースを予想したその時、商館の扉が開かれる。
振り返るとそこには、先日会った冒険者の4人がいた。
~~~~~
「な、なんなのだお前たちは・・・」
「ただの冒険者ですよ」
恐れるような態度で言うワンドに対しユウが返す。
「あなたが殺すように指示をした男は、私たちが助けました。命を救われたからか、ペラペラと全てを話してくれましたよ」
次いでパルファがワンドに告げる。ワンドはもはや、初対面のときの余裕を見せられないほど追い詰められている。
「ゴロツキ共も全員檻の中だ。共謀した商人たちも事情聴取を受けてる。アンタのところに兵士が押し寄せるのも、時間の問題だろうな」
狼狽するワンドとは対照的に、どうでもよさそうにシルバが述べた。
そして最後に、ベルベットがワンドへ近づく。
ワンドへ顔を近づけたベルベットは、ゆっくりと口を開けた。
「たかが奴隷がひとり逃げ出しても大丈夫だと思った?ゴロツキをひとり消すなんて余裕だと思った?マッシュひとり殺すのに邪魔なんて入らないと思った?」
無感情な言葉の羅列に、ワンドは小さく悲鳴をあげる。
「お前の失敗は、人間の命を軽くみたことだよ」
見下すような冷たい目を受けて、ワンドは呻きながらその場を走って逃げ出した。
残された一同の中で、1番最初に口を開いたのはマッシュだった。
「皆様この度は、ありがとうございました。こういうことだったのですね・・・」
マッシュには助けた時点で何も言っていなかった。だがたった今目の前で起こったやり取りを見て、全貌を察したようだ。
「いいえ、お礼ならハイロに言ってあげてください。あの子が僕達に報せてくれたんです」
「ハイロ・・・ですか。分かりました」
マッシュは一瞬、ハイロという名前を思い出そうとするような素振りを見せた。
やはり多くの奴隷を抱えていると、さすがに全員は覚えていられないのかもしれない。
奴隷からしたらたった1人の旦那様でも、マッシュからしたら平等に扱うべき大勢の内の1人なのだ。
「では、ワンドの屋敷に収容されている皆を迎えに行きましょう!」
パルファの言葉に、マッシュを含め一行は外に出る。
そこにはまだワンドが乗ってきた馬車が停まっており、ワンドが馬車にすら乗らず逃げたことが分かった。
「この街はそう広いわけではない、捕まるのは時間の問題でしょう」
「我々も、念の為捕まったという情報が入るまでは滞在します」
マッシュの言葉にパルファがそう返すと、マッシュは思い出したかのように話を始める。
「そうです!お2人には調べると伝えたこともありましたね!皆を迎えに行き次第、すぐに調べましょう!」
優しい笑顔で話すマッシュ。この笑顔を守れてよかったと、ユウは感じたのだった、
~~~~~
同日の晩、先日の男のようにコソコソと足速に闇を駆ける存在がいた。
今回の事件の首謀者であり朝まで商会長だった男、ワンドだ。
ワンドが先日の男と違う点は、目に見える追っ手の存在だ。
先日の男はガラの悪いゴロツキだったが、ワンドはきちっとした兵士に捜索されている。
ワンドはあの後、別邸に隠していた資産を取りに行き、今街を出ようとしていた。
兵士の1人には、巨額の金を握らせてある。そいつは今門に居るので、自分を素通りさせる予定だ。
その後は賭けになるが、隣町まで行けさえすれば金を使ってどうとでもできる。
老い先短い一生を何もせずに済む程度の資産はあるため、この街さえ出れれば何もかもが問題ないのだ。
慎重に門へと近づいていき、ようやく門が視認できる距離まで来たとき異変に気づく。
見張りの兵士たちが多く、なにやら騒がしいのだ。
内通していた兵士がヘマをやらかしたと焦ったとき、物陰の近くを通った兵士の声が聞こえた。
「門の見張りが殺されたらしい。これも逃亡犯ワンドの仕業か」
「もうすでに街の外かもな・・・」
その内容にワンドは驚愕する。自分がこの街にもう居ないと思われているのは朗報だが、殺人犯にされるのはたまったものではない。
そんなとき、ふいにワンドは胸の当たりに熱いものを感じる。
ゆっくり下を見ると、ワンドの胸からは刃が飛び出し、赤々とした血が染み出している。
「っ!っっ!」
突然の出来事に、捜索されている身分であることを忘れて叫び出そうとしたが、ちょうどのタイミングで背後から口を押さえられる。
そう。先日の男との違いは目に見える追っ手、そして目に見えない追っ手の存在だったのだ。
王国と帝国を創ったのは、ノワール・ネグザリウス。
その血は王国において、王と勇者の血筋に分かれた。
そして帝国においても、王家と派生した存在がある。
それは『兇手』と呼ばれる存在。
王国の勇者が魔王を滅するのに対し、悪に染まった人間を滅する存在。
調和を乱す人間を、時代によっては王の血筋であっても始末してきた存在。
それは今夜も帝国の闇に紛れて、1人の男を暗殺した。欲に目が眩んだ協力者の兵士も殺した。
路地裏の闇の中で、もがく力すら入らなくなったワンドは理解する。
奴隷に対し自分がバカにしていた、生にしがみつくという気持ちを。
街灯が照らす方へ手を伸ばし、なんとか生きようとした最後の努力も虚しく、ワンドは完全に事切れたのだった。
次の日、ワンドの耳に凶報が舞い込む。
『マッシュは冤罪だったらしく釈放された』という凶報。
ワンドは慌てて支度をして、マッシュの商館へと向かった。
(ゴロツキ共も帰ってきとらん・・・一体何が起こった?)
理解できない状況にイライラしつつ、ワンドを乗せた馬車はマッシュの商館にたどり着いた。
足早に馬車を降りて商館の中に入ると、そこには何事も無かったかのように掃除をするマッシュがいる。
「おぉワンド様、私の方から出向こうと思っておりましたのに、来てくれたのですね。この度は私の奴隷たちを預かっていただいたようで」
「そんなことはどうでもよい!なぜヌシがここにいる!?」
その問いに、マッシュはにこやかに答えた。
「実は先日、冒険者のご一行と親しくなりまして。その方々が私のために、事件を色々と調査してくださったのです。そして事件に深く関与する証人を見つけ出してくださいまして、晴れて自由の身となりました」
一期一会に感謝ですなと笑うマッシュに対し、ワンドの体温は急激に下がっていった。
(まさか・・・そんなはずは・・・)
最悪のケースを予想したその時、商館の扉が開かれる。
振り返るとそこには、先日会った冒険者の4人がいた。
~~~~~
「な、なんなのだお前たちは・・・」
「ただの冒険者ですよ」
恐れるような態度で言うワンドに対しユウが返す。
「あなたが殺すように指示をした男は、私たちが助けました。命を救われたからか、ペラペラと全てを話してくれましたよ」
次いでパルファがワンドに告げる。ワンドはもはや、初対面のときの余裕を見せられないほど追い詰められている。
「ゴロツキ共も全員檻の中だ。共謀した商人たちも事情聴取を受けてる。アンタのところに兵士が押し寄せるのも、時間の問題だろうな」
狼狽するワンドとは対照的に、どうでもよさそうにシルバが述べた。
そして最後に、ベルベットがワンドへ近づく。
ワンドへ顔を近づけたベルベットは、ゆっくりと口を開けた。
「たかが奴隷がひとり逃げ出しても大丈夫だと思った?ゴロツキをひとり消すなんて余裕だと思った?マッシュひとり殺すのに邪魔なんて入らないと思った?」
無感情な言葉の羅列に、ワンドは小さく悲鳴をあげる。
「お前の失敗は、人間の命を軽くみたことだよ」
見下すような冷たい目を受けて、ワンドは呻きながらその場を走って逃げ出した。
残された一同の中で、1番最初に口を開いたのはマッシュだった。
「皆様この度は、ありがとうございました。こういうことだったのですね・・・」
マッシュには助けた時点で何も言っていなかった。だがたった今目の前で起こったやり取りを見て、全貌を察したようだ。
「いいえ、お礼ならハイロに言ってあげてください。あの子が僕達に報せてくれたんです」
「ハイロ・・・ですか。分かりました」
マッシュは一瞬、ハイロという名前を思い出そうとするような素振りを見せた。
やはり多くの奴隷を抱えていると、さすがに全員は覚えていられないのかもしれない。
奴隷からしたらたった1人の旦那様でも、マッシュからしたら平等に扱うべき大勢の内の1人なのだ。
「では、ワンドの屋敷に収容されている皆を迎えに行きましょう!」
パルファの言葉に、マッシュを含め一行は外に出る。
そこにはまだワンドが乗ってきた馬車が停まっており、ワンドが馬車にすら乗らず逃げたことが分かった。
「この街はそう広いわけではない、捕まるのは時間の問題でしょう」
「我々も、念の為捕まったという情報が入るまでは滞在します」
マッシュの言葉にパルファがそう返すと、マッシュは思い出したかのように話を始める。
「そうです!お2人には調べると伝えたこともありましたね!皆を迎えに行き次第、すぐに調べましょう!」
優しい笑顔で話すマッシュ。この笑顔を守れてよかったと、ユウは感じたのだった、
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同日の晩、先日の男のようにコソコソと足速に闇を駆ける存在がいた。
今回の事件の首謀者であり朝まで商会長だった男、ワンドだ。
ワンドが先日の男と違う点は、目に見える追っ手の存在だ。
先日の男はガラの悪いゴロツキだったが、ワンドはきちっとした兵士に捜索されている。
ワンドはあの後、別邸に隠していた資産を取りに行き、今街を出ようとしていた。
兵士の1人には、巨額の金を握らせてある。そいつは今門に居るので、自分を素通りさせる予定だ。
その後は賭けになるが、隣町まで行けさえすれば金を使ってどうとでもできる。
老い先短い一生を何もせずに済む程度の資産はあるため、この街さえ出れれば何もかもが問題ないのだ。
慎重に門へと近づいていき、ようやく門が視認できる距離まで来たとき異変に気づく。
見張りの兵士たちが多く、なにやら騒がしいのだ。
内通していた兵士がヘマをやらかしたと焦ったとき、物陰の近くを通った兵士の声が聞こえた。
「門の見張りが殺されたらしい。これも逃亡犯ワンドの仕業か」
「もうすでに街の外かもな・・・」
その内容にワンドは驚愕する。自分がこの街にもう居ないと思われているのは朗報だが、殺人犯にされるのはたまったものではない。
そんなとき、ふいにワンドは胸の当たりに熱いものを感じる。
ゆっくり下を見ると、ワンドの胸からは刃が飛び出し、赤々とした血が染み出している。
「っ!っっ!」
突然の出来事に、捜索されている身分であることを忘れて叫び出そうとしたが、ちょうどのタイミングで背後から口を押さえられる。
そう。先日の男との違いは目に見える追っ手、そして目に見えない追っ手の存在だったのだ。
王国と帝国を創ったのは、ノワール・ネグザリウス。
その血は王国において、王と勇者の血筋に分かれた。
そして帝国においても、王家と派生した存在がある。
それは『兇手』と呼ばれる存在。
王国の勇者が魔王を滅するのに対し、悪に染まった人間を滅する存在。
調和を乱す人間を、時代によっては王の血筋であっても始末してきた存在。
それは今夜も帝国の闇に紛れて、1人の男を暗殺した。欲に目が眩んだ協力者の兵士も殺した。
路地裏の闇の中で、もがく力すら入らなくなったワンドは理解する。
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