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「父さんに話せばすぐに解決してくれるんじゃないの?」
正直言って俺の力を借りたいというのは俺自身ではなく、その配下の力だろう。
その苛立ちを少しだけ含みながら俺はそう口にした。
しかし、ランドロフは首を横に振る。
「魔王様には助力はもらえなかったんだ。自分たちだけで何とかしろとのことらしい。ということは僕たちが手を組めば何とかなるということだよ」
どれだけ魔王に調教されたのか。
魔王の言葉が絶対だと信じ切っているランドロフはそう確信しているように言った。
しかし、俺は知っている。
魔王は超人でも神でもない。ただ少し桁外れに強い魔族であるということを。
「…………そうだとしても俺は今、その頼みの綱の召喚魔法を――」
「僕は一言も召喚魔法なんて言っていない」
「……………………え?」
俺は遮るようにしてランドロフが言った言葉に唖然と口を開いてしまう。
そんな俺を放ってランドロフは続けて口を開く。
「僕は君の配下に興味があるわけじゃない。君自身に興味があるんだ」
「いや、俺はただの人間で…………そこらの魔族に負けるほど弱いってことを知ってもそんなこと言える?」
普通の人なら答えにくい場面であっただろう。
しかし、ランドロフは眉一つ動かさずに首を縦に振った。
「ああ。僕は君の力が欲しい。君がテイマーでなくとも僕は君に助力を願っていただろう」
「……………………それには理由があるの?」
少し期待するように俺はランドロフに聞いた。
いつぶりだろうか。俺がテイマー以外で認められていることは。
正直、昔はテイマーとして認められたかった。最強のテイマーに憧れた。
でも、配下が二万にも及ぶようになると、そんな目標はいつの間にか無くなっていた。
伝説の龍を従えていた? 普通にドラの方が強いだろう。
だから、心の底では望んでいたのかもしれない。
俺自身を肯定してくれる何かに出会えることを。
当然配下が称賛されるのも、認められるのも主にとっては喜ばしいことだ。
配下たちはそのため必死に俺に忠義を認めてもらおうとする。
だからって俺が評価されるわけではない。
その配下が評価されるのだ。
それは当たり前のことである。
なのにもかかわらず、本当の俺はそんな現状に嫉妬なんてしてしまうテイマーとして最低な人間である。
だが、そんな俺の思考を一瞬で拭うようにランドロフは口を開いた。
「あるよ。僕は君のカリスマ性が欲しい。種族の巨大な壁を分け隔てなく影響させるそのカリスマ性が。もしかしたら君は無自覚かもしれない。本当にその素質は素晴らしいことだと自分を認めるべきだ」
ランドロフの淡々と言っている言葉を俺は真顔のまま聞き終えた。
ランドロフこそ気づいていないのだろう。
俺がどれだけその言葉を聞いて嬉しがっているのか。
俺は認められたいから旅に出た。誰かに見捨てられたくないから強くなろうと思った。
人が救いたいから。誰かを守れる人になりたいから。
そんな勇者のような考え方を俺は持ち合わせていない。
それを俺はダメなことだと思っていた。悪いことだと思っていた。
しかし、そんな俺をランドロフは今、認めていると言ってくれのだ。
そして、自分自身を認めろとも。
「是非、君さえよければその力を僕に少しだけ貸してくれないか? もし、僕が期待外れな行動をしたらすぐに僕を殺そうとしてもかまわない。だから僕は君の期待を裏切らないように努力するつもりだ」
「…………分かった。俺も全身全霊で力を貸すよ」
そのランドロフの熱心な説得に俺はゆっくりと首を縦に振る。
そして、俺はしっかりとランドロフの手を握った。
「改めてこれから頼むよ。アレン」
「うん。こちらこそ。ラン君」
「……………………」
これが俺の弱いところであるのは理解しているつもりだ。
ゴブくんによく忠告されていた。俺はすぐに心を開き過ぎだと。いつか酷い目に遭うと。
だが、何事でもどちらかが折れなければ始まらない。いがみ合ったって何も進まないのだ。
だからいつも俺は先に折れる。自分の感情を押し殺して心を開く。
それがランドロフの言うカリスマ性なのかもしれない。
俺はそんなことを思いながら次の五大国へ進むために何もない荒れ地とかした大陸を走り始めた。
こうして、俺は人族、魔族、魔獣、獣人の全種族の『特異点』になる。
その結果、その名の通り俺が中心となり、全ての種族を巻き込む大戦争に一歩足を踏み込んだのだった。
正直言って俺の力を借りたいというのは俺自身ではなく、その配下の力だろう。
その苛立ちを少しだけ含みながら俺はそう口にした。
しかし、ランドロフは首を横に振る。
「魔王様には助力はもらえなかったんだ。自分たちだけで何とかしろとのことらしい。ということは僕たちが手を組めば何とかなるということだよ」
どれだけ魔王に調教されたのか。
魔王の言葉が絶対だと信じ切っているランドロフはそう確信しているように言った。
しかし、俺は知っている。
魔王は超人でも神でもない。ただ少し桁外れに強い魔族であるということを。
「…………そうだとしても俺は今、その頼みの綱の召喚魔法を――」
「僕は一言も召喚魔法なんて言っていない」
「……………………え?」
俺は遮るようにしてランドロフが言った言葉に唖然と口を開いてしまう。
そんな俺を放ってランドロフは続けて口を開く。
「僕は君の配下に興味があるわけじゃない。君自身に興味があるんだ」
「いや、俺はただの人間で…………そこらの魔族に負けるほど弱いってことを知ってもそんなこと言える?」
普通の人なら答えにくい場面であっただろう。
しかし、ランドロフは眉一つ動かさずに首を縦に振った。
「ああ。僕は君の力が欲しい。君がテイマーでなくとも僕は君に助力を願っていただろう」
「……………………それには理由があるの?」
少し期待するように俺はランドロフに聞いた。
いつぶりだろうか。俺がテイマー以外で認められていることは。
正直、昔はテイマーとして認められたかった。最強のテイマーに憧れた。
でも、配下が二万にも及ぶようになると、そんな目標はいつの間にか無くなっていた。
伝説の龍を従えていた? 普通にドラの方が強いだろう。
だから、心の底では望んでいたのかもしれない。
俺自身を肯定してくれる何かに出会えることを。
当然配下が称賛されるのも、認められるのも主にとっては喜ばしいことだ。
配下たちはそのため必死に俺に忠義を認めてもらおうとする。
だからって俺が評価されるわけではない。
その配下が評価されるのだ。
それは当たり前のことである。
なのにもかかわらず、本当の俺はそんな現状に嫉妬なんてしてしまうテイマーとして最低な人間である。
だが、そんな俺の思考を一瞬で拭うようにランドロフは口を開いた。
「あるよ。僕は君のカリスマ性が欲しい。種族の巨大な壁を分け隔てなく影響させるそのカリスマ性が。もしかしたら君は無自覚かもしれない。本当にその素質は素晴らしいことだと自分を認めるべきだ」
ランドロフの淡々と言っている言葉を俺は真顔のまま聞き終えた。
ランドロフこそ気づいていないのだろう。
俺がどれだけその言葉を聞いて嬉しがっているのか。
俺は認められたいから旅に出た。誰かに見捨てられたくないから強くなろうと思った。
人が救いたいから。誰かを守れる人になりたいから。
そんな勇者のような考え方を俺は持ち合わせていない。
それを俺はダメなことだと思っていた。悪いことだと思っていた。
しかし、そんな俺をランドロフは今、認めていると言ってくれのだ。
そして、自分自身を認めろとも。
「是非、君さえよければその力を僕に少しだけ貸してくれないか? もし、僕が期待外れな行動をしたらすぐに僕を殺そうとしてもかまわない。だから僕は君の期待を裏切らないように努力するつもりだ」
「…………分かった。俺も全身全霊で力を貸すよ」
そのランドロフの熱心な説得に俺はゆっくりと首を縦に振る。
そして、俺はしっかりとランドロフの手を握った。
「改めてこれから頼むよ。アレン」
「うん。こちらこそ。ラン君」
「……………………」
これが俺の弱いところであるのは理解しているつもりだ。
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