短編小話

kuro

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天使に遭遇した日

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人は生まれたら一人一人に天使がついてくれて、その人を守り続けている…というのが昔から信仰されている僕の家の宗教の教えの1つだった。

僕はその教えに従って困っている人が居たら積極的に手を貸すことを心がけていた。そのおかげもあってか何度か表彰されたこともあったし、なにより周りの人達と良好な関係を築くことができていた。
しかし、そんな僕のことをよく思わない人もいるらしく、僕はそんな人たちに様々な嫌がらせなどをうけていた。

今日も教室で堂々とカツアゲをされている。僕の周りには3人のクラスメイトが立っていた。

「日々喜~今日も金持ってきたか?」

「今日は持ってきてない」

「どういうことだよ」

「持って来いっていつも言ってるよな?」

「ごめん。勿体ないから」

「どういうことだよ」

「お前舐めてるのか?」

「舐めてないけど」

こんな調子だ。こういう人に優しくする必要はないと教わっているから、僕は厳しく接する。
好きでもない人と絡むのはそれだけで時間の無駄だから。こうやってあしらっているといつも向こうから拳が飛んでくる。そのせいで何度か怪我を負ってしまったこともあったが、それでもこういう態度を一貫して取り続けていた。


ーーー

その日は珍しく大きめの怪我を負っていた。階段から落ちたのだ。少し時間は経っているが、かなり痛い。
フラフラと歩きながら家まで辿り着くと、僕は家の玄関を開いた。
部屋に戻って怪我の様子を見る。青く腫れてしまっていて酷い状態だった。

「冷やさないと…」

リビングに行って氷を取りに行く。階段を下る時が凄く痛みを感じた。リビングには母さんが居て、僕の様子を見ると顔色を変えて事情を話せと迫った。

「どうしたの日々喜?!その怪我は!」

「階段から落ちたんだ。不注意だったんだ。」

「病院に行って見てもらわないと!骨にヒビいってるかもしれないわよ」

たしかに…でも歩けていることは歩けているしな……

「いや、いいよ。氷だけ貰っていくね」

袋に氷を詰めて足につける。部屋に戻ってくると鞄から教典を取り出した。

「神様…これで良かったのでしょうか?僕は今日も手を出していませんでした。僕は今日彼らに傷つけられてしまいました。このままでは神様の愛する信仰者の一人が殺されてしまいます。どうかお助け下さい」

「分かりました、その願いを受諾しましょう」

そんな声が聞こえたのは、おそらく気のせいか、きっと俺の頭が狂ってしまっていたからだろう。
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