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本編
訪問者
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そんなふうにして、ささやかだが幸せな生活を送っていたある日の夕方のことだ。
夕飯の支度をしている途中、外に薪の追加を取りに行ったテディがなかなか戻って来ないので、様子を見に行こうとドアに近づくと、外から男の声が聞こえてきた。
えっ、テディの声? ……いや、違うよな。
テディはしゃべれないはずだし、それに声はテディと同じような年の若い男性のもののようだが、神経質そうな甲高い声で、たとえテディがしゃべれたとしてもテディの体格と性格であんな声や話し方になるとは思いにくい。
って言うか、あれ、何語だ?
男が話しているのは、俺とテディがいつも会話に使っている日本語とは違う言語だ。
俺が聞いたことのある英語や中国語やその他の外国語とも違う、全く未知の言語のような気がする。
なんなの、あの言葉。
って言うかあれ、誰かがテディに話しかけてるんだよね。
誰だ?
テディとはもう2カ月くらいは一緒に暮らしているけれど、テディが街に出かけて行くことはあっても、誰かがテディを訪ねてくるなんて初めてだ。
テディ以外の人間が外にいるなら、俺は見つからないように隠れていた方がいいのはわかっていたけれど、俺が来てから初めてテディを訪ねて来たのがどんな男なのか、どうしても気になってしまって、俺はドアを細く開けて、外をのぞいてみた。
幸い2人が話していたのはドアから少し離れたところだったので、2人ともドアが開いたことに気づかなかったようだ。
テディと向かい合って話しているのは金髪の若い男だった。
声から受けたイメージ通りの、神経質そうな顔立ちのひょろりとした男だ。
男はいらだった様子で、俺の知らない言葉でテディに話しかけている。
テディはその言葉に首を横に振り、男はさらに何かを言い返して、この家の方を指差した。
……やばっ。
男がこちらを指差した時、視線をこっちにやったから、もしかしたら俺がドアの隙間からのぞいているのに気付かれたかもしれない。
慌ててドアを閉めて鍵をかけようとしたが、少し遅かったようだ。
外側からドアが開けられ、テディと話していた男が俺の腕をつかんだ。
「んー……ああ、『日本人』か。
これはいい」
そう言うと男はニヤリと嫌な感じの笑みを浮かべた。
「もらって行くぞ!」
男はそう言うと俺を抱きかかえ、いきなり何かの歌を歌い出した。
そのとたん、男の体が俺ごと宙に浮く。
「何だよ、離せよ!」
慌てて男の腕の中から何とか逃げようとするが、その間にも俺を抱きかかえた男はどんどん高く浮かんでいく。
テディも男の服をつかんで必死に止めようとしてくれていたが、見えない力にはじき飛ばされたようになって尻もちをついてしまった。
「テディ!」
焦った顔で必死にこちらに手を伸ばすテディを置いて、男と俺は空高く上がり、家から離れて森の外の方へと飛んで行く。
これ魔法、なんだよな?
普通に考えて、魔法でも使わなきゃ空をとんだりできないだろうから、この男はこの世界に少数いるという魔術師なのだろう。
飛びながらもずっと歌を歌っているから、もしかしたら歌が呪文になっているのかもしれない。
けど、この歌、なんか英語っぽいんだけど……。
歌の内容がはっきり聞き取れるほど英語がわかるわけじゃないけど、でも歌の中に「we can」とか「fly」とかの英単語があったのは聞き取れた。
って、そんなことはどうでもいいから逃げなきゃ!
そう思った俺は、落ちないように片手でしっかり男につかまりつつ、もう片方の手で男をポカポカ殴り足をバタバタさせて暴れる。
「降ろせよ!」
俺が暴れ出すと、男は露骨に嫌そうな顔になった。
そして歌いながら高度を下げていき、森の中に着地すると歌をやめた。
今だ、逃げなきゃ!
慌てて男を突き飛ばしてかけだしたが、その次の瞬間、男はさっきとは別の歌を歌い出した。
あ、これ子守歌……。
ドイツ語かフランス語か英語か、とにかく日本でも訳されたものが有名な子守歌の原語らしき歌が聞こえてきて、俺は急激な眠気に襲われる。
聞いたら、だめだ……。
慌てて耳をふさいだが、遅かったらしい。
強制的に与えられる眠気に抗うことができず、俺はその場で意識を失ってしまった。
夕飯の支度をしている途中、外に薪の追加を取りに行ったテディがなかなか戻って来ないので、様子を見に行こうとドアに近づくと、外から男の声が聞こえてきた。
えっ、テディの声? ……いや、違うよな。
テディはしゃべれないはずだし、それに声はテディと同じような年の若い男性のもののようだが、神経質そうな甲高い声で、たとえテディがしゃべれたとしてもテディの体格と性格であんな声や話し方になるとは思いにくい。
って言うか、あれ、何語だ?
男が話しているのは、俺とテディがいつも会話に使っている日本語とは違う言語だ。
俺が聞いたことのある英語や中国語やその他の外国語とも違う、全く未知の言語のような気がする。
なんなの、あの言葉。
って言うかあれ、誰かがテディに話しかけてるんだよね。
誰だ?
テディとはもう2カ月くらいは一緒に暮らしているけれど、テディが街に出かけて行くことはあっても、誰かがテディを訪ねてくるなんて初めてだ。
テディ以外の人間が外にいるなら、俺は見つからないように隠れていた方がいいのはわかっていたけれど、俺が来てから初めてテディを訪ねて来たのがどんな男なのか、どうしても気になってしまって、俺はドアを細く開けて、外をのぞいてみた。
幸い2人が話していたのはドアから少し離れたところだったので、2人ともドアが開いたことに気づかなかったようだ。
テディと向かい合って話しているのは金髪の若い男だった。
声から受けたイメージ通りの、神経質そうな顔立ちのひょろりとした男だ。
男はいらだった様子で、俺の知らない言葉でテディに話しかけている。
テディはその言葉に首を横に振り、男はさらに何かを言い返して、この家の方を指差した。
……やばっ。
男がこちらを指差した時、視線をこっちにやったから、もしかしたら俺がドアの隙間からのぞいているのに気付かれたかもしれない。
慌ててドアを閉めて鍵をかけようとしたが、少し遅かったようだ。
外側からドアが開けられ、テディと話していた男が俺の腕をつかんだ。
「んー……ああ、『日本人』か。
これはいい」
そう言うと男はニヤリと嫌な感じの笑みを浮かべた。
「もらって行くぞ!」
男はそう言うと俺を抱きかかえ、いきなり何かの歌を歌い出した。
そのとたん、男の体が俺ごと宙に浮く。
「何だよ、離せよ!」
慌てて男の腕の中から何とか逃げようとするが、その間にも俺を抱きかかえた男はどんどん高く浮かんでいく。
テディも男の服をつかんで必死に止めようとしてくれていたが、見えない力にはじき飛ばされたようになって尻もちをついてしまった。
「テディ!」
焦った顔で必死にこちらに手を伸ばすテディを置いて、男と俺は空高く上がり、家から離れて森の外の方へと飛んで行く。
これ魔法、なんだよな?
普通に考えて、魔法でも使わなきゃ空をとんだりできないだろうから、この男はこの世界に少数いるという魔術師なのだろう。
飛びながらもずっと歌を歌っているから、もしかしたら歌が呪文になっているのかもしれない。
けど、この歌、なんか英語っぽいんだけど……。
歌の内容がはっきり聞き取れるほど英語がわかるわけじゃないけど、でも歌の中に「we can」とか「fly」とかの英単語があったのは聞き取れた。
って、そんなことはどうでもいいから逃げなきゃ!
そう思った俺は、落ちないように片手でしっかり男につかまりつつ、もう片方の手で男をポカポカ殴り足をバタバタさせて暴れる。
「降ろせよ!」
俺が暴れ出すと、男は露骨に嫌そうな顔になった。
そして歌いながら高度を下げていき、森の中に着地すると歌をやめた。
今だ、逃げなきゃ!
慌てて男を突き飛ばしてかけだしたが、その次の瞬間、男はさっきとは別の歌を歌い出した。
あ、これ子守歌……。
ドイツ語かフランス語か英語か、とにかく日本でも訳されたものが有名な子守歌の原語らしき歌が聞こえてきて、俺は急激な眠気に襲われる。
聞いたら、だめだ……。
慌てて耳をふさいだが、遅かったらしい。
強制的に与えられる眠気に抗うことができず、俺はその場で意識を失ってしまった。
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