俺とタロと小さな家

鳴神楓

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第2章 成犬編

4 お風呂

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そうしていつものようにまったりとした夜の時間を過ごした後、さてそろそろ風呂に入って寝ようかという時になってようやく、俺は大変なことに気付いてしまった。

俺、タロと一緒に風呂に入って大丈夫なのか……?

今までのタロは、人間に変身しても子供サイズだったので全く問題はなかったのだが、高校生サイズに成長したタロ――しかも、ついさっき好きだと気付いたばかりの相手と一緒に風呂に入って理性を保てるのかというと、正直自信がない。

だいたい、さっきもタロの尻に欲情するところだったし。

台所に立つタロを後ろから眺めていてヤバいと思ってしまったのは、タロへの思いを自覚した今では、それも当然のことだったとわかる(ちなみに、尻がうまそうだったからタロのことを好きになったというわけでは断じてない……と思う)。
台所ではズボンをはいていたからまだよかったものの、裸になる風呂はいくらなんでも危険過ぎる。

「なあ、タロ。
 今日から風呂は別々に入らないか?
 お前の体も大きくなったから狭いだろうし」

俺が何気ないふうを装ってそう切り出すと、タロは目に見えて寂しそうな顔になった。

「一緒に入っちゃだめですか?
 僕、ご主人様に頭を洗ってもらったり、お風呂につかってお話するのが好きなので、出来たら一緒がいいんですけど……。
 でもやっぱり狭いですよね……」
「あ、いや、いい!
 やっぱ一緒に入ろう!
 湯船に一緒につかるのは無理だけど、湯船は交代で入ればいいもんな」

タロのしょんぼりした顔と下がった尻尾を見て、俺は簡単に前言撤回した。
タロにあんな寂しそうな顔をさせるくらいなら、俺が死ぬ気で理性をかき集めて我慢した方がましだ。

「いいんですか?
 ありがとうございます!」

俺が前言撤回すると、タロはぱっと明るい表情になり、いそいそと風呂場に向かった。
俺も水を一杯飲んで気を落ち着けてから、覚悟を決めてタロの後に続く。

「お先に入ってますね」
「うん」

タロはすでに服を脱ぎ終えていて、少し日焼けした背中をこちらに向けて風呂場に入っていった。
下半身は意識して見ないようにしたが、上半身もやはり、肩や腕にほどよく筋肉がついたきれいな体つきをしていた。

俺が冷静でいられさえすれば、描かせてもらいたいような体なんだけどな。

大学の授業などで初対面のヌードモデルを描く時は、どんなにきれいな体の人でも、あくまでモデルとしてしか見られないので平気だったが、好きな相手をモデルにしていると、その辺の線引きがうまく出来ないから困るのだ。
以前光の絵を描いていた時も、途中でお互いにムラムラしてきてしまって、絵を描くのを中断したことが、何度もある。

そんなことを考えている間も、中ではタロが掛け湯をしている音がしている。
ともかく俺も早く入ることにして、さっさと服を脱いだ。

俺が風呂場に入ると、タロはすでに湯船につかっていた。
冬場はあったまるように入浴剤を入れていて湯は緑色なので、タロの体があまり見えなかったのでほっとする。

「ご主人様は温泉って行ったことありますか?」

俺が掛け湯をして体を洗い始めると、湯船の中からタロがそう聞いてきた。

「ああ、あるよ。
 子供の時に家族旅行でも行ったし、学生の時の貧乏旅行でも地元の人向けの安いところに入ったりしたな。
 旅行先で初めて見る風景を描いてると、つい夢中になって同じ姿勢で描き続けて体が固まっちゃうから、温泉に入ると体がほぐれて気持ちがよかったよ」
「へー、いいですね。
 僕も温泉に入ってみたいです」
「それじゃ、そのうちに連れて行ってやるよ。
 お金が貯まったら、タロと旅行に行きたいと思ってたところだったんだ。
 せっかくだから、ペットも温泉に入れる宿を探して泊まろうぜ」
「やった! 楽しみにしてますね」

こういう時に変に遠慮しないで、素直に喜んで受け入れるのは、タロの美点だと思う。
普段はわがままも言わず、飼い主である俺をいつも立ててくれているので、たまにこうやって希望を口にした時くらいはそれを叶えてやりたくなるし、こうやって素直に喜んでくれるとがんばって早く連れて行ってやろうという気にもなる。

話をしながら俺が体と頭を洗い終えると、タロが湯船から立ち上がった。
慌てて目をそらしたが間に合わず、俺は成長したタロの全身をばっちり見てしまった。

「交代しますね」
「あ、ああ」

洗い場に出てきたタロからさりげなく目をそらしつつ、湯船に入った俺は、内心ものすごく動揺していた。

あれ、やっぱりヤバすぎる……。

成長したタロの裸は、予想していた以上に俺の欲情をかき乱すものだった。
犬の時にいつも四つ足で散歩しているせいか、タロは背中側は少し日焼けしているのに比べて、腹側は焼けてなくて白い。
その白い肌にピンク色の乳首が2つと、それよりも少しくすんだ色の小さな副乳が6つ、ぽつぽつと並んでいる様子は妙に卑猥だ。
今までは子供らしくぷくぷくしていた腹も、成長過程にある男性らしくすっきりとしていて、うっすらと腹筋が割れている。
その下にある男性のシンボルも、ついこの前まではいかにも子供のおチンチンという形をしていたのに、今はすっかり大人の、しかし使い込まれた生々しい形ではなく、ほっそりとした美しい、ペニスと表現するのがふさわしいモノに成長していた。

……あれは、まずい。
まともに見たら勃つ。

一瞬見たその肢体を必死に頭から追い出しながら、俺は不自然でない程度に体を洗うタロから顔をそむけつつ、タロと温泉の話をする。
やがて体を洗い終えたタロは、少し迷うような素振りを見せた後、シャンプーのボトルを手に取った。

「あっ、頭な。
 洗ってやるよ」
「あ、すいません。
 大きくなったし、自分で洗ってみようかとも思ったんですけど」
「いいよ、洗ってやるから。
 お前、頭洗われるの好きなんだろ?」

さっき風呂に入る前にタロがそう言っていたのを思い出してそう言うと、タロはうれしそうに「はい、ありがとうございます」と答えて、シャンプーのボトルを湯船から出た俺に渡した。

うん、まあ、背中だけならなんとか。

頭を洗うためにタロはちょっと前かがみになっていて、そのおかげで俺からは背中しか見えていないので、これならなんとか変な気にならずにすみそうだ。
そのことにほっとしつつ、俺はいつものようにタロの頭を洗い始めた。

タロの髪質は、犬の時と同じように硬めでしっかりとしている。
これで五分刈りにしたらツンツンに立ちそうだが、幸い人間のタロは爽やか系のショートカットなので、自然な動きが出ておしゃれな感じに見えている。

その硬めの髪を、頭のてっぺんにある犬耳に泡が入らないように注意しながら洗っていく。
最後に残った耳をそっと洗うと、タロはくすぐったいのか、いつもくふんと小さく鼻を鳴らすので、それがかわいくて俺のひそかなお気に入りになっている。

「よし、流すから耳押さえてろよ」
「はい!」

俺が声をかけると、タロは元気よく返事をして、耳に水が入らないように両手でぺたんと押さえる。
その頭のシャンプーをシャワーで流してやり、水流を弱くしてからタロの手をはずさせて、残っていた耳のシャンプーをそっと流す。
仕上げに耳の内側を濡れタオルで拭いておしまいだ。
やはり耳はくすぐったいのか、タロはその間中、ずっとくふんくふんと鼻を鳴らしている。
いつもはかわいいだけのその声が、体が成長した今は、何だか妙に色っぽく聞こえてしまう。

「よし、終わり!
 俺は先に出てるからな」

タロの声にあやうく体が反応しそうになって、俺は急いで風呂を出ることにした。

「あっ、僕ももう出ます!」
「いや、お前はもうちょっとお湯につかってこいよ」

そう言ってやったのだが、タロは構わずに風呂をフタをして出てきてしまった。

「一緒に湯船につかれないのは残念ですけど、やっぱりご主人様と一緒お風呂入るの楽しいです」
「うん、そうだな」

若干棒読み気味で答えつつ、俺は必死でタロの裸から目をそらしている。

バスタオルで体を拭き終えたタロは、真っ先に靴下をはいている。
人間の常識として、靴下をはいたまま風呂には入らないものなので、風呂の間は靴下をはいていなくても足がむずむずすることはないらしいが、風呂から出ると途端にむずむずしてくるらしく、タロはいつも風呂から出ると最初に左右白黒の靴下をはくのだ。

けど、靴下より早くパンツはいて欲しい……。

俺の目には毒である、程よく引き締まった尻を視界の隅でとらえてしまった俺は、切実にそう思う。

って言うか、これ、本当に毎回耐えられるのか?

自分の理性に不安を覚えつつ、俺はなんとなくぐったりしながら自分も服を着たのだった。

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