婚約さえ出来ない令嬢はストレス発散にこっそりダンジョンに潜ります~S級冒険者や第一王子が私に言い寄ってきてますが気のせいでしょう~

柊彼方

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ダンジョンへ

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「はぁ…………」

 私は一人、教室でため息を吐いた。

 現在時刻は四時半。今日の授業はもう全て終了である。
 今日の授業は先生も気を使ったのか座学がメインで、実践授業は一、二時間程度しかなかった。
 ちなみに現在、この教室には私と一人の男しかいない。

「なんでそんなに疲れてるの?」
「誰かさんが一日中話しかけてくるからかしらね」
「それは可哀そうに…………」

 私は隣にいるマルクにドストレートの皮肉を言った。
 しかし、マルクは皮肉だとは気づいていないのか、私に同情するような視線を向けてくる。

『これは何?』『これはどうなってるの?』『ねぇこれ面白くない? ツボなんだけど!』

 これは座学中にマルクが私に話しかけてきた一部のセリフだ。
 私は全て数えている。五時間の座学で計百五十回は話しかけられた。

 別に私だって今まで特にまともに授業は受けてこなかった。なのでそこまで文句を言える立場ではない。
 だが、流石に鬱陶しくもなってくる。かまってちゃんなのだろうか。
 実際これが私の罪なのかと思ってしまうほどダル絡みだった。

「ねぇ、今日の魔法はどれが一番良かった?」
「そうね…………どれもよかったわ!」
 
 私は思い出すのも面倒なので適当にマルクの問いに答える。

 実践訓練ではマルクは学習したのか昨日のように危険な魔法は行使しなかった。
 しかし、それでも私に自慢したいのか珍しい魔法や先生も知らない魔法を私に見せてくるのだ。
 
「本当!? それは良かったよ!」

 私の適当な返事にもマルクは本心から嬉しそうに喜んだ。
 そこまで嬉しそうにされたら少し罪悪感に苛まれてしまいそうになる。

 しかし、マルクの本性とは何なのだろうか。
 昨日の大人びた態度とは違い、今日はまるで子供のような態度。
 やはりマルクという男はそこが知れない。
 まぁ私が死刑にならなかっただけでもマシではあるのだが。

 ガラガラガラ

「…………え、エリス様!?」
「あ、キール」

 教室の後ろからガラガラと扉が開いた音が聞こえた。
 私がゆっくりと振り返るとそこにはキールが棒立ちしている。いつものように迎えに来てくれたのだろう。

「な、な、なんで殿下様がいるんですかぁ!?」
「あ、確か君はキール君だったよね?」

 キールは私の隣に座っているマルクを見て素っ頓狂な声を上げた。
 そうだ。キールは私の隣のクラス。マルクが私たちとクラスメイトになったことは知らないはずだ。

 このクラスには口外禁止令が出ている。
 昨日はマルクが早退したためキールは会うことがなかったのだ。

「改めて。俺はマルク・ヴァルキリー。このクラスで魔術について学ぶことになったんだ。よろしくね」
「…………はああああああああああぁぁぁぁぁぁ!?」

 キールは稀に見るほどの絶叫を私たちに見せる。
 私たちの昨日の反応もこんな感じだったのだろうか。少し恥ずかしくなってきた。

「良かったの? マルク?」
「うん、どうせ口外禁止令なんて応急処置みたいなもんだよ。直ぐにどうせ広まる」

 まぁ人間の口約束など脆い。マルクの言う通り守られ続けるのは不可能だろう。
 だが、もし本当にマルクがエレメンタルに入ったと情報が広まるとなると貴族社会がどれほど動揺が広がることか。
 
 するとキールは私たちを指差してあたふたとなりながらも言った。

「なっ! い、いつの間にそんなに仲良くなっているんですか!?」

 まぁ私でもマルクが王族なんて少し信じがたい。
 先ほども言った通り、どこかマルクは普通の王族とは違うのだ。
 そのため、そこまで気軽に話せるとまではいかないが、距離が縮まったのかもしれない。

 すると、マルクはゆっくりと席から立ち上がりキールの正面に立つ。
 どうしたのだろうか。そう思った時にはマルクは口を開いていた。

「ごめんな。キール…………俺は本気、、だ」

 貫禄と言えばいいだろうか。そのマルクの表情にはどこか真剣みがある。
 その態度に何か感づいたキールも表情を少し歪めながら頷いた。

「…………エリス様。もうすでに馬車は呼んであります。今日はお先にお帰りください」

 男と男の何とか、というやつだろうか。
 二人とも対面するのが二度目とは思えないほどの真剣な表情を浮かべていた。
 しかも、キールが私を一人で帰らせるなど今まで一度もない。それほど重要な話をするということだろう。

「…………分かったわ」

 そう。私は空気が読める人間である。
 ここで何故? などと野暮な質問をするような人間ではないのだ。

 私は少しドヤ顔をしながら二人に背を向けて教室を出た。
 さぁ今日はダンジョンに潜ろう。
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