歪な戦士の異世界転生録 〜授かった【変換】スキルが尖り過ぎてて異常な性能を得る〜

チャド丸

文字の大きさ
104 / 108
ノワール帝国編

黒く染まるなら

しおりを挟む
ワンドが死んだという報せがリブラの街に広がるのは早かった。
ユウたち一行も起きてすぐ、宿屋の主人から噂を聞いたのだ。
「一体だれが・・・」
呟くユウに対し、パルファとシルバは何か心当たりがあるかのような面持ちをしている。

ユウがそれを聞こうとしたとき、宿屋にマッシュが現れた。
「皆様おはようございます!・・・その様子では、聞いたようですね?」
マッシュの問いかけに一同は頷く。

「今回の一件、やはり『兇手』の仕業だろうと言われております。ワンド・・・さんのような人間が、資金を持って逃亡すると危険なので、始末されたのだと」
その兇手とはなんですか?と質問したい気持ちを、ユウはぐっと押さえつけた。

話しぶりからするに、この兇手という存在は帝国にいれば当然知っていることなのだろう。
そんな存在について質問をしたら、それはもはや自分は帝国民ではないと自白するようなものだ。

「おっとすみません、それではなく調べていた件についてお知らせに来ました。まずはユウ殿、ゲノム殿の居場所でこざいますが、商人仲間に聞いても皆心当たりが無いそうでして・・・」
「そうですか・・・分かりました」
バツが悪そうに言うマッシュに、ユウは笑いながら返事をする。

もともと、なんとなくそんな気はしていたのだ。
それにもし分かっても、今すぐ会いに行くことはできない。
ユウがそう考えて納得をすると、マッシュは次にパルファへと話題を切り出す。

「そしてパルファ殿。魔石の加工でございますが、帝都にどうやら魔石を加工できる職人がいるようです。名はヨウム、と」
「っ!そうですか、ありがとうございます!」
パルファはどうやら、自分が未だ原石のまま持つハイドの魔石について聞いていたらしい。
そして芳しい返事を聞けたことに喜んでいるようだ。

すると外から、マッシュを呼ぶ声がする。
「はい、今行きますので」
「マッシュさん、どうかされたんですか?」
ユウが聞くと、マッシュは困ったように笑いながら答える。

「実はワンドさんの後任の商会長として、仲の良い商人仲間から推薦されてまして。これからその打ち合わせなのです」
「そうなのですね!では、我々とはここで・・・ですね」
今日、ユウたち一行はこの街を出る。元々ひとつの街に数泊するつもりはなかったのだ。

「はい。皆様のおかげでこの命は2度も救われました。皆様の旅路に、幸多からんことを」
「ふふふっ、それも2度目ですね。ありがとうございます」
パルファの言葉に少しキョトンとしたマッシュだが、外からの急かす声に慌てて一礼をして出ていった。

「じゃ、そろそろ僕らも行こうか」
ユウがそう言って、一行も宿屋をチェックアウトして街を出るために歩き出した。

~~~~~

「暗殺系統のユニークホルダー・・・」
「えぇ。帝王の分家で、王国でいう勇者のポジションに位置する存在よ」
街を出たあと、ユウは朝から気になっていた『兇手』という存在について聞いた。

(以前アランが言っていた『帝国のアイツ』は、兇手のことか・・・)
暗殺系スキルに特化した勇者に並び立つ者。
魔王でなく人間を裁く兇手が、ワンドを断罪したということを理解した。

「でも、悪人だけを裁くのであれば問題ないですね」
「・・・そう、ね。でも過去には危険因子とみなされ、まだ罪を犯していないのに殺された者もいると聞いているわ」
そう言うパルファが少し痛むような顔をしたのを、ユウは見逃していた。

一行はそのまま、次の街へと歩き続ける。


~~~パルファside~~~


リブラの街を出た一行は、もうひとつ街を超えて野営をすることにした。
野営はシルバの提案だったが、全員がリブラに滞在した分を取り戻したいと考えたために満場一致で決まった。

そして交代で火の番をすることとなり、今はパルファの番だった。ぱちぱちと音を立てて燃える焚き火を見つめて、パルファは昼間のユウの言葉を思い出す。

『でも、悪人だけを裁くのであれば問題ないですね』

悪人を殺すことになんの躊躇いも無いその言葉。
周囲の人や経験に影響されやすいユウのことだ。きっとその意識は先日の、アランの一件で芽生えたものだろう。
もしくは住んでいた村を盗賊に襲われた時から、その種は植えられていたのかもしれない。

だがいかなる悪人相手でも、殺人による粛清は許されてはいけない。
でなければメリィだって、手にかけた貴族たちの遺族に殺されてよいこととなってしまう。

パルファはユウのことを気に入っている。
勇者とパートナーとしても、異性としても。
だからこそ感受性が強いユウが、今後経験していくことは注意しなければならない。
ユウは白くも黒くも染まりやすいのだから。

(もし、黒く染まったときは・・・)
夜の暗闇のなかで、パルファの瞳には火が映っていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

《カクヨム様で15000PV達成‼️》悪魔とやり直す最弱シーカー。十五歳に戻った俺は悪魔の力で人間の頂点を狙う

なべぞう
ファンタジー
ダンジョンが生まれて百年。 スキルを持つ人々がダンジョンに挑む世界で、 ソラは非戦闘系スキル《アイテムボックス》しか持たない三流シーカーだった。 弱さゆえに仲間から切り捨てられ、三十五歳となった今では、 満身創痍で生きるだけで精一杯の日々を送っていた。 そんなソラをただ一匹だけ慕ってくれたのは―― 拾ってきた野良の黒猫“クロ”。 だが命の灯が消えかけた夜、 その黒猫は正体を現す。 クロは世界に十人しか存在しない“祝福”を与える存在―― しかも九つの祝福を生んだ天使と悪魔を封印した“第十の祝福者”だった。 力を失われ、語ることすら封じられたクロは、 復讐を果たすための契約者を探していた。 クロは瀕死のソラと契約し、 彼の魂を二十年前――十五歳の過去へと送り返す。 唯一のスキル《アイテムボックス》。 そして契約により初めて“成長”する力を与えられたソラは、 弱き自分を変えるため、再びダンジョンと向き合う。 だがその裏で、 クロは封印した九人の祝福者たちを狩り尽くすための、 復讐の道を静かに歩み始めていた。 これは―― “最弱”と“最凶”が手を取り合い、 未来をやり直す物語

ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…

アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。 そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!

~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】 【複数サイトでランキング入り】 追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語 主人公フライ。 仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。 フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。 外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。 しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。 そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。 「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」 最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。 仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。 そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。 そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。 一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。 イラスト 卯月凪沙様より

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

処理中です...