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「よし、数値は正常だね」
「良かった」
身体には特になにも変化は見られなかったようで一安心した。
「発情期の傾向もなさそうかい?」
「その発情期って、近付くと分かるものなんですか?」
あとにも先にも、発情期になったのはあの日だけ。急な体調不良で身体の言うことが全く効かなくなる。あれを再び味わうのかと思うと、気が引けてしまう。
「個人差があると思うんだけどね。君の場合は、前回みたいに体調が悪いと感じる日が続くかもしれない」
「それって、抑制剤じゃどうにもならないんですか?」
オメガの中には抑制剤で発情期を抑えて、ベータとして生活を送っている人たちもいると聞いたことはある。それが可能であるのなら、律としてはそうして生きていきたい。
「ある程度なら抑制剤で抑えられるよ。ただ、音無くんの身体はオメガに変異したばかりだからね」
どの抑制剤が効くのか、そもそも抑制剤を使用しても問題ないのか、色々と情報が不足していて下手な薬は使えないらしい。
申し訳なさそうな黒川に、律まで申し訳ない気持ちになってしまった。
「大変だとは思うけど、少しずつ試していってみよう」
「はい、よろしくお願いします」
前回の発情期の件で、律は一つ気になることを思い出す。
「あの」
「ん? 気になることでもあるのかい?」
「この間の発情期のことなんですけど……」
急な体調不良の他にもう一点、身体に変わったことがあったことを黒川に告げる。
「匂い、か」
「はい」
花のような、香水のような、あの不思議な匂い。あれからその香りは感じ取れていないが、あれもオメガ特有のものなのだろうか。
「そのときに近くにいたのは、伊織先輩だよね?」
「そうです」
うーん、と考え込んでしまった黒川。由々しい問題なのかもしれないと、律も緊張してしてしまう。
「音無くんさ、その匂いどう感じた?」
「どう、ですか? 不快ではなかったです。どちらかと言うと良い匂いでした」
「そっかー……良い匂いだったのか」
それを聞いた黒川の表情はとても複雑そうだった。匂いの善し悪しはそんなに大事なものだったのか。
「いや、まだそうと確定したわけじゃないからなぁ」
「黒川先生?」
「あぁ、ごめん。不安にさせるつもりじゃなかったんだ」
オメガとアルファの間にも相性は存在する。あのときに感じたのは相手のフェロモン匂いなのだと説明してくれた。
香りが自分にとって良い香りであれば、その相手とは相性が良いのだそうだ。
「アルファがオメガのフェロモンに当てられるのは、良くあることなんだけど」
逆にアルファのフェロモンに当てられ、それによって発情期を引き起こされた可能性もゼロではないらしい。
「バース変異を引き起こすほどのアルファのフェロモン……伊織先輩本当に何者なんだろう」
「えっと……それじゃ、僕は紫藤さんのフェロモンのせいでああなってしまったと言うことですか?」
「その可能性は高いかもしれない」
大学内に他のアルファがいるのなら、また話は変わってくると言うが、あの大学には他にアルファがいると言う話は聞いたことがなかった。
「そうすると、また別の問題がなぁ」
次から次へと、この短い期間でよく問題が起こるものだ。そんな事態にもそろそろ慣れてきてしまった。
「音無くんさ、運命の番って聞いたことあるかい?」
「……ちょっと、待ってください? それってまさか」
「そう、そのまさかかもしれないんだよね」
前言撤回しよう。慣れるわけがなかった。
つい最近聞いたばかりの言葉に、律の頭は真っ白になる。誰と、誰が、運命の番だと? いや、まだ決まったわけではないけれど!
「伊織先輩にも聞いてみないと断定は難しいけど、可能性は高いよ」
「そんな……」
これが普通のオメガであれば、喜ばしい事態なのだろう。従兄弟の望のように、幸せになれたのかもしれない。
普通ではない律にとって、この事態は更に頭を悩ませる要因にしかならなかった。
考えてもみろ、相手はレイプ紛いのことをしでかした男だ。確かにルックスだけは申し分ないけれど。
「帰ったら、伊織先輩にもこの話をしてみたらどうだい?」
会話をする切っ掛けにもなるし。苦笑しながらそう言う黒川に、律は乾いた笑いを浮かべるしか出来なかった。
「良かった」
身体には特になにも変化は見られなかったようで一安心した。
「発情期の傾向もなさそうかい?」
「その発情期って、近付くと分かるものなんですか?」
あとにも先にも、発情期になったのはあの日だけ。急な体調不良で身体の言うことが全く効かなくなる。あれを再び味わうのかと思うと、気が引けてしまう。
「個人差があると思うんだけどね。君の場合は、前回みたいに体調が悪いと感じる日が続くかもしれない」
「それって、抑制剤じゃどうにもならないんですか?」
オメガの中には抑制剤で発情期を抑えて、ベータとして生活を送っている人たちもいると聞いたことはある。それが可能であるのなら、律としてはそうして生きていきたい。
「ある程度なら抑制剤で抑えられるよ。ただ、音無くんの身体はオメガに変異したばかりだからね」
どの抑制剤が効くのか、そもそも抑制剤を使用しても問題ないのか、色々と情報が不足していて下手な薬は使えないらしい。
申し訳なさそうな黒川に、律まで申し訳ない気持ちになってしまった。
「大変だとは思うけど、少しずつ試していってみよう」
「はい、よろしくお願いします」
前回の発情期の件で、律は一つ気になることを思い出す。
「あの」
「ん? 気になることでもあるのかい?」
「この間の発情期のことなんですけど……」
急な体調不良の他にもう一点、身体に変わったことがあったことを黒川に告げる。
「匂い、か」
「はい」
花のような、香水のような、あの不思議な匂い。あれからその香りは感じ取れていないが、あれもオメガ特有のものなのだろうか。
「そのときに近くにいたのは、伊織先輩だよね?」
「そうです」
うーん、と考え込んでしまった黒川。由々しい問題なのかもしれないと、律も緊張してしてしまう。
「音無くんさ、その匂いどう感じた?」
「どう、ですか? 不快ではなかったです。どちらかと言うと良い匂いでした」
「そっかー……良い匂いだったのか」
それを聞いた黒川の表情はとても複雑そうだった。匂いの善し悪しはそんなに大事なものだったのか。
「いや、まだそうと確定したわけじゃないからなぁ」
「黒川先生?」
「あぁ、ごめん。不安にさせるつもりじゃなかったんだ」
オメガとアルファの間にも相性は存在する。あのときに感じたのは相手のフェロモン匂いなのだと説明してくれた。
香りが自分にとって良い香りであれば、その相手とは相性が良いのだそうだ。
「アルファがオメガのフェロモンに当てられるのは、良くあることなんだけど」
逆にアルファのフェロモンに当てられ、それによって発情期を引き起こされた可能性もゼロではないらしい。
「バース変異を引き起こすほどのアルファのフェロモン……伊織先輩本当に何者なんだろう」
「えっと……それじゃ、僕は紫藤さんのフェロモンのせいでああなってしまったと言うことですか?」
「その可能性は高いかもしれない」
大学内に他のアルファがいるのなら、また話は変わってくると言うが、あの大学には他にアルファがいると言う話は聞いたことがなかった。
「そうすると、また別の問題がなぁ」
次から次へと、この短い期間でよく問題が起こるものだ。そんな事態にもそろそろ慣れてきてしまった。
「音無くんさ、運命の番って聞いたことあるかい?」
「……ちょっと、待ってください? それってまさか」
「そう、そのまさかかもしれないんだよね」
前言撤回しよう。慣れるわけがなかった。
つい最近聞いたばかりの言葉に、律の頭は真っ白になる。誰と、誰が、運命の番だと? いや、まだ決まったわけではないけれど!
「伊織先輩にも聞いてみないと断定は難しいけど、可能性は高いよ」
「そんな……」
これが普通のオメガであれば、喜ばしい事態なのだろう。従兄弟の望のように、幸せになれたのかもしれない。
普通ではない律にとって、この事態は更に頭を悩ませる要因にしかならなかった。
考えてもみろ、相手はレイプ紛いのことをしでかした男だ。確かにルックスだけは申し分ないけれど。
「帰ったら、伊織先輩にもこの話をしてみたらどうだい?」
会話をする切っ掛けにもなるし。苦笑しながらそう言う黒川に、律は乾いた笑いを浮かべるしか出来なかった。
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