【完結】魔物をテイムしたので忌み子と呼ばれ一族から追放された最弱テイマー~今頃、お前の力が必要だと言われても魔王の息子になったのでもう遅い~

柊彼方

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家族

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「母さん! 父さん!」

 俺は目の前の川の向こう側にいる二人に気づいてもらえるように叫んだ。
 こうして叫ぶには二回目だ。一回目は俺が一族から追放された時である。

「「……………………」」

 二人は俺に気づいたのかこちらに視線を向ける。
 しかし、何も言わない。特に母の方は俺に絶対に視線を合わせてくれなかった。

 もしかしたら俺を一族から追放したことに非を感じているのかもしれない。
 俺もあの時は絶望するかと思った。死にたくなるほど泣きじゃくった。

 でもゴブくんが、ドラが、俺の配下たちが支えてくれたのだ。
 三年もたって十六になった今だから分かる。あの族長の言葉に反対していれば我ら家族は全員追放されてしまっていたかもしれない。
 ましてや、期待の族長候補に迷惑をかけるなど許されたことではないのだ。

「ちょっと待って!」

 俺は二人に追いつくために必死に川の中を走り、向こう岸に辿り着こうとする。
 しかし、ここで何かに止められてしまう。

「……………………」
「…………ゴブくん?」
 
 それは今まで何度も見てきた、救ってくれた、俺の相棒だった。
 ゴブくんは俺の腕を無言で引っ張り、元居た場所に戻そうとする。

「ゴブくん、止めてよ! そこに両親がいるんだよ!」
「……………………」

 俺がそう説明いてもゴブくんの力が弱まることはない。
 更にはもっと強くなった気までする。どうしても元居た場所に戻したいようだ。

「…………アレン、本当にすまなかった」
「…………え? 父さん?」

 ゴブくんからどうにか逃れようと俺が試行錯誤していると、俺の背後からそんな声が聞こえる。
 俺がゆっくり振り返ると父が俺に頭を下げてきていた。

「どうしても私はお前に謝りたかった…………そして、これから一緒にいられると思ったらすごく嬉しかった」
「…………う、うん! 今からずっと一緒にいられるんだよ! ちょっとゴブくん止めてよ!」

 その父の言葉に俺は少し頬を緩ませる。
 今まで俺にだけ厳格で自分で言うのもなんだがそこまで愛情が注がれていなかったと思う。

 俺はどうにかゴブくんの腕を振り払った。これから両親と一緒に仲良く暮らすことが出来るのだ。
 すると、父は先ほどの言葉を続けるように言った。

「だけどな…………」
「…………え?」
「……………今、お前がここに来るのは間違ってるんだ。お前はその子につられて帰るべきだ」

 俺は先ほどとは違う父の態度に驚いてしまう。
 もしかしたら、また追放されるのではないか。そんな悪い予想が俺の脳裏をよぎった。

「さ、さっきだって! 嬉しいって!」
「そうだ。でも、じゃない。私たちの欲で決められることじゃないんだよ。お前は世界の中心点、いや、『特異点』になった男なんだから」

 その父の表情はどこか寂し気に、しかし、どこが嬉しそうに見えた。
 父のこんな表情を見たのはいつぶりだろうか。

「私はお前に怯えていたんだと思う。キールを超す超人的な力に。一族の皆はお前のことを忌み子だと言っていたが、キールから聞いていた。魔物と契約できるものは異常なほどの魔力があるということに」

 その申し訳なさそうな父の言葉に続くように母はやっと口を開いた。

「本当にごめんなさい。本当なら私がアレンを守ってやらないといけない立場なのに、あの時は気が動転しちゃって…………まさか自分の子供が忌み子なんて言われるとは思っていなかったから」
「もういいよ。二人のおかげで色々なことを経験できたから」

 俺は全く皮肉のこもっていない心でそう口にした。
 それで両親の気持ちも晴れてくれればいいが、そう簡単にはいかないだろう。

「お前を待っている人たちが何人もいるんだ。私たちはここでしっかり待っててやるから自分の役目を果てしてこい」

 父は握りこぶしを作りながら俺に言った。
 そして、その言葉に付け足すように母も言う。

「どうか…………リンクの目を覚まさせてあげて。あの調子ならリンクは壊れてしまう。いや、もう壊れてるんだけど…………」
「分かってるよ。リンクを止めるのは俺とキール兄ちゃんの役目だから」

 俺はその願いを笑顔で受け入れる。
 同じように最弱、落ちこぼれとして扱われてきたリンクの気持ちも分からなくもない。
 俺は出会いがあった。しかし、リンクは悪い出会いがあった。その違いだけなのだ。出会いを選ぶことなんて出来ないのだから。

「…………じゃあね! またすぐに来るから!」
「急がなくていい。私たちはずっと待ってるから」
「そうよ…………頑張ってきなさい!」

 父は淡々と、恥ずかしさを誤魔化すように言う。
 そして、母も頬を紅潮させながら送り出してくれた。
 その二人に笑顔を俺は向けてから二人に背を向けてゴブくんの隣に立つ。

「さっさと起きてくださいよ。本当に主はいっつも迷惑ばかり…………」
「俺に会えないからってそんな焼きもちやくなって」
「…………なッ! そんなことありえないです!」

 俺は沈んでいた意識を起こそうとしてくれているゴブくんをいじるように言った。

「……………………うわぁ」

 俺は両親がいた反対側の岸。俺の背後の景色に驚いてしまう。
 獣人に人間、魔族に魔獣。更には魔物や獣。この世界に存在する全ての生命体が並んでいた。

 そう。俺が契約をした配下たちである。

 こう見れば俺はどれだけ幸せ者なのだろうか。
 俺も知らないような魔獣や魔族もいるが、最低でも十万人を超えている。
 これほど俺は支えてきてもらっていたのだ。脆い俺の心が折れないように。

「行こうか。ゴブくん」
「はい。我が主」

 俺とゴブくんはまるで出会った時と同じような状況に苦笑いをする。
 こうして俺は混沌に沈んでいた意識を無理矢理に引き起こしたのだった。
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