ターンオーバー

その１

１−５

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　あたしは別に崇高な想いがあってナースになったわけじゃない。親が手に職を持てとやかましく言うし、高校出てすぐに働きたくなかったから、看護学校に進んだ、それだけのことよ。

　病院勤務が普通のコースなんだけど、あたしが看護学校を出る頃にはすでに訪問看護という道があって、そのほうが気楽かなと思ったの。それで老人ホームも運営している訪問看護ステーションに入職したわ。

　そこでは施設の中で働けるものと思ってたけど、あたしの担当は在宅ケア、つまり個人宅へ出向いてのケアだった。でもそのほうが余計気楽だってことに気づいたわ。
　利用者はケアを受ける立場だから偉そうなことは言わないし、憎たらしいこと言う人にはちゃんとケアしてあげないの。
　反対に感謝してくれる人、喜んでくれる人にはいっぱいサービスした。その中にね、七十過ぎ、独居で車椅子の利用者がいたのね。

　その人は気さくな人で、あたしもタメ口で受け答えしてたんだけどね、ある時、
「他に何かして欲しいこと、ないですか？」って聞いたら、

「わしはもうこの先長くない。願いを云えと言うから言うが、手でいいから、溜まったものを出してくれんか？」
　なんて言ったの。それであたしは、

「なんのこと？手でいいからって・・・あ？！この助平親父！」って笑って答えたわ。

　最初はしてあげるつもりはなかった。でもその人、本当にいいお爺ちゃんなの。奥さんはずっと前に亡くなっててね。男の人は幾つになっても子どもなんだなあって思ったら、なんだかそのお爺ちゃんが身内のように思えてね。だからしてあげたの。濡らしたタオルできれいに拭いて、両手でマッサージしてあげた。しばらくそうやってたら本当に出た。ドロっとね。そのおちんちんとお爺ちゃんの恍惚とした顔を見たら、いいことしたのかも、って思ったんだよ、ホント。ありがとう、ありがとうって何度も言ってくれて。それがきっかけでそんなケアを何人かの利用者にしてあげたの。
   もちろんそれでお金をもらうなんてことはしてないわよ。法律的にはアウトだけど、あたしはケアのプライベートサービスのつもりだった。