【完結】魔物をテイムしたので忌み子と呼ばれ一族から追放された最弱テイマー~今頃、お前の力が必要だと言われても魔王の息子になったのでもう遅い~

柊彼方

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グレーの秘策

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「【部分展開サイドアームズ】!」

 俺はそう叫び全身の気を両足に流し込む。

 気。それは五感の上位互換のようなものだ。
 魔力とは全く別物である。
 これは母が得意としていた技術であり、極めれば魔力感知なども可能だ。
 魔王も気を扱っていたが無自覚だろう。

 そもそも、これは誰も会得していない秘術のようなものだ。
 だから、親父も知っているはずがない。

「……………………なッ!」
「お邪魔するぜ。餓狼族ヴェアウルフの狩場に」

 俺は地を蹴り一瞬で親父のいる上空までたどり着く。

「………………ぐはッ!」

 そして、余裕ぶっていた親父の頬にけりをめり込ませた。

「……………ちッ! だがそれもいつま――」

 それもいつまでもつか。
 親父はそう言いたかったのだろう。
 しかし、親父は俺を見てその言葉を止めた。
 その理由は……

「な、なんでお前が上空で体制を維持できてるんだぁ!」

 俺が空中で留まっていることが出来ているからだ。
 これで親父のアドバンテージがなくなる。

 ブンブンブン!

「これが俺の飛び方だ!」
「……………………」

 俺はかっこつけて親父の前でポーズを決めるも親父からの反応は帰ってこない。
 何故だろうかと、俺は親父の方を見るとそこには今まで見たことのないような親父の間抜け顔があった。
 そして、

『『『『おおおおおおおおおおおぉぉぉ!』』』』

 二階からだろうか。
 大地を揺らすほどの大きな声が響き渡る。
 すると、親父は俺に同情するような目で聞いてきた。

「……………………おい。それ真面目に言ってるのか?」
「当たり前だろ! アドバンテージがなくなったからって逃げるような言い訳するなよ?」

 俺がそう言い返すと、親父は前足で自分の頭を抱えるようにしてぶつぶつと何か言い始めた。

「俺の教育法が間違ってたのか。やっぱりスパルタはダメなのか。子供の頃に俺がやり過ぎたせいでこんな脳筋になってしまったのか」
「グチグチうるさい!」

 俺はその親父の態度に少しイラつき声を荒げて言った。
 すると、親父は本当に悲しそうな表情でこちらを見てきた。

「ごめんな。不良品だなんて言って。俺はそれをバネに成長してほしかっただけなんだ」
「…………は? 負けそうになるからって急に謝りだすとか親父らしくないんじゃ――」

 いつもの傲慢な態度とは違い、しおらしい親父の態度に俺は少し唖然としてしまった。
 しかし、俺のその考えは杞憂だったようだ。
 俺の言葉を遮るように親父は吠える。

「そりゃあ頭抱えたくもなるわ! ボケ! まさかここまで重傷だったとは…………」
「さっきから何を言ってるか分からないんだけど!」
 
 俺がそう言い返すと親父は俺の足元を指さして唾をまき散らしながら口を開いた。

「え⁉ 何鳥みたいに足をパタパタさせてるの⁉ いや、まだ子供ならわかるけどね⁉ 何でそんな発想で飛ぼうとするかな⁉ しかも何でそれが成功できてるのかな⁉」
「……………………あ、いや出来るかなぁと思って」

 俺はその親父の謎の気迫に押し負け、つい敬語で返してしまう。
 いつもの荒々しい親父は何処に行ったのやら。

 今の俺は、上空で親父と同じ目線で話をしている。
 何故、魔法も使えない俺が空中に維持できているのか。
 それは足を物凄い速さで振り続けているからだ。

 足を全力で鳥の羽ように振ることによって下降気流が生まれる。
 俺はそれを生み出し続け、飛んでいるのだ。

 我ながら完璧な作戦だと思う。
 成功するかしないかは賭けだったが出来たので終わり良ければ総て良しであろう。

 しかし、親父はその俺の技術を認めようとしない。
 まぁ最初から親父が頑固なのは知っていたことだ。
 俺に実力で追いつかれるのが嫌なのだろう。

「いや、本当になんでそんなことできるの⁉ え? 魔族って筋肉だけで空飛べるもんなの⁉」
「もう言い訳はその辺にしろよ! オラッ!」

 俺はグダグダ言っている親父に向かって拳を放つ。
 だが、親父は風を自在に操り、俺の拳を避けた。
 
「…………ゴホンッ! ま、ま、まぁ? お前が上空に来たからって実力差が埋まるわけじゃねぇからな!」

 わざとらしい咳をした親父は少し動揺しながらそう言った。
 俺が空を飛べていることに驚いているのだろう。

 本当は親父はが飛べていることよりも俺の足パタパタ作戦が成功していることに、脳がパンクしそうになっていることを知る由もない。

「おりゃああああああぁぁ!」
「お、おりゃあ」

 俺は今までの怨念を全て絞り出すかのように吠え、親父に向かって空中で足をパタパタとさせながら突撃した。
 親父は今でも現状が理解できていないような表情で俺に立ち向かう。

 こうして、空中での第二ラウンドが始まった。 
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