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一章
力の一端を明かす
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双戟の刃に炎を纏わせオークに突き刺し、そのまま炎を解放してやる。
体内から発火し焼き尽くされながら絶命したオークを見届けた。これで第二波の敵は最後のようだ。
「下層で集結しているようですが、まだ動き出す様子は無さそうです」
影を介してダンジョンの中の事を完全に把握しているノワールから小声で報告があった。
僕達が迎撃していたのはまだ地下一階層で、現れた魔物は主に地下五階層あたりまでの魔物だった。稀に六階層以降にいるリザードマンなどの魔物もいたけど、ここから五階層まではほぼ魔物はいないと見て間違いなさそうだ。
「よーし、休憩すんぞー。各自食事や水分補給しとけよー」
魔物の回収も終わって、途中からは戦線復帰していたイヴァン副ギルド長から指示が出た。しばらく襲撃はないはずなので僕達も地面に腰を下ろして休む事にする。
そんな中で一人、デライラだけが深刻な表情をしていた。
「どうしたの? まあ飲みなよ」
デライラのところまで歩み寄り、バッグから水筒を取り出して飲むように勧めた。中身は何の変哲もない、やや甘酸っぱい果実水だ。実際はバッグからではなく影の収納から取り出したもので、いい具合に冷えている。
「ありがと」
彼女は苦笑しながら水筒を受け取り、ついでに自分の剣を見せてきた。
「酷いな……」
刃はボロボロに刃毀れしており、もはや刃物としては機能しないだろう。
……無理もないか。僕のバフで上がった身体能力で加減なしで斬りまくっていた訳で。しかも敵の中にはリザードマンのような硬い鱗を持つ者もいた。強化を施していない普通の剣では……
この先待っているのは更に手強い敵ばかりだ。デライラが見た事も無いようなヤツが殆どだろう。どうする?
「どうしたのよ、深刻な顔をして」
そこへサマンサギルド長とイヴァン副ギルド長がやってきて、僕達の顔色を覗き込んできた。イヴァン副ギルド長はパンを頬張っていたのか、口の横にパンくずをくっつけた上に頬をパンパンに膨らませていた。
シリアスな雰囲気が一気に緩んだ。
「プッ……いえ、あたしの剣がもうダメなんです。それでどうしようかと思って」
正直に言えば、彼女の剣にエンチャントする事は可能だ。アーテルが魔法陣を描くための術式を知っているからね。でも、彼女には肝心の魔力がない。そう、魔法陣を起動させるための魔力が。
「ご主人様……」
ノワールが何かを訴えようとこちらに向かって話しかけてきた。ああ、分かってるよ。実は僕はこの先の戦闘に耐え得るだけの剣を持っている。
前回の合同クエストで偶然手に入れたものだ。アーテルと出会う直前の十一階層で戦った敵が持っていた剣なんだけど――
「確かに強力な剣ですが、私の蹴りの方が強いので」
と言って使おうとしないし、アーテルもまた、
「我の爪牙の方が強いから不要だ」
だそうだ。勿論僕に剣なんて扱える訳もないし、仕方ないから影の収納に死蔵していたものだ。ノワール曰く、剣自体が魔力を持っている、所謂魔剣というヤツらしい。
これが世の中に出れば、それこそ国宝級、伝説の武器となるほどの代物だ。何しろ僕が自分の双戟に施したエンチャント効果を自前で発揮するのだから。
つまりよく斬れて折れず曲がらず。メンテナンスフリーの夢のような剣な訳だよね。
ノワールが言いたいのはそれを貸し与えたら、もしくは譲渡したらどうかという事だろう。確かに僕等が持っていても収納の肥やしになるだけだ。
でもそれには問題がある。あの剣の入手先を問われたら、このダンジョンで起こった事を明かさねばならない事。これだけの剣をノワールが使っていないのはあまりにも不自然な事。そして、どう見ても剣なんか入りっこないサイズのバッグから取り出すフリをしなくちゃいけない事。
それにしてもノワールは、デライラに何かを感じてから、やけに彼女に対して過保護な感じがする。戦闘中もさりげなくフォローしてたし。
(デライラは必ずご主人様にとって有益な存在になります。そのような存在を死なせる訳にはまいりません)
……という事らしい。それにしてもどうしようか。
「良いではないか。我等の力を見せつけ口止めすれば済む話だ。要は人間共の街に被害を出さず、グリペンとやらの要望通りダンジョンを潰せば文句はないのだろう? そこの二人はたんまりと褒賞を貰えばよい」
うわぁ……
なんかね、黙って聞いていたアーテルが爆弾発言しちゃったよ。彼女の正体を知らなければ、あまりに尊大であまりに不敬な物言いだ。その内容に、サマンサギルド長とイヴァン副ギルド長、それにデライラまでもがギョッとしている。
「おいおいおい! そりゃあいくらなんでも口が過ぎるってモンだぜ? お前らが強いのはわかr――!?」
ちょっと頭に血が上ってきたイヴァン副ギルド長の言葉を遮るように、僕は地面の影から一本の剣を取り出した。
やや反りがある片刃の長剣で、ナックルガードの類は付いていない両手持ちの剣だ。刃渡りは長めで一メートルを少し超える。油が滴るような光沢を持ち刃は黒い。斬る事に特化した剣だと思われる。
事ここに至っては、隠しておくより力の一端を示した方が面倒が少ないかも知れない。勿論闇属性の話に関しては黙秘させてもらうけど。
僕が地面から引っこ抜くように剣を取り出した事で、周囲は静まり返った。ノワールは満足気に頷き、アーテルは面白そうにくつくつと笑っている。
「ちょ、ちょっと待て! お前さん、一体何をした!?」
イヴァン副ギルド長の質問には答えず、バックから一束の羊皮紙を差し出した。この間の合同クエストの際にマッピングしたダンジョン内の地図だ。魔物の出現状況なども書き込んである自信作なんだよね。
「これは!?」
ざっと目を通したイヴァン副ギルド長は驚愕に目を見開き、それをサマンサギルド長に手渡した。
「あなた、もしかして……」
「はい。先日のクエストでこのダンジョンの最下層まで到達しています」
呆気にとられるサマンサギルド長に対して、僕はサラリと言ってのけた。
体内から発火し焼き尽くされながら絶命したオークを見届けた。これで第二波の敵は最後のようだ。
「下層で集結しているようですが、まだ動き出す様子は無さそうです」
影を介してダンジョンの中の事を完全に把握しているノワールから小声で報告があった。
僕達が迎撃していたのはまだ地下一階層で、現れた魔物は主に地下五階層あたりまでの魔物だった。稀に六階層以降にいるリザードマンなどの魔物もいたけど、ここから五階層まではほぼ魔物はいないと見て間違いなさそうだ。
「よーし、休憩すんぞー。各自食事や水分補給しとけよー」
魔物の回収も終わって、途中からは戦線復帰していたイヴァン副ギルド長から指示が出た。しばらく襲撃はないはずなので僕達も地面に腰を下ろして休む事にする。
そんな中で一人、デライラだけが深刻な表情をしていた。
「どうしたの? まあ飲みなよ」
デライラのところまで歩み寄り、バッグから水筒を取り出して飲むように勧めた。中身は何の変哲もない、やや甘酸っぱい果実水だ。実際はバッグからではなく影の収納から取り出したもので、いい具合に冷えている。
「ありがと」
彼女は苦笑しながら水筒を受け取り、ついでに自分の剣を見せてきた。
「酷いな……」
刃はボロボロに刃毀れしており、もはや刃物としては機能しないだろう。
……無理もないか。僕のバフで上がった身体能力で加減なしで斬りまくっていた訳で。しかも敵の中にはリザードマンのような硬い鱗を持つ者もいた。強化を施していない普通の剣では……
この先待っているのは更に手強い敵ばかりだ。デライラが見た事も無いようなヤツが殆どだろう。どうする?
「どうしたのよ、深刻な顔をして」
そこへサマンサギルド長とイヴァン副ギルド長がやってきて、僕達の顔色を覗き込んできた。イヴァン副ギルド長はパンを頬張っていたのか、口の横にパンくずをくっつけた上に頬をパンパンに膨らませていた。
シリアスな雰囲気が一気に緩んだ。
「プッ……いえ、あたしの剣がもうダメなんです。それでどうしようかと思って」
正直に言えば、彼女の剣にエンチャントする事は可能だ。アーテルが魔法陣を描くための術式を知っているからね。でも、彼女には肝心の魔力がない。そう、魔法陣を起動させるための魔力が。
「ご主人様……」
ノワールが何かを訴えようとこちらに向かって話しかけてきた。ああ、分かってるよ。実は僕はこの先の戦闘に耐え得るだけの剣を持っている。
前回の合同クエストで偶然手に入れたものだ。アーテルと出会う直前の十一階層で戦った敵が持っていた剣なんだけど――
「確かに強力な剣ですが、私の蹴りの方が強いので」
と言って使おうとしないし、アーテルもまた、
「我の爪牙の方が強いから不要だ」
だそうだ。勿論僕に剣なんて扱える訳もないし、仕方ないから影の収納に死蔵していたものだ。ノワール曰く、剣自体が魔力を持っている、所謂魔剣というヤツらしい。
これが世の中に出れば、それこそ国宝級、伝説の武器となるほどの代物だ。何しろ僕が自分の双戟に施したエンチャント効果を自前で発揮するのだから。
つまりよく斬れて折れず曲がらず。メンテナンスフリーの夢のような剣な訳だよね。
ノワールが言いたいのはそれを貸し与えたら、もしくは譲渡したらどうかという事だろう。確かに僕等が持っていても収納の肥やしになるだけだ。
でもそれには問題がある。あの剣の入手先を問われたら、このダンジョンで起こった事を明かさねばならない事。これだけの剣をノワールが使っていないのはあまりにも不自然な事。そして、どう見ても剣なんか入りっこないサイズのバッグから取り出すフリをしなくちゃいけない事。
それにしてもノワールは、デライラに何かを感じてから、やけに彼女に対して過保護な感じがする。戦闘中もさりげなくフォローしてたし。
(デライラは必ずご主人様にとって有益な存在になります。そのような存在を死なせる訳にはまいりません)
……という事らしい。それにしてもどうしようか。
「良いではないか。我等の力を見せつけ口止めすれば済む話だ。要は人間共の街に被害を出さず、グリペンとやらの要望通りダンジョンを潰せば文句はないのだろう? そこの二人はたんまりと褒賞を貰えばよい」
うわぁ……
なんかね、黙って聞いていたアーテルが爆弾発言しちゃったよ。彼女の正体を知らなければ、あまりに尊大であまりに不敬な物言いだ。その内容に、サマンサギルド長とイヴァン副ギルド長、それにデライラまでもがギョッとしている。
「おいおいおい! そりゃあいくらなんでも口が過ぎるってモンだぜ? お前らが強いのはわかr――!?」
ちょっと頭に血が上ってきたイヴァン副ギルド長の言葉を遮るように、僕は地面の影から一本の剣を取り出した。
やや反りがある片刃の長剣で、ナックルガードの類は付いていない両手持ちの剣だ。刃渡りは長めで一メートルを少し超える。油が滴るような光沢を持ち刃は黒い。斬る事に特化した剣だと思われる。
事ここに至っては、隠しておくより力の一端を示した方が面倒が少ないかも知れない。勿論闇属性の話に関しては黙秘させてもらうけど。
僕が地面から引っこ抜くように剣を取り出した事で、周囲は静まり返った。ノワールは満足気に頷き、アーテルは面白そうにくつくつと笑っている。
「ちょ、ちょっと待て! お前さん、一体何をした!?」
イヴァン副ギルド長の質問には答えず、バックから一束の羊皮紙を差し出した。この間の合同クエストの際にマッピングしたダンジョン内の地図だ。魔物の出現状況なども書き込んである自信作なんだよね。
「これは!?」
ざっと目を通したイヴァン副ギルド長は驚愕に目を見開き、それをサマンサギルド長に手渡した。
「あなた、もしかして……」
「はい。先日のクエストでこのダンジョンの最下層まで到達しています」
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