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第四章
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しおりを挟む裸の女はブルブルと身体中震わせる。瞳孔が大きく開き、寒くて堪らず、全身鳥肌が立つ。震え、寒さを感じているのに発汗が起こり、目から涙が流れ、鼻からは鼻汁が止まらない。身体中の穴という穴から水分が抜け出る感覚に陥った。
暫くすれば「痛い、痛いぃいい……っ!」と自分の身体を両腕で抱き締めて部屋中を転がり出す。全身の骨という骨がボキボキに折れるような痛みに襲われ、その上腹の中に蠢く何かがいて暴れ始め、急に痛みが増した。腹の中に蛇でもいるようで腹の中をぐるぐるどくろを巻いているような動きで、嘔吐感もある。思わず嘔吐してしまえば、血を含んだ嘔吐だった。
「——効果の方は分かったわ」
部屋の臭さに優花は己の鼻を摘まみながら、自分の従者の女があられもない姿に堕ちたのを見つめた。
視線を掌に映すと収まった包み紙を摘まみ上げ、眼前にやった。中身は変哲もないただの粉だ。嫌がる女に黒褐色の粉を水に含めて飲ませると、元従者はぼうっとしだし、ふわふわとしだした。それから、優花の父親の部下の中でも血の気のあるゴロツキの男二人に声を掛け、薬でくらくらしている女を襲わせた。最初は戸惑った二人でも、女が自慰をしている姿を目にして考えが変わったようで女を組み敷いた。
女は男二人に犯されても、嬉しそうに笑って情事に没頭した。
自分の主人に見られている事も快感に繋がり、男の精を貪るように搾り取ったのである。そんな女は今は痛みで奇声を上げて、上からも下から分泌物が流れ続けた。
「飲ませるよりも吸引させた方が効果があるようです」
影のように背後に居る雀斑だらけの男が優花にそっと耳打ちをすると、優花は面白そうに目を細めた。小さな顔に一杯に溢れる笑みは満開の花のように美しく、可憐だった。
「これ以上に人間としての尊厳がなくなるって事ね。面白いわ」
「量を間違えれば、死にます」
「そう」と優花は短く吐けば、にぃと口端を横広く伸ばす。
面白い物を作っているものだ。父に隠れて作っている事を脅せば、簡単に譲ってくれた。
持って帰れなかったと泣きじゃくりながら戻ってきた下僕を寛太に拘束させて効果を知るために媚薬を飲ませれば、すぐに効果は訪れた。
ここまで見せれば、私の愛しい人はあの子供に失望してくれるに違いない。
それに、寛太の話ではあの子供を単に性欲処理として手元に置いているようだ、と調べてもらった。妊娠できる躰になっても孕む心配のない石女だからこそ、囲んでいると言う。
そうなら、他の男に犯されようが間違えて殺されてしまおうが、彼の心は傷つかない。
私がその穴になれば良い。埋めて貰えば良い。どう見繕っても、私の躰の方が魅力的だ。
私が身代わりになる事は、決してない。
彼女は認めない、男の熱い視線が偽物だと。
あの少女を目に入れた男の瞳が、周りを全て背景としか捉えず一切映さなくなった事なんぞ、事実として認めなかった。
のたうち回る女が優花の足に当たる。女は主人の手元に先程飲まされた薬があると目ざとく気付き、脚にしがみ付いた。寛太が思わず主人を守ろうと女の頭を足蹴りにしても、どこから力が入るのか一向に離れようとしない。必死にしがみ付き、酷く泣き喚きながらその薬をくれと叫んだ。
くれる気配がなく、今までの畏怖を感じていたのが嘘だったかのように大胆に大声で主人を罵った。
「禁断症状も出るのね」
「面白い」と優花は言えば、しがみ付かれる足を大きく振ると、先程の力が嘘のように腕が解かれて、コロコロと転がった。
優花は足元を見れば、裾が女の鼻から出た分泌物と嘔吐した血がべったりと付いて汚れてしまっていた。臭いが先程より酷い物になっている。優花は己の鼻を摘まむと「片付けておきなさい」と寛太に行って部屋を出た。
転がった女を追って、女の頭に足を置いた寛太は部屋を出て行った主人の背中を見送った後、袂に手を入れて短刀を手に取った。
次の日の早朝、川岸に三人の女の死体が投げ捨てられていた。
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